大人になれなかった君とぼく

赤鈴

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「翔太!早く起きないと学校遅刻するわよ。お母さん知らないからね!」

翔太くんは、お母さんのでかい声で目が覚めました。カーテンから太陽の眩しい光が射し込み、スズメが外で「チュンチュン」とさわやかに鳴いています。

眠そうにベッドから起き上がると黒い制服に着替えて通学カバンを持ち、お母さんと、お父さんのいる一階へと大きな口を開けてアクビをしながら下りていきました。

 リビングに入ると、お父さんは椅子に座って新聞を広げて読んでいました。その前のテーブルの上には白いカップに注がれたホットコーヒーが湯気を立てています。お母さんも台所で朝食の支度に朝から大忙しです。

「おはよ~」

翔太くんがまだ半分寝ているような顔でそう言うと、お母さんと、お父さんも翔太くんの方を見て「おはよう」と返してくれました。テーブルの上に朝食が次々と並べられます。

「あんた、また昨日夜更かししてたでしょ。早く寝なさいって何回言えば分かるの!?」

翔太くんはアクビで返事をし、まるで聞いてません。

「ったく……。いうこと聞かないんだから、この子は。あなたからも何か言ってやってくださいよ」

そう言われた、お父さんは新聞に夢中で「うん」という聞いているのか、いないのか分からないような返事しかしません。視線も新聞に向けたままです。お母さんの口から深い溜め息がひとつ漏れます。

「そういえば、あんた今日日直だって言ってなかった?そんなゆっくりしてて大丈夫なの?」

「あっ!!忘れてた!」

お母さんのその言葉で思い出した翔太くんは並べられた朝食を急いで食べ終えると、通学カバンを持って、慌てた様子で玄関へと走りました。学校へ行けば仲の良い友達が待っています。その後をお弁当を持って、お母さんが追いかけました。

「お弁当も忘れてるわよ!」

お母さんが玄関で翔太くんにお弁当を手渡すと、一階の寝室から一匹の黒い猫が眠そうにアクビをしながらトコトコと玄関にやってきました。

翔太くんがその場で屈んで喉のあたりを数回なでると、黒い猫は実に幸せそうな顔で「ゴロゴロ」と鳴らしました。

「クロ、いってきます」

その言葉に返事をするように、クロは「にゃあー!」と元気よく一声鳴きました。そして、今日も翔太くんは元気よく学校に行きました。

これからも二人はずっと一緒で、ずっと家族です。

それだけで二人は幸せでした。それだけで二人は毎日が楽しくて仕方ありませんでした。

暖かい日には一緒にひなたぼっこをしました。

寒い日には一緒にこたつに入って暖まりました。

嬉しいときには一緒に喜びました。

翔太くんがつらかったり、悲しいときには、そのそばには必ずクロがいました。

こうして二人はなんでもない毎日を家族として一緒に、いつまでも仲良く幸せに過ごしました。
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