異世界に転生したら?(改)

まさ

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第2章、破滅に向かう世界。

第6話、光と闇。

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剣に纏った魔力が光り輝き、それが帯となって戦場に描かれていく。

その光の2本の帯はモンスターが押し寄せる場に縦横無尽に駆け巡る。




俺とコウの持つ剣と刀には刃に添ってクリスタルの様に半透明なラインがあり、その部分が魔力に反応して光る。

そして光る事には意味があって魔力を込める毎に光の濃さ、そして斬撃能力が上がっていく。


要するに光れば斬れるって訳だな。



その光の軌道が防壁の上から見てたリリムにはキャンパスに描かれる絵画の様に見えた。


「綺麗……」思わず見とれていたリリムだったが、戦闘中なのを思い出し再び魔法を放つ。




『グルアアァァ!』)消し飛べ!!)

レツガが、その丸太の様な腕に装備した、炎と氷の爪に魔力を込めて、次々と飛ばして行く。

あるモンスターは燃え散り、あるモンスターは凍りつき、防壁に迫るモンスターを寄せ付けない。


ハクヨウは、その機動力を活かして戦場の空を支配し、空を飛ぶモンスターを全滅させ、防壁に押し寄せるモンスターを魔法を使い圧倒する。


片手で数えられる程の人数のパーティーに圧倒的な数の有利を活かす事が出来ない状況、モンスターは指揮する悪魔達は混乱し怒号を撒き散らしていた。

『貴様ら!雑魚どもに何を手間取っている!』

1体の悪魔は怒りをあらわにわめき散らし

『さっさと彼奴等を殺せー!!』

別の悪魔は尻込みをしているモンスター達に向け大声を出す。

だがその数秒後には、その2体の悪魔は自分の首を斬られた事に気が付く事無く塵となる。



こうしてモンスターの軍勢を指揮していた悪魔達4体は、既に俺とコウによって倒されていて、モンスターの指揮系統は機能しなくなりモンスターは散り散りに逃げ出し始めていた。


その光景を見ていたリリムは、もうすぐ戦闘も終わるだろうと思っていた。






だが、その思いも直ぐに覆る事になる。





突然前触れもなく、この場に圧倒的な濃度を持つ魔力が出現する。

その禍々しい魔力を感じてリリムは体が意思とは関係なく震え出し、レツガと防壁を守っていたハクヨウは金縛りにあった様に動けなくなった。


俺とコウは何とか動けていたものの明確に感じるプレッシャーに汗が大量に吹き出し背中を流れていく。


ガーディッシュに1番近かった町『シルファル』。

そのシルファルを滅ぼした存在の魔族。


シルファルの時とは違う魔族だったが、感じる力は同等かそれ以上だ。


「コウ!」


俺は直ぐにコウを呼び寄せ二人で魔族と相対する。


直ぐに「鑑定」をかける。


「鑑定」


『鑑定出ません』


バチッと弾かれ鑑定する事は出来なかった。


それを見ていた魔族は口を開く


『力なき人間が小賢しい……』


ただの呟きに近い小さな声、それだけで圧倒的な圧力を感じる。

味方のハズのモンスター達は、目の前の魔族のプレッシャーを受けて気絶したり、死ぬ者さえいた。


今回は逃げる事は許されない、俺達が逃げればウェストレイドの都市は蹂躙される。


シルファルの様に。



俺は体の中に魔力を溜めるとそれを一気に解放する。

そして魔族の魔力とプレッシャーで埋め尽くされていたこの場の空気を変える。


「皆!アイツ魔族にのまれるな!この時の為に修行してきたんだ!俺達なら絶対に勝てる!いくぞ!」


皆の目に闘志が宿る。

震える身体を無理やり動かし気持ちを高める。

俺の元に全員が集い魔族と相対する。


『塵がどれだけ集まっても、我の障害にはならん身の程を知れ』

再び魔力の圧力プレッシャーが押し寄せてくる。


だが皆の目には怯えの色は無かった。
さすがに身体はまだ震えが残ってはいるが動けてはいる。


「我等【森林の伊吹】いざ推して参る!」

「「『オウ!』」」

『グルアアァァ!』(負けません!)



『愚かにも我に挑むか………面白い消し去ってくれるわ!』


俺とコウ、そしてレツガにリリムとハクヨウが身体能力をアップさせる支援魔法をかける。


それと同時に俺達3人も身体強化のスキルを発動して魔族に攻撃を仕掛けた。


魔族は右手を前に出すと、その手には音もなく闇で出来た様な真っ黒い鎌が現れる。


その鎌は大きく、まさしく死神の鎌だ。



ギィィィイン


俺達の武器と魔族の鎌がぶつかり甲高い金属音が辺りに響き渡る。


レツガが炎と氷の爪撃を飛ばすが、鎌の一振りで消されてしまう。

次にコウが、目にも止まらぬ剣速で高速の斬撃を次々に放つ。

だが魔族は鎌を高速で回転させたり動きを阻害させる様に大きく振ったりして全ての斬撃を防ぐ。


「ドリャアアアア!」


そして間髪入れずに俺が剣に魔力を纏い全力で魔族に縦一文字に振り抜く。


魔族は鎌の持ち手の部分で俺の一撃を受け止めた。

ドン!と音と共に魔族の足が地面にめり込む。

『調子にのるなぁ~!』

魔族の力が増していき、俺は10メートル程の後方に弾き飛ばされた。


「クソ!何て力だ!手が痺れるぜ!」


手の痺れのせいで剣を落としそうになる。


『えーーーい!!』


ハクヨウが巨大な風の刃を魔族に放つと魔族は闇の鎌で風の刃を切り裂く。


そしてリリムはずっと溜めていた魔力を解放して魔族の足元から高密度の『アースランサー』を次々に生成して貫こうとする。

それを間一髪、魔族は羽を開き空へと逃げてかわす。



『貴様ら……調子にのるなよ?』


怒りを明確に見せた魔族は鎌に魔力を纏わせ闇の刃を次々に飛ばしてくる。


俺とコウは、リリム、ハクヨウ、レツガの前に立ち、その全てを剣で斬り防いでいく。



そして全ての刃を防いだ後、魔族を見ると全身に黒いオーラを纏い、更に魔力を増大させていた。

さっきと比べ様もない位に強くなっている。



 まだまだ終わりそうにない戦いに辟易しながらも気合いを入れ直し俺達は攻撃を仕掛けていく。


一歩も退く事の出来ない戦いは更に激しさを増していくのだった。
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