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8.二人だけの秘密
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自分の世界から戻ってきたのを見計らって、僕はクラウディアに話しかけた。
「ねえ、クラウディア嬢。君の予言・・・前世の話は他人がいるところで話してはいけないよ。特に『婚約破棄』なんていうワードは口にしちゃいけない。手紙でもそう伝えたよね? もしかして、もう誰かに話してしまった?」
「もちろん、誰にも話していませんわ! そうでしたわね。さっきは軽率でした。ごめんなさい」
彼女はブンブン首を振って否定したかと思うと、ちょこんと可愛らしく頭を下げた。
「分かっているならいいよ。いい? この話は誰にも話してはダメだよ」
「・・・はい。そうですわね、話したところで誰も信じてくれないですもの。カイル様だって・・・」
彼女は少し拗ねたようにちょっと横を向いた。
あ、イジケモードに入っちゃった。
「うん。だって、あまりにも現実離れしているからね」
僕がわざと追い打ちをかけるから、彼女はさらにイジケて、ちょっと口を尖らせた。
「確かに信じてはいないけど、前世なんて特別な話だからね」
僕はそう言いながら、ポンポンと彼女の頭を撫でると、彼女はピョンと飛び跳ねた。
恥ずかしそうに僕に振り向いたところを、僕は覗き込むように顔を近づけた。
「だからね、これは二人だけの秘密だ」
そう言って僕は自分の唇に人差し指を当てた。
「二人だけの・・・秘密・・・」
「そう二人だけの」
僕がにっこり笑うと、彼女の顔はぱぁっと輝いた。
「二人だけの秘密・・・! 二人だけ・・・なんて甘美な・・・。わかりましたわ! 二人だけの秘密ですわ!」
クラウディアは両手を顔の前に組んで、コクコクと可愛らしく頷いた。
ごめんね、クラウディア。実はジョセフも知っているんだけどね。
まあ、あいつはカウントしないっていうことで。
★
王宮に着くと早速パーティー会場の大広間に向かった。
心なしかクラウディアは緊張しているようだ。
歩き方がカチンコチンとぎこちない。
「どうしたの? クラウディア嬢。緊張してるの?」
「ええ・・・。だって、私、王太子殿下とお会いするのは社交界デビュー以来ですから・・・」
「ああ、そうだったね」
僕らはこうしたパーティーにはあまり参加しない。既に婚約者を持つ身にとって、このような将来の伴侶探しのような集いは不要という僕の持論からだ。
次期公爵家当主夫人の座は非常に魅力的なようで、婚約者がいようともお構いなく自分の娘を売り込んでくる親は多いし、本人自らアピールしてくる者もいる。それをあしらうのがなんせ面倒なのだ。
僕が参加しないとなれば僕の婚約者も当然不参加。気の毒だけど。
だが、王太子殿下主催ともなれば断るわけにもいかない。僕は王太子の側近になるので彼を守るためにも出席は義務だ。
王太子にも目を配らせていなければないため、クラウディアの傍にベッタリと貼り付いていられないので、本来なら一人で参加したいくらいだ。しかし、今回はビンセントの奴に直々クラウディアを連れてくるように仰せつかってしまった。
今まで会わせてなかったからね、適当に誤魔化して。親友の婚約者とは是非仲良くなりたいと前々から言われてたけど。
社交界デビューは終わらせているとはいえ、場数をこなしていない彼女はこうした集いは不慣れだ。
ただでさえ慣れていないところに持ってきて、王太子殿下と直々にお言葉を交わすのだ。それは緊張するだろう。
彼女の緊張を解そうと、僕の腕に手を添えている彼女の手を反対の手で包んだ。
「僕が傍にいるから、大丈・・・」
「しかも、前世の記憶が戻ってからお会いするのは初めてですから・・・。あのお方もメインキャラのお一人ですもの。緊張しない方が無理ですわ」
夫・・・って、何それ? メインキャラって・・・。
「どなたにも分け隔てなく接して下さるお優しい方で、天使のように美しい心をお持ちの殿下は読者からとても人気があって、私も大好きなキャラでしたわ」
・・・何言ってるの? クラウディア・・・。
「お姿だって金髪碧眼の超美形! まさしく天使!!」
少しうっとりした表情をしている。
どうする? 会わせるの止める? 回れ右して帰る? やっぱり今までビンセントに会わせていなくて正解だった!?
「ふふ、でも、私は前世でも現世でもカイル様が一推しですわ! おそらく来世でもカイル様が一番ですわ!」
そ、そう?
