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私がこの業界に入ったとき、上司に最初に言われた言葉は「テレビ業界にはこの先に未来はない。さてどうする?」でした。
在学中には多少はアピールできそうな実績を作り、何十社と就活をし、ほぼ運だけで乗りきって、やっとの思いで入社したはずの放送業界でした。なのに入社早々に突きつけられた無情な現実は、夢を膨らませて就職した若造には、なかなか衝撃的な内容でした。でも今さら引き返すわけにもいかないですし、一度踏み入れたら潰しも利かない専門職です。当時の私は自分の職業選択のセンスのなさに呆れるしかありませんでした。あと就職説明会で先に言えと思いました。
当時はまだインターネットも成熟しきってはいなくて、動画サイトやサブスクなどは発達はしていませんでした。でも自分から情報を取りに行ける世界になったら、第二次メディアである我々の存在価値はなくなるし、我々には明るい未来はない。数年後に確実にやってくるであろう将来像に、学生に毛が生えたくらいの身分でも十分に危機感を覚えました。我々テレビに人々が生活スタイルを合わせてくれる時代はまもなく終焉を迎える。私たち世代は、テレビ業界にに就職したことに安泰を感じた人は少ないかと思います。
何度も言いますが、テレビには未来はない。これは業界共通認識のはずです。我々に残された時間はもうあと僅かなことは明白です。
私たち世代はバブルは教科書の歴史で、伝聞でしかその派手なやりとりは知りません。黄金期と呼ばれる時代は存じませんし、過去がどうであったかは私に察する術はありませんが、現在の我々は間違いなく世間に対して謙虚であるべき存在です。まもなく国民の全員がインターネットを駆使できる時代がやってきます。テレビなんて誰も観てはくれなくなります。そうなれば我々テレビ業界はコンテンツの正確性、誠実性、有益性で対抗するしかありません。即時性を筆頭に、多くのカテゴリーで我々はインターネットには勝てません。そうなれば、我々は別の切り口でコンテンツ力を高めるしかないわけです。
だからこそ我々がしっかりと念頭に置くべきことは、我々にとっては番組作りは何百分の一であっても、別の誰かにとっては大切な一分の一なのだという命題です。それは一緒にお仕事をさせていただく方に対してもそうだし、観てくださるいわゆる視聴者の皆さまに対しても同様です。これは番組作りにおける基本の一つであり、他の職業においても当てはまる社会通念だと認識しています。
特に前者は人生を賭けている方たちとのやり取りが含まれます。当たり前ではありますが、常に我々は一分の一に応えられるパフォーマンスでなくてはならないのだと思っています。数字も大事なことではありますが、やはりチーム全体が納得して完成させたコンテンツを観ていただきたい。それが自分たちに携わってくださる方への誠意であり、視聴者に対して提案するべき番組だと私は考えています。
私は上司とは折が合わないことも多々ありましたが、業界で生きていく上で必要なマインドを叩き込んでくれたことだけは今は感謝しています。
この話を書くかどうかは悩む部分はありましたが、職業をオープンにして執筆している以上、スルーするのはどうかと思い、私見を述べさせていただきました。
在学中には多少はアピールできそうな実績を作り、何十社と就活をし、ほぼ運だけで乗りきって、やっとの思いで入社したはずの放送業界でした。なのに入社早々に突きつけられた無情な現実は、夢を膨らませて就職した若造には、なかなか衝撃的な内容でした。でも今さら引き返すわけにもいかないですし、一度踏み入れたら潰しも利かない専門職です。当時の私は自分の職業選択のセンスのなさに呆れるしかありませんでした。あと就職説明会で先に言えと思いました。
当時はまだインターネットも成熟しきってはいなくて、動画サイトやサブスクなどは発達はしていませんでした。でも自分から情報を取りに行ける世界になったら、第二次メディアである我々の存在価値はなくなるし、我々には明るい未来はない。数年後に確実にやってくるであろう将来像に、学生に毛が生えたくらいの身分でも十分に危機感を覚えました。我々テレビに人々が生活スタイルを合わせてくれる時代はまもなく終焉を迎える。私たち世代は、テレビ業界にに就職したことに安泰を感じた人は少ないかと思います。
何度も言いますが、テレビには未来はない。これは業界共通認識のはずです。我々に残された時間はもうあと僅かなことは明白です。
私たち世代はバブルは教科書の歴史で、伝聞でしかその派手なやりとりは知りません。黄金期と呼ばれる時代は存じませんし、過去がどうであったかは私に察する術はありませんが、現在の我々は間違いなく世間に対して謙虚であるべき存在です。まもなく国民の全員がインターネットを駆使できる時代がやってきます。テレビなんて誰も観てはくれなくなります。そうなれば我々テレビ業界はコンテンツの正確性、誠実性、有益性で対抗するしかありません。即時性を筆頭に、多くのカテゴリーで我々はインターネットには勝てません。そうなれば、我々は別の切り口でコンテンツ力を高めるしかないわけです。
だからこそ我々がしっかりと念頭に置くべきことは、我々にとっては番組作りは何百分の一であっても、別の誰かにとっては大切な一分の一なのだという命題です。それは一緒にお仕事をさせていただく方に対してもそうだし、観てくださるいわゆる視聴者の皆さまに対しても同様です。これは番組作りにおける基本の一つであり、他の職業においても当てはまる社会通念だと認識しています。
特に前者は人生を賭けている方たちとのやり取りが含まれます。当たり前ではありますが、常に我々は一分の一に応えられるパフォーマンスでなくてはならないのだと思っています。数字も大事なことではありますが、やはりチーム全体が納得して完成させたコンテンツを観ていただきたい。それが自分たちに携わってくださる方への誠意であり、視聴者に対して提案するべき番組だと私は考えています。
私は上司とは折が合わないことも多々ありましたが、業界で生きていく上で必要なマインドを叩き込んでくれたことだけは今は感謝しています。
この話を書くかどうかは悩む部分はありましたが、職業をオープンにして執筆している以上、スルーするのはどうかと思い、私見を述べさせていただきました。
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