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30.私ではありません!
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「放せよ、うぜーって」
体をユサユサと揺すられながら柳は冷めた目でジャックを見つめた。
「騙されるな! セオドア! わっ! 冷てっ!!」
またまた股間に冷たさを感じ、ジャックは柳を手放し後ろに飛び退いた。
「なな、何するんだ!!」
「だってー、放せって言ったのに放さねーんだもん。ジャック君ったら」
柳はお道化たように肩を竦めて見せた。
「な、な、な・・・」
ジャックは怒り過ぎてプルプルと震えるだけで言葉が出ない。股間を抑えながら柳を睨みつけるのに精一杯のようだ。
「それとさ、人の婚約者を嘘つき呼ばわりすんの止めてくんねーかな? マジで気分悪いんだけど」
柳はまだ股間を押さえ中腰になっているジャックを蔑むように見下ろした。
「セ、セオドア・・・、何で、どうして・・・、どうしてその女を庇うんだよ。オフィーリアを婚約者だなんて認めたくないって言っていたくせに・・・」
「えー、俺、そんなこと言ってたんだ? 覚えてねーや、記憶ねーから」
「記憶が無いからって別人過ぎるぞ、お前!」
「そうかもね。記憶が無くなって別人格が出てきたのかも」
「ふ、ふざけるな!」
ジャックは立ち上がり、また柳の胸倉を掴もうと手を伸ばして向かって来た。
「うぜーから、近寄んな!」
柳はジャックに向かってじょうろの水を撒いた。
それに悲鳴をあげて、ジャックは後ろに飛び退いた。
「いい加減にすんのはてめーの方だ。しつけーんだよ、さっきから! 俺、昨日あんまり寝てなくてイライラしてんだ。これ以上苛つかせるな!」
柳はそう怒鳴ると、ジャックに向かってさらに水をかけようとした。
今まで固まってオロオロして椿だが、柳のこの追い打ちをかけるような行動に焦りを感じ咄嗟に体が動いた。
「だ、ダメです! やな、セオドア様!」
そう叫ぶと、自分のじょうろを足元に置き、柳の腕を取った。
「もう止めましょう! 止めてください! これ以上は暴力です。ジャック様が風邪を引いてしまいます!」
「いいんじゃね? こんな奴、風邪ひいたって。オフィーリアをコケにしやがって」
柳は椿に腕を取られたまま、ジャックを睨みつけた。
「いいえ! いけませんよ! セオドア様! 私なら平気ですから。あ、あの、ジャック様、大丈夫ですか?」
椿は柳から手を放すと、ポケットからハンカチを取出し、ジャックに差し出した。
正直ハンカチなんか何の役にも立たないが、せめて濡れた顔くらいは拭いてもらおうと思ったのだ。
しかし、ジャックは椿の手を払い除けた。
「セオドアの前だからって、いい人ぶるな! 性悪女め!」
「っ!」
ギロリと睨みつけられ、椿はまた恐怖で固まってしまった。
「んだとぉ! ゴラァ!」
椿への態度に腹を立てた柳は、手に持っていたじょうろを地面に放り投げたと思ったら、ジャックに飛び掛かり、胸倉を掴んだ。
(や、柳君!!)
ギリギリとジャックの首を締め上げる柳の腕に椿は飛び付いた。
「ダメですよ! やな・・・セオドア様! 放してください!」
「チッ・・・」
椿に懇願され、柳は舌打ちすると乱暴に手を放した。
解放されたジャックは喉元を摩りながら柳と椿を睨みつけた。
「セオドア! 騙されるな! お前の前だからいい人を演じてるんだ! この女はオリビアを虐めたんだぞ! 人を虐めて楽しむような女なんだ!」
「違います!!」
椿は大声で叫んだ。自分でも信じられないほど大きな声だった。
「虐めなんてしていません! そんなことしていません! していないんです!」
☆彡
いきなり大きな声で反発して来た椿に、ジャックは目を丸くした。
「確かにオリビア様に対する態度が冷たかったり、意地悪なところはあったと思います。それはとても反省しています。でも、それ以外に故意に嫌がらせはしていません!」
「嘘を付くな!」
「本当です! オリビア様への嫌がらせは他の人が犯人です! 私ではありません!」
椿は拳を握ってジャックを見た。怒りに満ちたジャックの目をしっかりと捉えて訴えた。
「でも・・・」
椿はふっと目を伏せた。
「嫌がらせを受けているのを知っていて黙っていたのは事実です。それはやっぱり悪いことです・・・。助けなければいけなかったはずです。見て見ぬふりは同罪ですね・・・」
「他の奴らがやったことだと・・・?」
「はい。私ではありません。でも、誰かは知らないです」
「はっ! 白々しい! 適当なことを言うな! オリビアから君だって聞いている!」
「疑われても仕方がありません・・・。でも、誤解なんです」
「誰が信じるか、そんなこと!」
「俺は信じますけど?」
柳の言葉にジャックは目を見開いた。
「セオドア・・・。お前・・・正気か? オリビアが嘘ついているとでも言うのか!?」
「案外そうかもしれねーぜ?」
柳は肩を竦めた。
「なんだとっ!」
「だってよ、ここ最近、俺はずっとオフィーリアといただろ? その間、オフィーリアからオリビアの悪口なんて聞いたこと無いぜ? それなのに、てめーさっき何て言ったっけ? 『オリビアの事を悪く言っているそうじゃないか』って言ってたな。それって誰から聞いた?」
「!」
ハッとしたような顔をするジャックに、柳はニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべた。
