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第1章

ストーカー、朝活する。

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学園生活の始まりにふさわしい清々しい朝。
初めての寮生活だけど、オプション付きすぎだろって感じだから何とかなりそう。

朝ご飯も豪華で毎日食べてたら痛風になりそうなくらいだ。今日はたっぷり頂いた。体力をつけねば。

そろそろ皆起きる頃か…少し明るくなってきたな。
私はもちろん、王族寮の前にいる。レオン様がいつ出てきても分かるように1時間前からスタンバってます。

あ、カーテンが開いた。この角度じゃ見えんな。
いや、でも、もうちょっとで…

「ちょっと、そこのお嬢さん?」

「見え、な、、ん?」

不覚にもいつの間にか背後に人がいた。しかも制服?この時間に?

「コホン。私に何か御用でしょうか?」
ちっ、邪魔された。あとちょっとで見えそうだったのに。

「用も何も、俺の帰る場所に美女がいると思って声をかけたんだけど」

うわぁ、ものすごく頭が軽そう。そしてチャラそう。
絶対この人自分がイケメンだってわかってるタイプだ。
あと、帰る場所…って?

「まさか、あのクロンキストのご令嬢だったなんてね」

しかも身バレしてるだと!?

「どこかでお会いしたことがありましたか?」

「いいや、でも将来の親族になるかもしれない令嬢のことを知らないわけにはいかないさ」

今、このチャラ男、親族って言ったな。やっぱり王族?
だとしたら…

「殿下、ご挨拶が遅れ申し訳ございません。クロンキスト家のヴィオラにございます。」
 
このチャラ男、現王の弟君の嫡男とされるジーク様なのか!?

「いいよいいよ、堅苦しいのは。それより、君が何をしてたのか気になるなぁー。ね。」

前言撤回しよう。コイツ、頭が軽くてチャラいんじゃない。をしてるだけだ。
あの目の奥の鋭さは中々だせるもんじゃない。

「ふふっ、大好きな婚約者様に会いたくなって思わず来てしまいましたの。どうか内緒にしてくださいね。」

馬鹿なフリしてる方が楽に生きれるよね。わかる。
そうやって生き続けて、前世と合わせて40年程たってるんだ。見くびってもらっちゃ困る。ヘラヘラするのが得意なのは貴方だけじゃない。

ジーク様は少し驚いた顔をしてニヤリと笑った。

「へぇ、昨日初めて会ったと聞いているけど、随分とお熱いね。レオンの何処が君のお気に召したのかな?」
何が目的かってことだろうか。隠す気もない威嚇が伝わる。

「あら、そんなの全てですわ。」
ジーク様の威嚇を嘲笑うようにハッキリと答える。

権力を狙っていると思われているんだろう。王族が疑いを持つのは悪いことじゃない。だけど私にその質問をするのは愚でしかない。

強い視線をしっかりと交差させる。
「一目惚れのようだね。こんな美女に思われるのは羨ましいよ☆」

今のはイラッとしたな。まだ言うか。じゃぁ、私もここらで嫌味を一つ。

「私の婚約者様が貴方様に大事にされているなんて、私とーっても安心致しましたわ。」
今日一番の笑顔をくれてやる。

ピシッとジーク様の空気が冷たくなる。こめかみがピクピクしてるのを見て思わず吹き出しそうだった。この嫌味の意味が充分伝わっているのだろう。

たぶん私達は似た者同士なんだということはわかる。まぁ、仲良くできるかと聞かれると話は別だが。

私は自分に似ているタイプが一番嫌いだから。

「殿下…お時間は大丈夫ですの?急がないと遅れますわ。」
ここに来た目的まで邪魔されてたまるか。ジーク様には用なんてない。

「ジークでいいさ、僕もヴィオラと呼ぶよ。よろしくね。それじゃ、失礼するよレディ。」
どこまでも嫌味なやつだ。これじゃ断われない。
ここまでキャラ濃いのになんでこの人原作出てないんだ?

やっぱりムカついたのでもう一つ。
「ジーク様、これを」
私はハンカチを取り出して渡す。

「これは?」

昨夜は随分とお楽しみだったみたいですね。
「虫刺されが酷いようですので。良ければお使いになってくださいね☆」

「は?」
今気づいたのか、首筋の跡に小さく舌打ちをした。

「では、ごきげんよう。」
お盛んな時期なんでしょう。どうぞ楽しんで。

私とレオン様の邪魔はさせませんわよ。おほほ。
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