異世界に転生したら?(改)

まさ

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第2章、破滅に向かう世界。

第4話、人々の想い。

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 ようやく太陽が顔を出し始めた早朝、少しずつ明るくなっていく町中を俺達は歩いていた。

 まだ人の姿はほとんど見えない。

 空気は少しひんやりとしていて気持ち良い。


「気持ちの良い朝だな」


 俺は二日間、眠りっぱなしで体の疲れも取れてスッキリとしている。

 俺以外は、そうでもなさそうだけど。

 英雄に近い扱いを受けてるし、その対応やらなんやらで、逆に疲れている様に見える。

 何かジト目を向けてるけど、気が付かないふりしとく。


「ここでゴザル」


 コウに言われ、その建物を見上げる。

 その規模は、ガーディッシュのギルドの倍は有りそうな大きさで、赤いレンガで出来た壁を見ると所々に蔦が伸び、レンガも傷やヒビ等があり歴史を感じる。

「マサムネさん、入りますよ~」


 リリムに促されてギルドの扉を開ける。

 中に入ると左手には酒場兼食堂、そして右手にはギルドの受付けが見える。

 この辺は、どこのギルドも同じなのかな?


 まだ早朝と言う事もあり、人の姿は町と同じく殆んど見えない。

 何人か酒場の方に死体のように寝てる(?)けど。

 たまに「うー」とか「あー」とか呻いてるし。

 飲み過ぎは身体に良くないと思います。



「すいませーん」

 結構な早朝だがギルドは24時間営業だ。
 必ず数人、ギルド職員がいる。


 リリムが、無人の受け付けに向かい声をかけると、奥からバタバタと二十代の前半位だろうか、金髪の長い髪を三つ編みにして、それを左肩から前に垂らしている綺麗な女性が「ハーイ」と言いながら小走りで出てきた。


「あの~私達、ギルドマスターにウチのリーダーが目を覚ましたら来いと言われていたので来ました」


 その女性にリリムが話し掛ける。


「え~と?どちら様でしょうかぁ~?」


 どうやらこの女性は俺達の事を知らないらしく、頭をコテッと横に傾かせて逆に聞き返される。

「あ、私達は【森林の伊吹】と言うパティーを組んでます。ギルドマスターに言えば、たぶん分かると思いますよ?」

 リリムにそう言われ「マスターに聞いてきますね~」と、またバタバタと小走りで走っていく。

 結構急いで走っていくように見えるけど……スピードは遅い。

 俺達が歩く方が早いかもしれないくらいには。

 ………受付けしてる人は運動が苦手な人が多いのかな?


 ◇


 数分後、奥からガーディッシュのギルドマスターの様な厳ついオッサンが出てきた。

「おー!やっと目が覚めたか!この町の恩人だ!何かあったらギルドの沽券に関わるからな!」

 ガーハッハ!と俺の背中をバシバシ叩いて豪快に笑うオッサン、この世界のギルドマスターって、こんなオッサンしかなれないのか?とため息をつく。

 しかも地味に痛いんだけど?


「改めて、ウェストレイドのギルドマスターとして、そしてこの町に住む一人の人間として礼を言う!本当にありがとう!」

 豪快に、そして真っ直ぐな眼差しでストレートな気持ちを言うギルドマスターに何か恥ずかしいしむず痒い。

 差し出された手を見て、俺も出し握手する。


「恐らく、いや確実にお前達が来なかったら、ここは陥落堕ちていたのは間違いない。改めてありがとう」

 少し強い握手だと感じながらも、目の前のギルドマスターの安堵とも悔しいともとれる顔を見て、俺は何も言えなかった。



「こうなりゃヤケで突っ込むか!何て言ってたしよ!モンスターを何百を道連れにしてな!ガーハッハ!」


 やっと痛い握手から解放されたと思ったら、またバシバシ背中を叩かれダメージがツライ。


「今やお主らは、この町の英雄だ!そのリーダーのマサムネも無事に復活したし、町の皆にも目を覚ましたことを伝えておこう、何せ心配した町の人間が連日、様子を見に宿へ行ってたみたいだしな!」

 それを聞いてコウやリリムを見ると思い出したのか疲れた表情をしている。


 あー。ご愁傷さまです?


 たぶん二人で対応してくれてたんだろうなと理解しました。


 出来れば知らせないでって言いたいけど、そう言う訳にはいかないだろうしな。

 また宿に押し掛けて来そうだし。


 それから俺はガーディッシュのギルドマスターと領主からの伝言と手紙をここのギルドマスターに渡してギルドマスターに別れを告げるとギルドから出る為に入り口に向かう。

 そのまま扉を開けて外に出ると、そこには町の人達が所狭しと待っていた。


 そして俺達を見た瞬間、「ワッ」と歓声が上る。

 感謝の言葉とかが色々と飛んでくるんだけど、言葉がアッチコッチから聞こえてくるから、ある意味騒音だ。


 それから暫くもみくちゃにされた俺達は、やっとの思いで人混みから抜け出すとそこには小さな女の子が可愛い花を一輪持ち待っていた。

 その花を俺に手を伸ばして渡してくる。


 それを俺が受けとると、その女の子はニパッと笑い

「おにーちゃん、守ってくれてありがとー!」

 俺に花を渡すとバイバイと手を振り母親の元に戻っていく。

 その様子を見て俺は、暫く呆けていた。

 そして徐々にあの子や町の人を助ける事が出来たんだと言う実感が出てくる。


 町に着いた途端にキレて暴れて気絶して寝てたんだから、正直に言うと他人事のように思っていた。

 だからこそ、町の人の言葉や女の子の気持ちに今更ながら触れて、じんわりと胸が暖かくなってくる。


 気が付くと何故か涙が溢れていた。

 止めようとすると更に溢れ出してくる。

 感情のコントロールが利かなくなっているみたいだ。

 だけど、泣いた事に恥ずかしさはあるものの悪くは無いと思えた。


 それを見ていた皆は何も言わず、俺が落ち着くまで待っていてくれた。

 町の人達もいつの間にか姿を消していて、何か気を使わせたみたいで少し申し訳なさがある。


 それから俺達は、宿に戻る為に歩き出した。

 町の人、何人かとすれ違ったり屋台の人達に「ありがとう」とか「何か食っていくか?」とか言われつつも歩を進める。

俺の事を見た事が無い人もリリムとコウを見て察したのか、そんな感じで皆が声を掛けてくれた。

町も歴史を感じる良い町だし、人も本当に良い人達ばかりだ。


ここに来て、何より俺達が間に合って本当に良かったと心から思ったのだった。



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