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超美麗解説ブックレット

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 やたらと華美な装丁のブックレットをパラリと開く。

『乙女はある日突然、この世界を救う聖女として異世界から召喚されます。そこに待っていたのは、王子様をはじめ、素敵な殿方達。彼らは乙女を支え、守り、戦ってくれるでしょう。 学園で彼らと学びながら、絆を深めていきましょう。恋のライバルを蹴散らしながら、彼らとのめくるめく素敵な恋を楽しんで♡』

 冒頭にはこのゲームの設定が書かれていた。
 流石、タイトルにハーレム学園とうたっているだけあり、複数の男との恋愛が推奨されている。
 おれとしては、たったひとりの大切な人と、想い想われ… ってのに憧れるけど… って、乙女ゲームより乙女っぽいことを考えてしまったが…。
 …まぁ、おれの好みは置いておくとして。恋愛ゲームってそういうものな気もするし。そこは100歩譲っていいとしよう。けど…

 このゲーム、なんだかおかしい。

 この説明だけ読めば、これは恋愛がメインのゲームであって、あくまでも恋愛のスパイスとして、世界を救う聖女だとかの設定があると受け取れる。

 けど、チュートリアルでの妖精の口ぶりでは、この世界を救うのが本来の目的で、イケメン達はあくまでも異世界の乙女を呼び寄せる為のエサであると言い切っていた。
 それに…

 妖精は一度も、これがだとは言わなかったのだ。

 状況を整理しきれない。もやもやした気持ちのまま、ページをめくる。次のページからは、攻略対象達のプロフィールが書かれている。
 見開きで、オープ二ングで見た、金髪の美形が微笑んでいて、その隣にキャラクター設定が添えられている。
 どうやら、見た目通り、王子様だったようで、ゲームの舞台となる、ラズデルト王国の第2王子と書かれている。
 他にも、名前、身長、体重、星座、血液型、好きな食べ物や場所、など様々な個人情報が掲載されている。

 …牡羊座のAB型って… 異世界なのに地球と同じ星座にABO式血液型なんだ?

 無意味な謎は増えるばかりだが、そんな個人情報はどうでもいい。
 生き延びる為の情報が欲しい。

 数ページにわたる、イケメン達のプロフィールを飛ばしまくり、その後ろのページをめくる。

『素敵な彼らのスチル集♡特別にちょっぴりご紹介!』

 …………。
 いらね……。

 更にページを飛ばしていく。

『迷える乙女の為のヒント集♡』

 あった!これだ!

『彼を落とすには、やっぱり魅力がなくっちゃね♡ 魅力不足の乙女にちょっぴりアドバイス! 王都には素敵なドレスやアクセサリーが売ってるよ。ぜひ買い集めて彼らを魅了してね♡ 特殊な服やアクセサリーには、魅力以外のステータスをアップできるものもあるよ。装飾品以外にも魅力がアップする特別イベントもあるので、ぜひクリアしてみてね♡』

 魅力を上げる必要性は感じないが、他のステータスがアップするのは助かるな。そういう物が無いか探してみなくては。

 まぁ、こんな森の中じゃ、装飾品も何もあったもんじゃ無いだろうけど…

『「乙女の本気」は最重要ステータスです。習得すれば、♡マークがひとつずつ増えていきます。このマークが五つ以上揃わないとクリア不能です。素敵な殿方達とハッピーエンドを迎える為にも必ず習得しましょう』

 ステータス欄で、魔法やスキルが未習得だった時はただの空欄だったのに、これは最初からわざわざ『未習得』と記載されていたし、タイトルにも ~ 乙女の本気モード ~ とついているだけに、薄々重要なステータスだろうとは思っていたが、最重要項目だったのか。
 なんとしても習得したいが、肝心の習得方法が分からない。イベントのクリア報酬か何かだろうか…?

『恋に夢中になりすぎて、うっかりレベルを上げられなかった乙女はよーく聞いて。クエスト達成期限までに達成可能レベルに到達できなかったら、たーいへん☆』

 !!!
 たーいへん☆ じゃ、ねーわ! 死ぬんだろ! と内心ツッコミながらも、これは重要な情報だ。食いつくように続きを読む。

『加護持ちの乙女限定で、「修行モード 」に切り替えが可能となります。』

 女神(代理補佐)の加護でも有効なんだろうか? 少々不安だ。

『「修行モード」とは、このモードに切り替えて戦闘すると、入手出来る経験値が2倍になるという救済措置です。修行モードでダンジョンに籠もれば、レベル不足の乙女もなんとかなりますよね♡』

 え、すごい、チートじゃねーか! やった!

『「チート、キタコレ!」とか思っている乙女は砂糖10杯入れたココアよりも甘いです☆「無料の昼飯なんてものはない」のです。修行モード時は、レベル、スキルの威力も含め、全てのステータスが半減します。もちろん回復速度も半分です。工夫次第で、ある程度時間の短縮は可能となりますが、決して楽はできません☆』

 ………。

 理不尽ゲームに諭された……

 とにかく、これは使える情報であることは間違いない。しっかりと心のメモに刻んで、次の項目に目を移す、

『困った時の「悪役令嬢」頼み。もし、乙女が行き詰まった時は、「悪役令嬢」を探してみましょう。必ず助けになるはずです。色々な意味で』

 ???

 助けてくれる人なのに「悪役」って意味わかんねーな。「色々な意味で」、とか意味深なこと書いてあるから直接助けてくれる訳じゃねーってことか?

 その後もいくつか情報が載ってはいたが、そのほとんどが恋愛に関することばかりで役にはたちそうにない。

 最後のページをめくると、そこに今、1番知りたかった情報があった。
 見開きで掲載されていたのは、ゲームの舞台となる、学園を中心とした大まかな周辺地図であった。
 この地図の上側を北と仮定して方角を考えるなら、おれの居るレニンの森は、学園のある王都の南に位置している。
 おれが念じて現れる画面マップでも上に向かって進んでいるので、大雑把に言うと、王都方面に向かっていると言えるだろう。スタート地点が何処なのかが分からないので、やや不安ではあるが。
 画面に表示されるマップも、ブックレットのマップも、同じ製作者が… いや、製作者自体は違ったとしても少なくとも、同じ製作会社? グループ? サイド? まぁ、とにかく同じルールで作成されているだろうから、方角の表示方向が逆になることはないと見積もる。

 それにしても、レニンの森、広いな…

 食料も手に入れられていない今、無事に抜けられるか不安になる。

 このマークは…?

 よく見ると、レニンの森の中に何か入り口のようなマークが記載されていた。マップ横の凡例と照らし合わせると、そのマークがダンジョンを示しているとわかる。

 レニンの森にはダンジョンがあるのか…

 取り敢えず、この森を抜けて人里に出るつもりではあるが、後にダンジョンに入る為にまた森に来る機会もあるかもしれない。

 レベルを上げつつこの森を抜けて、王都を目指し、悪役令嬢に会う。
 差し当たっての目標は出来た。

 広げていたブックレットが膝からトサリと地面に落ちる。

 目標ができたことで、張り詰めていた緊張の糸が切れた。肉体的疲労も相まって、迂闊にも気を失うようにして、おれは眠りに落ちてしまった…
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