上 下
621 / 704
  第4章 【橘豊日尊】の【大王位即位】の儀式が【王太后炊屋姫】を始め、王族、大臣、大連、豪族・群臣参列の下、荘重盛大に挙行された!

 〔36〕【穴穂部王子】が酒に酔って、殯宮に、先代の王后【炊屋姫】を強姦淫目的で、闖入を企図とす!【3】

しおりを挟む
  【モガリの宮】は、先代【大王】のチョウ臣であった【三輪ノ君逆】という者が手勢を引き連れて警護していた。

深夜とはいえ、中秋の満月の夜、高貴な身成りの男が伴も連れず、酔歩浪々として歩いて来る!

「何者だ!?」

「ここを【モガリの宮】と知っての狼藉か!?」


「狼藉とは何だ!?」

「お主こそ、この私を誰と心得るか!」

「次期【大王候補】筆頭の【穴穂部】である!」

「【王后陛下】から、火急の要件是有りと伺い、伺候した次第!」


【君逆】は地面に土下座して、

「さ、こそ、ありましょうが、今は殯の最中!」

「しかも、真夜中なれば、何卒御賢察下されますよう、お願い仕ります!」



「全く、分からぬ奴よのー」

「この木っ端役人がー!」

「真夜中なればこそ、良いのに。少しは忖度しろ!!」

と、思いっきり、蹴飛ばした!

そして、堂々と、門内に入って行った。、



  この儒学的素養のない時代、未亡人の家に、公然と【夜這い】をかけるのは、よくあることであったが、高貴な女人の家に、しかも、モガリ中は不謹慎とされていた。


  宮の周囲は、門前の騒動を察知した女官十数人が薙刀《ナギナタ》を手にしていた。

「どなたですか?」

「ここを【殯の宮】と知っておいでか!?」 


「【穴穂部王子】である!」

「【先の王后・炊屋カシキヤ姫】に火急の要件あれば、大至急、お取り次ぎ願いたい。」

         
しおりを挟む

処理中です...