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第1章

ストーカー、毒を作る。

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流石に血だらけで授業を受ける訳にもいかず、着替えて寮に帰ることになった。ロイドとイリスは自教室に帰って、救護班としての手続きを終えたらしいエディが保健室から寮に送ってくれるらしい。

「びっくりしたよー。ヴィオラって医学の知識もあるんだね。僕が見た限り応急処置が完璧だった。」

「本で読んだことがあったの。彼は無事だった?」
前世で学んでるなんて言えないよね。ヒロインちゃんに任せて来たけど、ちょっと気になる。

「治癒魔法で傷跡すら残らないさ。」
私はほっとしたんだけど、エディは何か思うところがあるのか、寂しそうに言った。

「エディ?」

「あ、いやほら、僕の家って治癒者で有名だろ?」

え。エディの苗字って確か、ブリュスター…まさか。

「エディ…貴方の家って、あのブリュスターなの?」

「あれ?言ってなかった?」

やばい!完全にやらかした。ブリュスター家っていったら歴代の王女が多く降嫁していて、王家に最も近い血を持つ家じゃないか。光属性を活かしてこの国の医療を担っている。その家の息子?私の態度、やらかしでしかないよ!

「あぁ、かしこまらないで。今まで通りしてくれると嬉しいな。」

「その、知らないでは、許されないことですわ…」

「いいんだ。僕は闇属性で、どんなに救いたくても人を傷つけることしかできない落ちこぼれなんだから。」

ん?闇属性は落ちこぼれ、ってどうゆうこと?

「僕は家の力にもなれないから、皆に見放されてるんだよ。」

確かに光属性は他の属性にはない、治癒能力を持っている。でも、闇属性が人を傷つけることしかできないなんて違うんじゃないだろうか。

「それ、誰かに言われたの?」

「父親さ。酷い親だろう?」
そう言って笑うエディはなんだか痛々しくて、私は我慢できなかった。

「エディ、貴方は落ちこぼれなんかじゃないわよ」
魔法学については誰よりも知識が深いし、いつも冷静なところはすごく頼りになる。

「…やめて。慰めなんていらない。無責任だと思わないのかい?」

「エディ…」

「ごめん、もう帰るよ。じゃあ。」

気づくと寮に着いていて、エディとはそのまま別れてしまった。無責任か…だったら、ちゃんと責任とってやる。

私は寮に帰り、闇属性について書かれた文献を読み漁る。闇属性が役に立たないなんて言われて黙ってられるか。強い者が役に立たないはずがないだろうに。

ブリュスター家は治癒者の家系。でも、治癒魔法がなくたって、誰かの病気や、怪我を治すことはできるんだ。例えば、前世の医療のように。

そこまで考えてふと閃く。やってみる価値は十分じゃないか。

3日後、私は魔法学室でエディを待つ。目の下にはクマがあるけど気にしない。

「あ、ヴィオラ、来てたんだ。」

「エディ!私達が治療で役に立つ方法を見つけたの!」

「だから!…それはもういいよ。」
諦めたように怒るエディに私は瓶を見せつける。

「なに、それ?」

「貴方、闇属性の魔法で毒を作り出せるって言ってたでしょう?」

「そうだけど?これも毒?」
人を傷つける道具として使われる毒。恐れられ嫌われる能力だと彼は言った。でも、それは知識のなさが創り出した嘘だ。

「それは、私が作った毒を利用した薬よ。」
毒は使い方次第で薬になる。そして、誰かの命を救うのだ。

「私達、闇属性って毒みたいなものだと思わない?」

「毒が恐ろしいのはその正しい使い方を知らないからよ。私達の力だって、使い方次第で誰かを救うわ。」

「ヴィオラ…」

どうだ、エディ。三徹で考え上げた結果は!文句は言わさんぞ!

「ふふっ、ありがとう。君って本当、変わってるよね。」

最後の一言は余計だけれど、エディの笑顔は満足のいくものだった。

「研究が上手くいけば、父さんにも話してみるよ。」

「エディは知恵者だから、きっとそこらの治癒魔法より良い薬を生み出せるわね!」

ありがとう。前世の知識。めっちゃ簡単な消毒液しか作れなかったけど、エディが納得してくれて良かった。
きっと彼は良い、医者になれると思う。

今日はとても気持ちよく眠れそうだ。
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