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72.赤髪の女を探せ
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「すげーな。いろんな嫌がらせをしたことになってんな、おたくら」
聞き込みを始めて、オリビアへの嫌がらせの内容がいろいろ出てきた。
・泥水をかける
・足を引っかけて転ばす
・物置に閉じ込める
・トイレに閉じ込める
・ノートや教科書を捨てる
・ノートや教科書に落書きする
・配布物を渡さない
・移動教室の場所を教えない などなど
「箇条書きにしてみると、なかなかえげつねぇ~」
メモ書きした内容に目を通しながら、柳がヒューっと口笛を吹いた。
「信じられませんわ・・・。何を根拠に・・・」
一緒にメモを覗いているダリヤはギリッと悔しそうに唇を噛んだ。
「日頃の行いってヤツが響いてるぜ」
「はい・・・返す言葉もございません」
柳にそう指摘され、ダリアはシュンっと肩を落とした。
「それにしたって、見事に全部やってないですわ。一つくらいあればまだしも・・・」
反省しつつも悔しさが口をつく。
「このほとんどに赤髪の女が絡んでるっつーんだもんな~。学院の中で赤髪=オフィーリアっていう概念があるんだったら、そりゃ、オフィーリアが疑われるに決まってるわな。んで、ついでに取巻きのあんたらもさ」
「この女性を見つけないとですわね。わたくしの知っている人の中では思い当たる人はいないけれど・・・」
「この女もオリビアに恨みがあったのかな?」
「無かったらこんな酷いことなさらないでしょう?」
「そりゃ、そうか・・・。でもさ・・・」
柳は腑に落ちない様子だ。メモをじっと見ながら眉間に皺を寄せている。
「いや、考え過ぎか・・・」
そう呟くと、メモをポケットにしまった。
「そうだな、赤髪女を探そうぜ。卒業式まであと二週間切ってるよな。それまでには見つけたいんだけど」
「もちろんですわ! 汚名を着せられたまま卒業するわけには参りませんもの!」
しかし、真犯人―――と思われる―――赤髪女を探すとは言っても、この学院は想像以上に生徒が多い。そう簡単にはいかなそうだ。
「時間がないな。信用できそうな奴ら、集められるか?」
「はい。やってみますわ」
☆彡
椿の方は、明日の「お友達とのお出かけ」でキャパシティはいっぱいいっぱいだった。
「オフィーリア様、いよいよ明日、クラリス様たちと街へお出かけなのですが・・・。一体、皆さん何処で何をするのでしょう?」
不安気にオフィーリアに尋ねる。
「きっと、お買い物ですわ。楽しいですわよね、お買い物。行きつけのブティックがありますの。そこには絶対行くと思いますわ」
「ブブブ、ブティック・・・?」
「あとはわたくしたちのお気に入りのカフェがありますのよ。そこでスイーツを頂くことになると思いますわ。きっと新作が出てるはず! とても可愛らしくて素敵なカフェですのよ。是非楽しんでいらして!」
「す・・・素敵なカフェ・・・」
「椿様も気に入ると思いますわ。だって、椿様は甘いものがお好きでしょう? お饅頭とかどら焼きとか大福とか」
「まあ・・・甘いものは大好きなんですけど・・・山田は和菓子派で・・・」
ブティックにカフェ・・・。
行きつけは本屋でお茶をするなら甘味処の椿にはかなりハードルが高そうだ。
「最中とか羊羹とか・・・あとはきんつばとか鹿の子とか・・・。わたくしはどら焼きが気に入りましたわ。パンケーキと餡子の組み合わせが最高ですわね!」
「・・・」
今日もご機嫌のオフィーリアは椿の不安顔には気が付いていないようだ。
「そうそう、椿様。わたくしも明日はお出かけしますのよ! セオドア様と!」
「え?! 本当ですか?」
「ええ! お出かけと言っても、広めの公園で自転車の練習なのですけれどね」
「自・・・転車・・・!」
「今日の練習で少しコツを掴めた気がしましたの。だから、間を空けずに練習した方がいいってセオドア様が誘ってくださって!」
「じ、自転車・・・」
「絶対明日には乗れるようになってみせますわ!」
「あ、あの・・・、その自転車ですが・・・」
「それにしても椿様! 明日、わたくしは何を着て行けばいいの? 制服以外で椿様が持っているお洋服と言えば、みすぼらしいズボンしか見当たらないのですけど!」
「え? えっと・・・、確かにズボンばっかりですね。でも、そんなみすぼらしくは・・・」
「殿方の前にズボン姿なんて有り得ませんわよ!」
「す、すみませんっ! でも、山田はズボン派でして」
「女性としての自覚はありますの?! 女性なのにズボンって!」
「山田の世界では、そう言う発言はNG・・・」
「スカートだからってとても丈を短くしている女性はもっとどうかと思いますけれど! それにしても・・・」
「でも、自転車の練習でしたらスカートよりズボンの方がずっといいかと・・・。転んでも膝が守れますし・・・、スカートが捲れる心配も無いし・・・」
「確かにそうですわね。練習には調度いいかもしれないわ! なら仕方がないわ」
「あ・・・、で、でも・・・、その、自転車は・・・、えっと・・・」
「椿様。明日はわたくしのお友達を楽しんでらしてね! わたくしも頑張りますわ!!」
(柳君、ごめんなさい! とても止められません・・・)
楽しそうに笑うオフィーリアを前に水を差すようなことは言えない。
