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ファリ先生に学ぶ

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 ファリは、おれを抱えたままでもサクサクと狩りを終えた。
 そう、おれを抱えたまま…

 崖上で一度降ろしてもらい、少しは歩いたのだが、獲物を見つけたファリが狩りに向かい、おれは待機した。その間に、魔物があらわれ…

 ハイ、ご想像の通り、魔物にやられそうになり、ファリに助けて貰いました。

 で、冒頭に戻る。
 おれを降ろして一人にしておくよりも、抱えたまま狩をした方が危険性が低いと判断されてしまったワケで…

 ……驚きの役立たずっぷりである。

 獲物の血抜きをしている間に、焚き木を拾うことになり、もちろんおれも手伝ったものの、良さそうなのを二、三本拾ったところで、残り全てをファリが拾い終わっていたので、ここでも全く役には立っていない。

 火おこしも、獲物を捌くのも、生き延びる為には必要な知識なので、出来るようにならないと、と思い、ファリに教えて貰ったものの、どちらもすぐに習得できるものではない。
 特に獲物を捌くのは難易度が高い。魚さえ捌いたことのないおれには、獲物の首を跳ねて血を抜き、皮を剥ぎ、肉塊へと変えていく光景はかなり衝撃的だった。
 血の気が引いて吐き気がしたが、奥歯を噛み締めてこらえた。
 これだけ色々と面倒を見て貰っておいて、ヘコたれている訳にはいかない。
 見落とさないように最後まで集中してなんとか大まかな手順だけは覚えた。まともにやれるようになるには何度も繰り返し練習が必要そうだけど。

 四苦八苦しながら準備して、やっと肉を焚き火で炙り始めることができた。
 たった一食の朝食の準備が、こんなに大変だなんて…

 コンビニがあれば簡単なんだけどなぁ~
 せめてガスや水道があれば~
 水道… そういや、喉がカラカラだよな…。魔法で出した水って飲めるのかな?

「ファリー、魔法で出した水って飲める?」

「もちろん飲める」

「あ、でもコップが無いな…」
 
「容器か… コエリアの葉で代用できるが」

 そう言って、ファリが、そこら辺に結構生えている表面のツルツルした厚め葉を摘んだ。

「コエリアには防腐効果がある。これで食料を包んだり、一緒に入れたりして持ちを良くさせる。植生範囲も広く、重宝されている植物だ」

 説明してくれながら、手にしたコエリアを、器用にクルリと巻いて、切れ込みを入れた所に差し込み、簡単な容器を作った。元の葉の大きさは、大人の手のひら二枚分くらいあったので、小さめのマグカップサイズの容器ができた。

 魔法を使う前に、一度ステータスを確認する。

————————————————
主人公:円谷つぶらや 和明かずあき(17)
レベル:4

体力:50/65
魔力:350/350

攻撃:9
防御:9
知恵:14
精神:14
敏捷:14
器用:14
幸運:1
魅力:1

スキル:水のポンプ/緩衝の水
    /ヒール/隠密

乙女の本気:未習得

属性:聖/水
状態:乙女の呪い
称号:聖女/巻き込まれし者
   /女神(代理補佐)の加護
————————————————

 水のポンプも、緩衝の水も、どちらも水量が多すぎる。これを使ったら、そこら中水びたしになるし、容器も壊れてしまいそうだ。

 容器を手に持ち、水道の蛇口をひねって必要な分だけ水を出すイメージをする。
 水道のように細い水流が、ジャーっと音を立てながら空中から流れ出てくる。容器が満たされたタイミングで蛇口をひねって止めるイメージをする。
 すると、水はピタリと止まり、程よくコエリアのコップを水が満たした。

 凄い! 最初からイメージ通りにできた!

 これまでに使った水魔法は、どれもイメージからズレていたが、今回は完璧に成功したのが嬉しくて笑顔がこぼれた。
 馴染みのない攻撃魔法とは違い、水道は普段から使っているものなので、イメージしやすく、明確に出来ているおかげかもしれない。

「はい、ファリの分」

 やっと役に立てたのが嬉しくて、ファリにコップを差し出しながらもついついニマニマしてしまう。

「ファリ?」

 こちらを見たまま、ぼーっとしているようで、なかなか受け取ってくれない。名前を呼ぶと、ハッと気付いて受け取ってくれる。

 ファリは朝から狩りを行い、食事の準備をしてくれた。その上、何も知らない手のかかるおれに、根気よく丁寧に指導までしてくれて。…昨夜は大怪我をしていたというのに。

 やっぱ、疲れさせちゃったよな…。申し訳ない…。

 ファリはひと口飲んでふっと微笑んだ。

「うまい。…カズアキは水の魔法を使えるのだな」

「うんうん、あんまり得意じゃないんだけど、上手くできて良かった!」
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