「私の中では、カイル様の右に出る人はこの世に存在しませんもの」
そう。ならいいか・・・。
でも、ビンセントとの謁見は数秒で終わらせよう。
それにしても、「大好き」という言葉は僕以外には使わないで欲しい。
珍しく動揺してしまった。もう少し精神を鍛錬しないといけないな。
「ねえ、クラウディア嬢。君の予言・・・前世の話は他人がいるところで話してはいけないよ。特に『婚約破棄』なんていうワードは口にしちゃいけない。手紙でもそう伝えたよね? もしかして、もう誰かに話してしまった?」
「もちろん、誰にも話していませんわ! そうでしたわね。さっきは軽率でした。ごめんなさい」
彼女はブンブン首を振って否定したかと思うと、ちょこんと可愛らしく頭を下げた。
「分かっているならいいよ。いい? この話は誰にも話してはダメだよ」
「・・・はい。そうですわね、話したところで誰も信じてくれないですもの。カイル様だって・・・」
彼女は少し拗ねたようにちょっと横を向いた。
あ、イジケモードに入っちゃった。
「うん。だって、あまりにも現実離れしているからね」
僕がわざと追い打ちをかけるから、彼女はさらにイジケて、ちょっと口を尖らせた。
「確かに信じてはいないけど、前世なんて特別な話だからね」
僕はそう言いながら、ポンポンと彼女の頭を撫でると、彼女はピョンと飛び跳ねた。
恥ずかしそうに僕に振り向いたところを、僕は覗き込むように顔を近づけた。
「だからね、これは二人だけの秘密だ」
そう言って僕は自分の唇に人差し指を当てた。
「二人だけの・・・秘密・・・」
「そう二人だけの」
僕がにっこり笑うと、彼女の顔はぱぁっと輝いた。
「二人だけの秘密・・・! 二人だけ・・・なんて甘美な・・・。わかりましたわ! 二人だけの秘密ですわ!」
クラウディアは両手を顔の前に組んで、コクコクと可愛らしく頷いた。
ごめんね、クラウディア。実はジョセフも知っているんだけどね。
まあ、あいつはカウントしないっていうことで。
★
王宮に着くと早速パーティー会場の大広間に向かった。
心なしかクラウディアは緊張しているようだ。
歩き方がカチンコチンとぎこちない。
「どうしたの? クラウディア嬢。緊張してるの?」
「ええ・・・。だって、私、王太子殿下とお会いするのは社交界デビュー以来ですから・・・」
「ああ、そうだったね」
僕らはこうしたパーティーにはあまり参加しない。既に婚約者を持つ身にとって、このような将来の伴侶探しのような集いは不要という僕の持論からだ。
次期公爵家当主夫人の座は非常に魅力的なようで、婚約者がいようともお構いなく自分の娘を売り込んでくる親は多いし、本人自らアピールしてくる者もいる。それをあしらうのがなんせ面倒なのだ。
僕が参加しないとなれば僕の婚約者も当然不参加。気の毒だけど。
だが、王太子殿下主催ともなれば断るわけにもいかない。僕は王太子の側近になるので彼を守るためにも出席は義務だ。
王太子にも目を配らせていなければないため、クラウディアの傍にベッタリと貼り付いていられないので、本来なら一人で参加したいくらいだ。しかし、今回はビンセントの奴に直々クラウディアを連れてくるように仰せつかってしまった。
今まで会わせてなかったからね、適当に誤魔化して。親友の婚約者とは是非仲良くなりたいと前々から言われてたけど。
社交界デビューは終わらせているとはいえ、場数をこなしていない彼女はこうした集いは不慣れだ。
ただでさえ慣れていないところに持ってきて、王太子殿下と直々にお言葉を交わすのだ。それは緊張するだろう。
彼女の緊張を解そうと、僕の腕に手を添えている彼女の手を反対の手で包んだ。
「僕が傍にいるから、大丈・・・」
「しかも、前世の記憶が戻ってからお会いするのは初めてですから・・・。あのお方もメインキャラのお一人ですもの。緊張しない方が無理ですわ」
夫・・・って、何それ? メインキャラって・・・。
「どなたにも分け隔てなく接して下さるお優しい方で、天使のように美しい心をお持ちの殿下は読者からとても人気があって、私も大好きなキャラでしたわ」
・・・何言ってるの? クラウディア・・・。
「お姿だって金髪碧眼の超美形! まさしく天使!!」
少しうっとりした表情をしている。
どうする? 会わせるの止める? 回れ右して帰る? やっぱり今までビンセントに会わせていなくて正解だった!?
「ふふ、でも、私は前世でも現世でもカイル様が一推しですわ! おそらく来世でもカイル様が一番ですわ!」
そ、そう?
「私の中では、カイル様の右に出る人はこの世に存在しませんもの」
そう。ならいいか・・・。
でも、ビンセントとの謁見は数秒で終わらせよう。
それにしても、「大好き」という言葉は僕以外には使わないで欲しい。
珍しく動揺してしまった。もう少し精神を鍛錬しないといけないな。
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