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14.陽キャラの思考は分からない
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「や、柳君! 何で? ヒロインと話をしていたのでは?!」
「おう、したぜ。もう終わった」
終ったって、あんた!
柳は何か言いたげな椿を見ると肩を竦めた。
「まあ、まだオリビアって奴とはいろいろ話をしようと思ってるよ、一応な。でも、今は山田が困ってたみたいだから」
「へ?」
「だって、どう見たって山田ってコミュ障だもんな。あのお友達らしい三人と一緒にいられんのかよ?」
「いや・・・、その、まだちょっと無理が・・・情けないですが・・・」
「だろ? 俺だってまだ友達とつるむのはハードル高ーよ。いくら記憶喪失つってもさ」
「でも、慣れないと・・・」
「分かってるって。少しずつ慣れようぜ。それまではボロが出ないようにフォローし合わないとな」
ニカッと笑う柳。
(メンタル強いな、柳君。さすが陽キャ)
「ありがとうございます・・・」
柳の笑顔がどこか眩しい。
この強さ、見習おうと思う椿であった。
☆彡
結局、一週間、二人は出来る限り一緒に過ごした。
と言うより、柳が椿の傍にベッタリだったと言っていい。
時たま、ヒロインと話をしているようだが、すぐに椿のところに戻って来る。
これにより、学院のなかでは二つの説が持ち上がった。
一つ目。セオドアとオフィーリアは婚約者同士として上手くいっているという説
犬猿の仲だったが誤解が解けてお互い想い合うようになった。
二つ目。オフィーリアがオリビアを餌にセオドアを脅し、自分のもとに連れ戻したという説
オリビアが泣く泣くセオドアを諦めた。
断罪を願っている椿は後者の説を推している。
何よりも今までにオフィーリアがオリビアに嫌がらせしていたのは事実であって、それを無かったことにするのは如何なものか? それ相応の罰があってしかるべきでは?
「何もその罰を山田が受けることねーじゃん」
柳はシレっと言う。
「でも、ヒロインに対して結構なことをオフィーリアはしてまして・・・」
校舎裏の花壇の前で、二人はいつものように話していた。
椿はじょうろで花壇にチョロチョロと水をあげている。美化委員の椿は花壇があるとついつい世話をしたくなるのだ。
「ああ、聞いてる、オリビアから」
え? 本人から?
「わざわざ上流階級のお茶会に呼ばれて恥かかされたとか言ってたぜ。あいつ、男爵家だっけ? 食事のマナーがなってないとか笑われたとか、手作り菓子を作ったら、貴族令嬢が厨房など入るなんてはしたないってバカにされたとか」
「はい・・・」
「他にも移動授業の教室を違う場所を教えられたとか、提出物のプリントを自分だけ配られなかったとか・・・。ちょっとセコイし陰険だな」
「はい・・・」
「あとは教科書に落書きされたとか破られたとか。制服に泥水をぶっかけられたとか。ま、定番っちゃ定番だけど正直引くわな。ねーわ」
「はい・・・」
「でも、それって山田がやったわけじゃねーし」
「いやいや、山田はオフィーリアですし」
「ただなぁ・・・」
柳は両手を頭の後ろで組んで空を見上げた。
「ふつー、ヒロインってそういうの耐え忍ぶもんじゃね? それをあいつ、恨みったらしく訴えてくるんだよなぁ~。それにさ、あいつ他に友達いないのかよ? いつも一人で寂しいとか言って泣きついて、正直うぜーんだけど」
「オフィーリアに睨まれたくないからお友達になる女子がいないんですよ」
「でも、その割には男子の友達は結構いそうだぜ?」
「そこはヒロインなんで」
「んー・・・」
柳は首を捻る。
「それにしてもさ、婚約者に直に相手のことを悪く言うってあんま感心しねーよなぁ。いくら幼馴染で気心知れてるっつっても。それにほだされたセオドアってなんかチョロくね?」
「それもそうですね・・・。ヒロインってもっと性格が良かったと思うのですが・・・」
椿も一緒に首を捻る。
「虐めた側の謝罪は大切だと思うし、誠意を示すのは大事だけどな。でも、修道院へ行くほどじゃねーよ」
「いいえ、山田が行きたいんです」
「止めよーぜ、それ。修道院入ったら結婚できねーじゃん、俺達」
椿はじょうろをボトッと落とした。幸いほとんど水も入っていなかったのであまり問題ない。
「な、ななな、ま、まだそんなこと言って・・・」
「あはは、動揺し過ぎだって、山田! 面白れぇ~」
悪びれた様子もなくカラカラと楽しそうに笑う柳に椿は唖然とした。
(やっぱり、リア充で陽キャなる人種は私には理解できないや・・・)
一瞬でもドキーンと心臓が爆発しそうになった自分の頬を叩いてやりたい。
陽キャが陰キャ喪女を相手にするわけがないのだ。
今は誰も頼る人がいないから自分と仲良くしているだけなのだ。
最近ずっと一緒にいたから仲良くなったと思うのは烏滸がましい。
笑いながらじょうろを拾って手渡してくれる柳に、椿はどこか距離を感じてしまった。
ペコリとお辞儀してじょうろを受け取った。
「おう、したぜ。もう終わった」
終ったって、あんた!
