章吾と竜

しんたろう

文字の大きさ
上 下
8 / 15

しおりを挟む
車が網走刑務所に着いた。

「出ろ」

警察の一人が言った。
章吾は車を出て、刑務所を見つめる。刑務所は雪が降っていて、寒かった。
章吾は白い息を吐きながら、刑務所の中に入っていった。
刑務所の若い刑務官が刑務所を案内する。
食事場、浴室、作業場、そして章吾の入る独房に案内された。

「ひととおりわかったみたいですね」刑務官は言う。

それから囚人番号のついた服にに着替えさせられて独房に連れていかれて、

「今日から今日からお前の名は、囚人番号97だ」と言われ、

「入れ」と刑務官に言われる。

独房の室内。独房にはもう一人の囚人がいて、足を触りながら何かぶつぶつ言っている。
刑務官の話だと精神異常者らしい。
独房に章吾は入ると、鍵をかけられた。
そのまま独房の畳に寝転んだ。
窓の外は雪が見え、風が激しく吹いている。
それから時々、組の頭が面会に来てくれた。
面会室で、

「刑務所の暮らしはどうだ?」と言う。
「いいもんじゃないですよ。それより組の借金はどうなったのですか?」
「お前さんのおかげで帳消しや」
「よかったなぁ」そう言うと章吾は、
「出たら生活の保障はしてくれますか?」
「気にせんでいい。借金が帳消しになったから、お前のやっていける額はやる」
そう言う。
その他、様々な話をした。
だが、1年が経つと組の頭も顔をめっきり見せなくなっていた。
章吾は一人官房でもう一人との生活に飽きていた。
朝早く起きて、食事を済ませ、昼には作業をした後、夕方には浴室で体を洗う。
そんな囚人の生活を送る。
そのうち、囚人の知り合いも増えて、食事も一緒にするようになる。
部屋のもう一人の囚人とはまったく話さなかった。
夜になると、家から持ってきた、小型のテレビを見るのが日課になっていた。
だがそのうち小型のテレビも刑務官に取り上げられた。

ある夜、別の部屋の人間が凄い声を上げて、刑務官に連れられていた。
驚いて章吾は官房の小さい窓からそれを見つめていた。
同じ部屋の囚人が久々に声をかける。

「死刑囚や」

その死刑囚は激しい抵抗を見せたが、そのうち静かになり、刑務官に連れられて行った。

「ここの刑務所の事を知っとるか?」もう一人の囚人が言う。
「いや・・・」章吾は少し言う。

「ここの官房をすこし行って、曲がった所に白い長い廊下がある。
そこで多くの死刑囚はたえられなくなり発狂した奴もおる。
ここの網走刑務所は戦前にできた刑務所や。
廊下を少し行ったら、死刑台や。昔は電気椅子もあった、どうやって死刑になっていたかは謎やが、死刑台には苦しい熱のせいか、死刑場には赤い手形が多く死刑台に残っているんや、みんな死刑囚の手形や。
多くの人が苦しみもがいた手形が残っとる。
廊下で多くは抵抗する、だが、押さえられて死刑台に行くんや。
戦前の話やが多く残っているんや・・・」
と言った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

エロ・ファンタジー

フルーツパフェ
大衆娯楽
 物事は上手くいかない。  それは異世界でも同じこと。  夢と好奇心に溢れる異世界の少女達は、恥辱に塗れた現実を味わうことになる。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

処理中です...