「なあ、誰から聞いたんだよ?」
体をユサユサと揺すられながら柳は冷めた目でジャックを見つめた。
「騙されるな! セオドア! わっ! 冷てっ!!」
またまた股間に冷たさを感じ、ジャックは柳を手放し後ろに飛び退いた。
「なな、何するんだ!!」
「だってー、放せって言ったのに放さねーんだもん。ジャック君ったら」
柳はお道化たように肩を竦めて見せた。
「な、な、な・・・」
ジャックは怒り過ぎてプルプルと震えるだけで言葉が出ない。股間を抑えながら柳を睨みつけるのに精一杯のようだ。
「それとさ、人の婚約者を嘘つき呼ばわりすんの止めてくんねーかな? マジで気分悪いんだけど」
柳はまだ股間を押さえ中腰になっているジャックを蔑むように見下ろした。
「セ、セオドア・・・、何で、どうして・・・、どうしてその女を庇うんだよ。オフィーリアを婚約者だなんて認めたくないって言っていたくせに・・・」
「えー、俺、そんなこと言ってたんだ? 覚えてねーや、記憶ねーから」
「記憶が無いからって別人過ぎるぞ、お前!」
「そうかもね。記憶が無くなって別人格が出てきたのかも」
「ふ、ふざけるな!」
ジャックは立ち上がり、また柳の胸倉を掴もうと手を伸ばして向かって来た。
「うぜーから、近寄んな!」
柳はジャックに向かってじょうろの水を撒いた。
それに悲鳴をあげて、ジャックは後ろに飛び退いた。
「いい加減にすんのはてめーの方だ。しつけーんだよ、さっきから! 俺、昨日あんまり寝てなくてイライラしてんだ。これ以上苛つかせるな!」
柳はそう怒鳴ると、ジャックに向かってさらに水をかけようとした。
今まで固まってオロオロして椿だが、柳のこの追い打ちをかけるような行動に焦りを感じ咄嗟に体が動いた。
「だ、ダメです! やな、セオドア様!」
そう叫ぶと、自分のじょうろを足元に置き、柳の腕を取った。
「もう止めましょう! 止めてください! これ以上は暴力です。ジャック様が風邪を引いてしまいます!」
「いいんじゃね? こんな奴、風邪ひいたって。オフィーリアをコケにしやがって」
柳は椿に腕を取られたまま、ジャックを睨みつけた。
「いいえ! いけませんよ! セオドア様! 私なら平気ですから。あ、あの、ジャック様、大丈夫ですか?」
椿は柳から手を放すと、ポケットからハンカチを取出し、ジャックに差し出した。
正直ハンカチなんか何の役にも立たないが、せめて濡れた顔くらいは拭いてもらおうと思ったのだ。
しかし、ジャックは椿の手を払い除けた。
「セオドアの前だからって、いい人ぶるな! 性悪女め!」
「っ!」
ギロリと睨みつけられ、椿はまた恐怖で固まってしまった。
「んだとぉ! ゴラァ!」
椿への態度に腹を立てた柳は、手に持っていたじょうろを地面に放り投げたと思ったら、ジャックに飛び掛かり、胸倉を掴んだ。
(や、柳君!!)
ギリギリとジャックの首を締め上げる柳の腕に椿は飛び付いた。
「ダメですよ! やな・・・セオドア様! 放してください!」
「チッ・・・」
椿に懇願され、柳は舌打ちすると乱暴に手を放した。
解放されたジャックは喉元を摩りながら柳と椿を睨みつけた。
「セオドア! 騙されるな! お前の前だからいい人を演じてるんだ! この女はオリビアを虐めたんだぞ! 人を虐めて楽しむような女なんだ!」
「違います!!」
椿は大声で叫んだ。自分でも信じられないほど大きな声だった。
「虐めなんてしていません! そんなことしていません! していないんです!」
☆彡
いきなり大きな声で反発して来た椿に、ジャックは目を丸くした。
「確かにオリビア様に対する態度が冷たかったり、意地悪なところはあったと思います。それはとても反省しています。でも、それ以外に故意に嫌がらせはしていません!」
「嘘を付くな!」
「本当です! オリビア様への嫌がらせは他の人が犯人です! 私ではありません!」
椿は拳を握ってジャックを見た。怒りに満ちたジャックの目をしっかりと捉えて訴えた。
「でも・・・」
椿はふっと目を伏せた。
「嫌がらせを受けているのを知っていて黙っていたのは事実です。それはやっぱり悪いことです・・・。助けなければいけなかったはずです。見て見ぬふりは同罪ですね・・・」
「他の奴らがやったことだと・・・?」
「はい。私ではありません。でも、誰かは知らないです」
「はっ! 白々しい! 適当なことを言うな! オリビアから君だって聞いている!」
「疑われても仕方がありません・・・。でも、誤解なんです」
「誰が信じるか、そんなこと!」
「俺は信じますけど?」
柳の言葉にジャックは目を見開いた。
「セオドア・・・。お前・・・正気か? オリビアが嘘ついているとでも言うのか!?」
「案外そうかもしれねーぜ?」
柳は肩を竦めた。
「なんだとっ!」
「だってよ、ここ最近、俺はずっとオフィーリアといただろ? その間、オフィーリアからオリビアの悪口なんて聞いたこと無いぜ? それなのに、てめーさっき何て言ったっけ? 『オリビアの事を悪く言っているそうじゃないか』って言ってたな。それって誰から聞いた?」
「!」
ハッとしたような顔をするジャックに、柳はニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべた。
「なあ、誰から聞いたんだよ?」
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