柳は何か言いたげな椿を見ると肩を竦めた。
「まあ、まだオリビアって奴とはいろいろ話をしようと思ってるよ、一応な。でも、今は山田が困ってたみたいだから」
「へ?」
「だって、どう見たって山田ってコミュ障だもんな。あのお友達らしい三人と一緒にいられんのかよ?」
「いや・・・、その、まだちょっと無理が・・・情けないですが・・・」
「だろ? 俺だってまだ友達とつるむのはハードル高ーよ。いくら記憶喪失つってもさ」
「でも、慣れないと・・・」
「分かってるって。少しずつ慣れようぜ。それまではボロが出ないようにフォローし合わないとな」
ニカッと笑う柳。
(メンタル強いな、柳君。さすが陽キャ)
「ありがとうございます・・・」
柳の笑顔がどこか眩しい。
この強さ、見習おうと思う椿であった。
☆彡
結局、一週間、二人は出来る限り一緒に過ごした。
と言うより、柳が椿の傍にベッタリだったと言っていい。
時たま、ヒロインと話をしているようだが、すぐに椿のところに戻って来る。
これにより、学院のなかでは二つの説が持ち上がった。
一つ目。セオドアとオフィーリアは婚約者同士として上手くいっているという説
犬猿の仲だったが誤解が解けてお互い想い合うようになった。
二つ目。オフィーリアがオリビアを餌にセオドアを脅し、自分のもとに連れ戻したという説
オリビアが泣く泣くセオドアを諦めた。
断罪を願っている椿は後者の説を推している。
何よりも今までにオフィーリアがオリビアに嫌がらせしていたのは事実であって、それを無かったことにするのは如何なものか? それ相応の罰があってしかるべきでは?
「何もその罰を山田が受けることねーじゃん」
柳はシレっと言う。
「でも、ヒロインに対して結構なことをオフィーリアはしてまして・・・」
校舎裏の花壇の前で、二人はいつものように話していた。
椿はじょうろで花壇にチョロチョロと水をあげている。美化委員の椿は花壇があるとついつい世話をしたくなるのだ。
「ああ、聞いてる、オリビアから」
え? 本人から?
「わざわざ上流階級のお茶会に呼ばれて恥かかされたとか言ってたぜ。あいつ、男爵家だっけ? 食事のマナーがなってないとか笑われたとか、手作り菓子を作ったら、貴族令嬢が厨房など入るなんてはしたないってバカにされたとか」
「はい・・・」
「他にも移動授業の教室を違う場所を教えられたとか、提出物のプリントを自分だけ配られなかったとか・・・。ちょっとセコイし陰険だな」
「はい・・・」
「あとは教科書に落書きされたとか破られたとか。制服に泥水をぶっかけられたとか。ま、定番っちゃ定番だけど正直引くわな。ねーわ」
「はい・・・」
「でも、それって山田がやったわけじゃねーし」
「いやいや、山田はオフィーリアですし」
「ただなぁ・・・」
柳は両手を頭の後ろで組んで空を見上げた。
「ふつー、ヒロインってそういうの耐え忍ぶもんじゃね? それをあいつ、恨みったらしく訴えてくるんだよなぁ~。それにさ、あいつ他に友達いないのかよ? いつも一人で寂しいとか言って泣きついて、正直うぜーんだけど」
「オフィーリアに睨まれたくないからお友達になる女子がいないんですよ」
「でも、その割には男子の友達は結構いそうだぜ?」
「そこはヒロインなんで」
「んー・・・」
柳は首を捻る。
「それにしてもさ、婚約者に直に相手のことを悪く言うってあんま感心しねーよなぁ。いくら幼馴染で気心知れてるっつっても。それにほだされたセオドアってなんかチョロくね?」
「それもそうですね・・・。ヒロインってもっと性格が良かったと思うのですが・・・」
椿も一緒に首を捻る。
「虐めた側の謝罪は大切だと思うし、誠意を示すのは大事だけどな。でも、修道院へ行くほどじゃねーよ」
「いいえ、山田が行きたいんです」
「止めよーぜ、それ。修道院入ったら結婚できねーじゃん、俺達」
椿はじょうろをボトッと落とした。幸いほとんど水も入っていなかったのであまり問題ない。
「な、ななな、ま、まだそんなこと言って・・・」
「あはは、動揺し過ぎだって、山田! 面白れぇ~」
悪びれた様子もなくカラカラと楽しそうに笑う柳に椿は唖然とした。
(やっぱり、リア充で陽キャなる人種は私には理解できないや・・・)
一瞬でもドキーンと心臓が爆発しそうになった自分の頬を叩いてやりたい。
陽キャが陰キャ喪女を相手にするわけがないのだ。
今は誰も頼る人がいないから自分と仲良くしているだけなのだ。
最近ずっと一緒にいたから仲良くなったと思うのは烏滸がましい。
笑いながらじょうろを拾って手渡してくれる柳に、椿はどこか距離を感じてしまった。
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