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  第6章 587年『衣摺の戦い』において、【物部守屋】討ち取られ、ここに【物部本宗家】滅亡す!

 〔87〕【丁未の乱(衣摺の戦い)】勃発す!【7】

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  【太子】には、【守屋】の声の方向は分かっても、正確な場所は不明であった。

その時、【太子】の脳裏に、【姫】の言霊が鳴り響いた。

・・・【殿下】から見て、辰巳(南東)の方角、60間先の大榎オオエノキの枝が股になっている所です・・・

・・・相わかった! 【姫】には感謝している!・・・


  【太子】は舎人の【秦河勝ハタノカワカツ】と【迹見赤檮トミノイチイ】を呼んで命じた。

「辰巳の方角、60間先の大榎の枝だ!」

【太子】はエビラ(矢筒)から二本の矢を取り出し、額の【四天王木像】に押し当て、祈りを込めて二人に差し出した。

「これは【四天王】の【大神呪ダイシンジュ】のこもった矢である。」

と、二人はヒザマズいて拝受して立ち上がり、辰巳方角に、小籔や雑草の陰から陰を伝って走った。


  【守屋】は自らの弁舌に陶酔したかのように、まだ弓射せずに、演説を続けていた。

「敵も味方もよく承れ!」

「仏はつ国の神ぞ!」

「外つ国の奴腹をこそ護るかも知れぬが、この国の者を護る道理はないぞ!」

「味方は励め! 敵はじ気づけ!」

ようやく、機が熟したのか、【守屋】は強弓に矢をつがえ、引き絞った。

まさに、その刹那、【赤檮イチイ】の放った矢は【守屋】の胸甲を砕き、【心の臓】を貫いた!!

【守屋】はもんどり打って、地面に落下した


  


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