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おれはモフモフの方が好き

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 オープニング映像が終わった後は、普通はスタートボタンが表示されるものだが、いきなりチュートリアルをやるか、スキップするかの二択のボタンが現れた。
 ボタンの上には注釈が光っている。

『チュートリアルをスキップする場合は、スキップボタンを選択して下さい。3秒以内に選択されない場合は、自動的にチュートリアルボタンが選択されます』

 ぇ、3秒って短っ! 注釈を読み終わる前に経つんじゃね?!

 その通りとなった。

 ナニこのゲーム。
 選択肢があると見せかけて実際は無いみたいなもんだな。

 強制的にチュートリアルが始まった。

「ハーイ、わたしジェシー。乙女を導く妖精よ。よろしくネ」

 画面の中に薄桃色に輝く薄い羽根を羽ばたかせて、妖精と言えばコレ、というようなステレオタイプのなんのヒネリもない人型妖精が現れ、ウインクをする。

 フツーの妖精って… イマドキはもっとこう… 可愛いフワフワした動物型の案内役とかが主流なんじゃねーの?

「ハイ、そこの乙女!今失礼なこと考えなかった?!」

 えっ…?

 こちらの思考を読んだかのようなタイミングでツッコミが入り、少しどきりとしたが、プレイヤーと会話が成り立っているように見せかける、製作側の遊びであったのか、特に返事を返さなくても何事もなかったかのように話が進められていく。
 まぁ、当たり前だな。

「ようこそ、ハーレム学園 どきどき♡サバイバル ~乙女の本気モード~ の世界へ!」

 ようこそと言われてもな…
 てか、こんなゲームをのん気にプレイしてる場合じゃないっ。
 まずはここがどこだか確かめる!

 立ち上がって足元に付いた土を払い、あらためて周囲を見渡すが…

 ……スゲー、邪魔…

 半透明で透けていて、画面の向こうの景色も見えるには見えるけれど、はっきり言って画面が邪魔だ。
 しかし、探しても『閉じる』とか『終了』のボタンが見当たらない。

「そこの乙女、せっかちは身を滅ぼすわよ。何せここは歴戦の選ばれた乙女のみが来られる世界。~乙女の本気モード~。3秒でスキップを選択出来ないような乙女は、チュートリアル見てないと、あっと言う間に死んじゃうゾ☆」

 妖精は、画面の向こうからこちらに向かって、ビシッと人差し指を突き出している。
 またしても行動を読まれているかのようなセリフだ。
 そして、ツッコミ所も満載だ。

 なんなんだ? 歴戦の乙女って? 乙女なのに歴戦って… イミわかんねー。ってか、乙女ゲーって恋愛ゲームじゃねーの?死んだりすんの?

 一般的なRPGやシューティングゲームなどはやったことはあるが、乙女ゲームをプレイしたことがないので、セオリーがよく分からない。
 とにかくチュートリアルが終わらないことにはこの画面も消えそうにないので、大人しくチュートリアルを見ることにした。

「まずは、ステータスの見方よ。ステータスオープンって念じるか、ここのボタンを押してみてね」

 念じると開くとか、中二心をくすぐるようなこと言って、結局の所はボタンを押せってことだろ?

 タッチパネルのように直接指で触れてボタンを押すと、妖精の隣にステータス画面が現れた。
 ウィンドウの左側には、両手を下向きに広げて人形のようなポーズをしている3Dのおれの全身像が映っていて驚く。
 今着ているブレザーの制服がそのまま反映されている。白のワイシャツ、細い赤のラインが入っているネイビーのネクタイ、グレーのスラックスとジャケットという出で立ちだ。襟元を少し着崩しているところや、袖を軽くまくっているところまで忠実に表現されている。
 艶のある黒髪や、コンプレックスの女顔どころか、おそらくゲームの箱がぶつかった時に額にできた赤い痕までが忠実に再現されている。

 ホントに、なんなんだコレ…

 ウィンドウの右側にはステータスの数値が並んでいる。

————————————————
主人公:円谷つぶらや 和明かずあき(17)
レベル:1

体力:40/50
魔力:200/200

攻撃:3
防御:3
知恵:5
精神:5
敏捷:5
器用:5
幸運:1
魅力:1

乙女の本気:未習得

属性:聖/水
状態:乙女の呪い
称号:聖女/巻き込まれし者
   /女神(代理補佐)の加護
————————————————

 ん?? 称号…
 聖女? …女? …女?! えっ、女?!

 思わず手で触って股間を確認する。

 よかった… ちゃんとついてる…

 この異常な状況の中、ずつと乙女とか呼ばれているし、聖女とまで書かれているしで、つい、一瞬女の子にされてしまったのかと焦ってしまった。

 いや、そこよりも、注目すべきは、巻き込まれし者、の方か?
 事故時に見た、這いずっておれの方に向かってきていた女の子を思い出す。

 あの子に巻き込まれた… って、コトだよな?

 少なくとも、このゲームをおれにぶつけてきたのはあの子で間違いないだろう。「わたしのどきサバ」とか叫んでいたくらいだ。血まみれだったけど、助かったのかな? 妙に生命力にあふれてる感じがしたから、何となく大丈夫な気がするな…
 この呪ってる乙女ってのも、もしかしてあの女の子か?あの幽霊を連想させたあたり、呪いという言葉がぴったりハマる。もしそうだとしたら、逆怨みもいいところだ。

 あと、女神(代理補佐)の加護? 微妙に有り難みが薄い!
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