柳の愛車ヘラクレス号が傷付かないことを祈るのみ。椿は心の中で柳に謝った。
聞き込みを始めて、オリビアへの嫌がらせの内容がいろいろ出てきた。
・泥水をかける
・足を引っかけて転ばす
・物置に閉じ込める
・トイレに閉じ込める
・ノートや教科書を捨てる
・ノートや教科書に落書きする
・配布物を渡さない
・移動教室の場所を教えない などなど
「箇条書きにしてみると、なかなかえげつねぇ~」
メモ書きした内容に目を通しながら、柳がヒューっと口笛を吹いた。
「信じられませんわ・・・。何を根拠に・・・」
一緒にメモを覗いているダリヤはギリッと悔しそうに唇を噛んだ。
「日頃の行いってヤツが響いてるぜ」
「はい・・・返す言葉もございません」
柳にそう指摘され、ダリアはシュンっと肩を落とした。
「それにしたって、見事に全部やってないですわ。一つくらいあればまだしも・・・」
反省しつつも悔しさが口をつく。
「このほとんどに赤髪の女が絡んでるっつーんだもんな~。学院の中で赤髪=オフィーリアっていう概念があるんだったら、そりゃ、オフィーリアが疑われるに決まってるわな。んで、ついでに取巻きのあんたらもさ」
「この女性を見つけないとですわね。わたくしの知っている人の中では思い当たる人はいないけれど・・・」
「この女もオリビアに恨みがあったのかな?」
「無かったらこんな酷いことなさらないでしょう?」
「そりゃ、そうか・・・。でもさ・・・」
柳は腑に落ちない様子だ。メモをじっと見ながら眉間に皺を寄せている。
「いや、考え過ぎか・・・」
そう呟くと、メモをポケットにしまった。
「そうだな、赤髪女を探そうぜ。卒業式まであと二週間切ってるよな。それまでには見つけたいんだけど」
「もちろんですわ! 汚名を着せられたまま卒業するわけには参りませんもの!」
しかし、真犯人―――と思われる―――赤髪女を探すとは言っても、この学院は想像以上に生徒が多い。そう簡単にはいかなそうだ。
「時間がないな。信用できそうな奴ら、集められるか?」
「はい。やってみますわ」
☆彡
椿の方は、明日の「お友達とのお出かけ」でキャパシティはいっぱいいっぱいだった。
「オフィーリア様、いよいよ明日、クラリス様たちと街へお出かけなのですが・・・。一体、皆さん何処で何をするのでしょう?」
不安気にオフィーリアに尋ねる。
「きっと、お買い物ですわ。楽しいですわよね、お買い物。行きつけのブティックがありますの。そこには絶対行くと思いますわ」
「ブブブ、ブティック・・・?」
「あとはわたくしたちのお気に入りのカフェがありますのよ。そこでスイーツを頂くことになると思いますわ。きっと新作が出てるはず! とても可愛らしくて素敵なカフェですのよ。是非楽しんでいらして!」
「す・・・素敵なカフェ・・・」
「椿様も気に入ると思いますわ。だって、椿様は甘いものがお好きでしょう? お饅頭とかどら焼きとか大福とか」
「まあ・・・甘いものは大好きなんですけど・・・山田は和菓子派で・・・」
ブティックにカフェ・・・。
行きつけは本屋でお茶をするなら甘味処の椿にはかなりハードルが高そうだ。
「最中とか羊羹とか・・・あとはきんつばとか鹿の子とか・・・。わたくしはどら焼きが気に入りましたわ。パンケーキと餡子の組み合わせが最高ですわね!」
「・・・」
今日もご機嫌のオフィーリアは椿の不安顔には気が付いていないようだ。
「そうそう、椿様。わたくしも明日はお出かけしますのよ! セオドア様と!」
「え?! 本当ですか?」
「ええ! お出かけと言っても、広めの公園で自転車の練習なのですけれどね」
「自・・・転車・・・!」
「今日の練習で少しコツを掴めた気がしましたの。だから、間を空けずに練習した方がいいってセオドア様が誘ってくださって!」
「じ、自転車・・・」
「絶対明日には乗れるようになってみせますわ!」
「あ、あの・・・、その自転車ですが・・・」
「それにしても椿様! 明日、わたくしは何を着て行けばいいの? 制服以外で椿様が持っているお洋服と言えば、みすぼらしいズボンしか見当たらないのですけど!」
「え? えっと・・・、確かにズボンばっかりですね。でも、そんなみすぼらしくは・・・」
「殿方の前にズボン姿なんて有り得ませんわよ!」
「す、すみませんっ! でも、山田はズボン派でして」
「女性としての自覚はありますの?! 女性なのにズボンって!」
「山田の世界では、そう言う発言はNG・・・」
「スカートだからってとても丈を短くしている女性はもっとどうかと思いますけれど! それにしても・・・」
「でも、自転車の練習でしたらスカートよりズボンの方がずっといいかと・・・。転んでも膝が守れますし・・・、スカートが捲れる心配も無いし・・・」
「確かにそうですわね。練習には調度いいかもしれないわ! なら仕方がないわ」
「あ・・・、で、でも・・・、その、自転車は・・・、えっと・・・」
「椿様。明日はわたくしのお友達を楽しんでらしてね! わたくしも頑張りますわ!!」
(柳君、ごめんなさい! とても止められません・・・)
楽しそうに笑うオフィーリアを前に水を差すようなことは言えない。
柳の愛車ヘラクレス号が傷付かないことを祈るのみ。椿は心の中で柳に謝った。
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