芙蓉の喋り場

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　ご無沙汰してます。
　私は相変わらず代わり映えのない日々を送っていますが、いつの間にか金木犀が薫る季節になってしまいました。最近はスーパームーンも拝みまして、ゆっくりと秋を感じている今日この頃です。個人的にはレシートの束がえげつないことになってきて、年末までのカウントダウンが始まりました。歳を重ねる毎に、一年はあっという間になってます。ジャネーの法則には抗えませんね。

　さて仕事柄、年間を通してよく質問されるのが「今まで仕事をした芸能人で、どの人がきれいだった？　格好よかった？　いい人だった？　」です。

　わかります。私も逆の立場なら、芸能人や有名人のここだけの話は凄く気になります。
　私は専門的な局にいるので、有名人との関わりは少ない方ですが、それでも毎日一人くらいは仕事をさせてもらった人がテレビに映っています。

　でも、これが意外と困る質問です。
　守秘義務の面もありますが、特に人柄に対しては話せる場合とエグすぎて話せない場合があります。世の中にはいろんな方がいらっしゃいますし、私の主観やタイミングもあるかと思います。でも話をはぐらかすと「高城さん、本当に○○で働いてるの？」みたいになるし、バランスが難しいです。というわけで、だいたいは「綺麗だったよ、格好よかったよ　」の一言で話は終わりです。内面に関わることは、いい人であったとしても基本的には言及しません。人となりを聞かれて困る方は一緒に仕事をしたこと自体を最初から人に言わないのが、一番平和です。

　ただ興味本位の質問がある一方で、業界人としては腕の見せ所となる場面もあります。

　よく一般人の方がテレビ出演されるときに助言を求められるのは、
「事前に方言を話さないようにと言われて練習したけど、どうしても直すことができなかった。撮影中に方言が出てしまいそうなんだけど、どうしたらいい？　」です。
　実は私自身もイントネーションには自信がなく、今も不安な単語に出くわすことがあるのでアクセント辞典が手放せません。方言がでることはありませんが、幼少期は各地を転々としていたので、標準語のアクセントが分からない単語は未だにでてきます。

　私は方言に関しては「方言を気にして話せなくなることの方が困るので、気にしなくていいです。いつも通り、話してください。もしもの場合があったとしてもフォローはできるので　」と即答するようにしてます。
　もちろん喋りを生業としている人間は限りなく正しい日本語を話す義務があります。しかし喋りでなく、その人自身の存在価値でテレビに出演していただく方に求められるのは正しい日本語ではなくて、その方の持つ知識や経験に基づく言葉の内容です。
　軽々しく方言をなんとかしろという人たちには、一度カメラの前に立って喋ってみろ（聴衆の面前でも可）と、私は常日頃から思ってます。ただでさえ緊張しているのに、喋り方まで考えてしまったら、一番伝えたいことが話せなくなり本末転倒に陥ってしまいます。それに昨今のテレビ事情も手伝って、他地域のお国言葉に触れる機会も増えているので、多少の文化の違いは乗り越えられるようになってきていますしね。

　そもそも日本語というのは諸外国とは違い、多少の語順の前後で意味が大幅に異なることはありません。
　これは音声表現だけでなく文章表現においても言えることかと思いますが、要は最低限のラインさえクリアしていれば、言葉の体裁よりも話の内容の方が大事なのです（言葉を生業にしている私が声を大にして主張するのはどうだろうかとは思いますが）
　
　当たり前ですが、私個人としての生業ではテクニック云々があった方が相手により伝わりやすくなることは確実なので、今後とも努力は惜しみません。もちろんプロ相手にはそれなりの対応で臨みますが、だからといって重箱の隅をつつくような仕事はしないことも意識しています。要するに、プロなら全部どんとこいだよね、が私の最近のモットーなんだなと気付いた次第です。