悪役令嬢?えっ、誰が?

Nom

文字の大きさ
上 下
3 / 13

しおりを挟む


で、今ーー

その婚約者に会いました。今はまだ候補ですけど。ほぼ決定。
まだ俺たち6歳です。

「ベルリアーナ=アニデロイドでございます。お会いできて光栄です。」

俺の目の前に天使がいるんですが!!

サラサラと絡むことを知らない艶やかな紺髪。
伏せた目には、長いまつ毛。
その下にのぞくのは、陽を浴びたことのない白い肌。ほんのりとピンクに染めた頰。
 緊張からか、体が少し震えているものの、しっかりとした声と崩れることのない跪礼カーテシー

顔をあげたそこには、
ぱっちり二重まぶたの大きなライム色の瞳。

ああ!なんて可愛いのだろう!!!

「はじめまして、ユトラ=エメラルドです。会えるのを心から楽しみにしていました、お会いでき嬉しいです。これからよろしくお願いしますね、ベルリアーナ=アニデロイド嬢。」

ひざまづき、ベルリアーナの手を取り、
チュッと、キスをする。
ベルリアーナを見ると、林檎のように顔を真っ赤にさせて、目にはうっすらと涙が…

えっ!なんで泣きそうなの?そんなに嫌だったの⁉︎

急いで立ち上がりながら乱暴にはせずに手を離す。
一歩下がって、おそるおそる、
「ベルリアーナ嬢?」
と声をかける。

「えっ、あっ、その」

顔を真っ赤にさせながら、わたわたと目を泳がせている。 

あぁ、本当に可愛い過ぎるよ!抱きしめたい!

手が伸びそうになるのを、必死に理性で抑える。

「外で話そうか!」

そう言ってベルリアーナの手を取り、さりげなくエスコートする。

ベルリアーナは、自分の手と、俺の顔を交互に見ながら、目を見開いている。その間も「えっ、えっ?」って声を出している。本当に可愛い…

そうやって、お城の中庭に出る。
俺と兄の母親、王妃様が好きな薔薇の花がそれはそれは綺麗に咲き誇っている。

その真ん中にある東屋に、俺たち2人用にお茶とお菓子がセットされている。
お城のメイドたち、本当に優秀過ぎるよ。

イスを引き、ベルリアーナに座ってもらう。まだ、自分に何が起こっているのか理解しきれてないみたいだけど、少し落ち着いたみたい。

もう一つのイスに座り、一口紅茶を飲み舞い上がっている気持ちを落ち着かせる。

「急に連れ出しちゃってごめんね?
ずっと会いたかったから、会えて嬉しくて…」

出来るだけ気さくに話しかけてみる。

「い、いえ!わたくしもお会いしたかったので、うれしいです…」

俯いて顔を真っ赤にさせてもじもじしている。
ああ!本当に可愛い!!

自分さっきから可愛いしか思ってないな笑
って、ちょっと冷静になるけど、やっぱり可愛い。
気持ち悪いぐらいニヤニヤしてると思う…
ちょっと落ち着こう、うん。
深呼吸して、顔を引き締める。

「ユ、ユトラ殿下…
わたくしでよろしいのですか…?」

ん?どういうこと?
俺の婚約者はもう君しかいないよ…⁉︎

「うん。でも、どうしてそんなこと聞くの?」

聞き返してみる。

「そ、それは…
わたくしは、その、侯爵令嬢ですけど、それだけで…
ハルレアのように器量好しでもないですから…
こんなわたくしでよいのかと…」

ハルレア?って…
確かベルリアーナの妹だっけ?

そういえば…
ベルリアーナって、家では使用人のように使われているんだったけ…
えっ?なにそれ!なんで今頃思い出してんの俺!
大事なことじゃん!
悪役令嬢だから、性格が悪いと思ったけど、妹が溺愛されてて、愛されることを知らないから、ユトラを獲られたら本当に1人になっちゃうからじゃん!
だから、ユトラを獲られないためにヒロインいじめるんだった!
まじでクソ家族過ぎる!
ユトラもだけどさ!
初めて会った時は、まだ腐ってなかったから優しかったんだよなぁ、ユトラ。
それでベルリアーナはユトラに恋するんだよね、ユトラ最低すぎる!
ってこれはまた後で考えることにして…

