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我が人生に邪魔者は必要なし。表舞台から退いていただきます。 おまけ編ー①
しおりを挟むデリオス達が連れ出され、学園長の仕切り直しで祝賀会が始まった。
私は王子のジョージオと学園長に謝辞を述べそのまま暇乞いすべく浮かれに浮かれていた己が心に区切りを付けた。
被害者の私が謝罪するのか(苦笑)。 まったく。子供の尻拭いをさせられるとは。私もご苦労なことだ。だが加害者が(元)婚約者だ。遺憾ながらも関係者として謝罪するのが妥当か。いやはやこれは慰謝料に上乗せだな(笑)
祝賀に水を差す形になったのはデリオスの仕業だ。卒業が保留となったのは自業自得だろう。相手の女もか。良かったな。デリオス(笑)また女と一緒に勉強できるぞ(笑)。今度はちゃんとお勉強するのだな(笑)
親が許してくれればだが。
自ら出世コースを下りたのだ。よって、非のない私のお胸は痛まない。
さて次なる王太子候補となられるジョージオ王子殿下(将来の上司)に我が心証を良く見せねば。
ここで好印象を与える謝辞を表せば私の評価も上がるだろう。(にやり)
せいぜいアピールをさせてもらおうか。(笑)
私は襟を正してジョージオの正面を向く。さあ、ここが見せ所だ(笑)
「ジョージオ王子殿下におかれましては好奇の眼差しに晒されたわたくしをお助け下さいまして誠にありがとう存じます。今日の慶賀すべき良き日に私事で醜態を演じるとは王太子妃候補王子の婚約者としてあるまじき行いです。己が未熟に深く恥じ入ります。誠に申し訳ございません」
ふん。被害者の私がこうも態度で表したのだ。忖度して頂きたい。(笑)
貴族社会に属する身では非の有無は関係ない。絶対的上位者に対する謝罪は様式美だ。ああ理不尽極まりない。…が私は大人だ。呑み込もう。
さて大人な私が謝罪しようではないか。(笑)
ああ、ご機嫌伺いは臣下の務め。これも業務の一環だ。
私は淑女の姿勢で頭を下げた。指先…爪の先まで意識して。我ながら立派なものである(笑)ああ、惚れ惚れするではないか。(笑)自画自賛だ。(笑)
謝辞を受けたジョージオは、彼女の美しい所作に目と心を奪われていた。
「そう謝られては私が居た堪れないよ。非は祝賀の場で私刑を望んだ兄上にある。騒げば許されると思ったのか。兄上は浅慮で堪え性のない方だとは思っていたがまさかここまでの愚者であったとは。兄上の動向に注視すべきであったのに、私の認識が甘かったと慚愧に堪えない。‥‥アリテシア嬢。この場ではこれ以上話せぬ。すまぬが日を改めても良いだろうか」
「はい。後日父と登城いたします。(王家の誠意を見せてもらおうか!笑)今日はこれにて御前を辞することをお許しくださいませ」
ふー。やっと帰宅できる。ああ余計な労働ではあったが勝てば官軍だ!
ぬははは! 帰ったら祝杯(お茶で)だ!
勝利の美酒(お茶だけど)を味わおうではないか!(笑)
ジョージオのどことなく浮ついた感じが気になるのだが競争相手のアレが脱落したのだ。内心小躍りでもしたいほど嬉しいのだろう。
無能は再教育でも受けていろ!!
ジョージオ(学園長も)に退出の挨拶を済ませたと、意気揚々に帰路へと足を向けるアリテシアの胸中は輝ける領地引き籠りに思いを馳せ浮かれていた。
さぁ用は済んだ。帰るぞ。凱旋だ!(笑)
「あ、アリテシア嬢‥‥呼び止めてすまない。少し話がしたいのだが構わないだろうか」まさかの引き留めである。
むぅ。 ジョージオ。まだ何か?
…‥‥‥‥…‥‥。
はっ?! も、もしや、クレームか?! クレームなのか!
デリオスを御せなかった私へのクレームか!!
諫めず野放しにしていたのは故意だがジョージオはその理由を知らん。
もしや私は己の力量も測れず根回しや打開策を立てることもせずただデリオスの暴挙に甘んじた愚かな女と評価されたのか?!
私は‥…私の力量を疑われたのか?!
くっーーーーーーーーーーーーーぅぅ!
(将来の上司になるだろう)ジョージオにまさか不出来な部下と思わせたのか、私は?!
こ、これは痛恨のミスでしかない!(悔し涙)
先程の挨拶は上々だと思えたのだが。まて、あれは周囲に貴族子息・子女がいたではないか。迂闊に口を開ける状況ではない。ジョージオも日を改めるといったではないか。だとするとこれは? ジョージオは常識ある男だ。ならば私に苦言を呈するつもりなのか? それとも愚か者の烙印を押す気か。(混乱)
‥‥なんたる失態…‥。意気消沈する。
当のジョージオは打ちひしがれた(ように見える)アリテシアを衆人環視の中、婚約者に非道な行為をされショックを受けたと誤解していた。
そう誤解である。
(‥‥何と可哀想に。兄上は阿呆だ。幼き頃より側にいた相手にここまで非道なことが出来るものなのか。兄上は王族や貴族の婚姻の意味を全く理解しておられなかったとは。馬鹿な奴ではあるが最低限の常識はあるかと思うておったのだが。ふっ。だが自滅とは兄上らしい。お陰で私は手を汚さずに王太子の椅子に近付けた。それについては兄上に感謝しかない。多分、父上も動きを把握されていらっしゃったであろうな。それにしても仇敵の兄上。歯応えもない。こんなヤツに私は劣情を抱いていたのか。だがそれも今日までだ! 兄上は失脚した。アリテシア嬢との婚約も白紙だ。やっと機会が巡って来たか。一度は諦めたこの想い。邪魔者はもういない。今度こそ私の想いを成就させるのだ)
ジョージオはこのか弱き女性(ジョージオにはそう映っている)を慰めたい。自分を頼って欲しいと願っていた。なぜなら彼女は初恋の女性だ。彼は兄の婚約者に横恋慕していたのだ。
(‥‥私はアリテシアを守りたかった。純粋に守りたい気持ち…下心は‥‥ちょっとはある。だが、やましくはないぞ! 私を頼りがいのある男性と見てもらえれればそれでいいのだ。い、いやまあ好意を持って貰えたらそれはそれで良いがな。会場での兄上の暴挙。兄上が堂々と浮気を認められたのだ。笑いを堪えるのが大変ではあったが。あれで私にも彼女を口説く機会を得れたわけだ。ああ兄上が愚か者で良かった! 彼女には悪いが私は思いがけない幸運がきたと喜んでしまった。会場で彼女を庇い男気を見せたのも気を引きたい一心からである。正義感からではない。好きな子の前でカッコつけたかったのだ)
彼もまた恋に盲目なタイプであった。
彼はアリテシアを淑女の見本の如き女性だと誤解している。
孤高な存在と一目置かれてはいるが、実は清らかで優しい性根の持ち主だとも勘違いをしている。
なぜそんな勘違いを起こしたのかは謎だ。謎のまま今に至る。
そんなジョージオはドキドキしながら今が好機だと捉え行動を起こしたのだ。
‥‥たとえどさくさ紛れであろうとも。彼にとっては蛮勇だ。
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