「僕は…
ベルリアーナでいい。じゃなくて、ベルリアーナがいいんだよ。
会うのは初めてなのにこんなこと言うのは変かもしれないけど…
僕はベルリアーナが好きだよ。」

「…えっ」

ベルリアーナはまた、林檎みたいに顔を真っ赤にさせている。

「そうやってすぐに真っ赤になっちゃうところとか…
僕のことを気にしてくれる優しいところとが、好きだよ。」

ベルリアーナの目をちゃんと見て、伝える。

「わ、わたくしのことが…すき?」

「うん!」

ベルリアーナの膝の上で固く握り締めている手を両手で包み、笑顔で頷いた




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ヒロインではないので婚約解消を求めたら、逆に追われ監禁されました。

曼珠沙華
恋愛
「運命の人?そんなの君以外に誰がいるというの?」 きっかけは幼い頃の出来事だった。 ある豪雨の夜、窓の外を眺めていると目の前に雷が落ちた。 その光と音の刺激のせいなのか、ふと前世の記憶が蘇った。 あ、ここは前世の私がはまっていた乙女ゲームの世界。 そしてローズという自分の名前。 よりにもよって悪役令嬢に転生していた。 攻略対象たちと恋をできないのは残念だけど仕方がない。 婚約者であるウィリアムに婚約破棄される前に、自ら婚約解消を願い出た。 するとウィリアムだけでなく、護衛騎士ライリー、義弟ニコルまで様子がおかしくなり……?

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

そして乙女ゲームは始まらなかった

お好み焼き
恋愛
気付いたら9歳の悪役令嬢に転生してました。前世でプレイした乙女ゲームの悪役キャラです。悪役令嬢なのでなにか悪さをしないといけないのでしょうか?しかし私には誰かをいじめる趣味も性癖もありません。むしろ苦しんでいる人を見ると胸が重くなります。 一体私は何をしたらいいのでしょうか?

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

逆襲のグレイス〜意地悪な公爵令息と結婚なんて絶対にお断りなので、やり返して婚約破棄を目指します〜

シアノ
恋愛
伯爵令嬢のグレイスに婚約が決まった。しかしその相手は幼い頃にグレイスに意地悪をしたいじめっ子、公爵令息のレオンだったのだ。レオンと結婚したら一生いじめられると誤解したグレイスは、レオンに直談判して「今までの分をやり返して、俺がグレイスを嫌いになったら婚約破棄をする」という約束を取り付ける。やり返すことにしたグレイスだが、レオンは妙に優しくて……なんだか溺愛されているような……? 嫌われるためにレオンとデートをしたり、初恋の人に再会してしまったり、さらには事件が没発して── さてさてグレイスの婚約は果たしてどうなるか。 勘違いと鈍感が重なったすれ違い溺愛ラブ。

魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!

蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」 「「……は?」」 どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。 しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。 前世での最期の記憶から、男性が苦手。 初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。 リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。 当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。 おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……? 攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。 ファンタジー要素も多めです。 ※なろう様にも掲載中 ※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。

溺愛パパは勇者!〜悪役令嬢の私のパパが勇者だった件〜

ハルン
恋愛
最後の記憶は、消毒液の匂いと白い部屋と機械音。 月宮雫(20)は、長い闘病生活の末に死亡。 『来世があるなら何にも負けない強い身体の子供になりたい』 そう思ったお陰なのか、私は生まれ変わった。 剣と魔法の世界にティア=ムーンライドして朧げな記憶を持ちながら。 でも、相変わらずの病弱体質だった。 しかも父親は、強い身体を持つ勇者。 「確かに『強い身体の子供になりたい』。そう願ったけど、意味が全然ちがーうっ!!」 これは、とても可哀想な私の物語だ。

悪役令嬢は断罪イベントをエンジョイしたい

真咲
恋愛
悪役令嬢、クラリスは断罪イベント中に前世の記憶を得る。 そして、クラリスのとった行動は……。 断罪イベントをエンジョイしたい悪役令嬢に振り回されるヒロインとヒーロー。 ……なんかすみません。 カオスなコメディを書きたくなって……。 さくっと読める(ハズ!)短い話なので、あー暇だし読んでやろっかなーっていう優しい方用ですです(* >ω<)

処理中です...