6 / 74
6.婚約解消方法模索中
しおりを挟む
クラウディアとの婚約解消。
実は、これはなかなかハードルが高い。
ましてや、伯爵家に非も無く、クラウディアに一切の汚点を残すことなく解消するには、公爵家側が泥を被るか、双方の家にとってよっぽどの利害の一致を模索しなければいけない。
地位から言えば、同じ泥を被っても公爵家ともなれば、伯爵家ほど影響はない。
なので、全面的に僕が悪者になって解消も申し出ることもやぶさかではないのだが、そこは腐っても公爵家。父は家名に傷が付くことを極端に嫌う。
特に王家を陰で支えている我が家は、表向きには立派で燦爛たる家でなければならないからだ。
裏の顔がどんなに後ろ暗くても。いや、むしろ後ろ暗いがゆえに。
金銭的な面から言えば、今のロイス伯爵家はかなりの資産家なのでさしたる心配はない。どちらかと言えば我ら公爵家の方に影響が出る。
先代までは伯爵家としてもさほど上位ではない上に、大した財力も無かったのだが、現当主のロイス伯爵がはした金で購入した鉱山が爆当たりし、一気に大金持ちになったのだ。
つまり、言い方は悪いが成金に近い。金に物を言わせるところがチラホラ見える。
それどころか、その財力で公爵家との縁組をもぎ取ったと言っても過言ではない。
僕が婚約解消を申し入れても、財力でもみ消そうと悪足掻きするだろう。
父にとっても伯爵家の財力は魅力的だ。決して手放したがらないはずだ。
なんせ裏稼業には金が掛かるから・・・。
それ以外にも難関はある。
僕と婚約解消した後は、クラウディアの新しい相手を探さなければならない。
身を切る思いで手放す僕の天使を誰に託すのか。
資産家のロイス伯爵家には恐らく婚約が白紙に戻された令嬢のもとに、傷心を癒そうと多くの男どもが群がるはずだ。
伯爵はクラウディアを溺愛してはいるものの、娘が絶世の美女ではないことは十分知っている。それこそ、彼女にはロイス家の財産しか取り柄が無いとすら思っているのだ。
どんなに伯爵家に非の無いようにしても、婚約解消は伯爵に大きな焦りと負い目を植え付けるだろう。そうなると彼は急ぎ過ぎて、爵位や名誉だけで彼女の嫁ぎ先を決め兼ねない。それは僕としては絶対に避けたい。
彼女の幸せの為に身を引くのだから、彼女は絶対に幸せになってもらわないといけない。
彼女の相手は、誠実で優しくて、身分も財力もある男。そしてなにより、己の身を挺して彼女を守れる男でないといけないのだ。
だから、その相手は僕が探すことにする。
来年、僕らが16歳を迎える年、クラウン王立学院に入学するわけだが、そこは貴族と騎士中心の学院だ。
全国各地から優秀な紳士淑女が集まってくる。そこで僕のお眼鏡にかなう男を数人見繕う予定だ。
そのためには、当然クラウディアにも学院に入学してもらわなければならない。
入学前に婚約解消をして、万が一クラウディアに汚点を付けてしまったら、傷物令嬢と噂が広がり入学自体危ぶまれる恐れもある。
なので、婚約解消は学院に入学後、数名の候補を見つけてからだ。
ここまではずっと前に考えていたことだ。
だが、クラウディアから聞かされた予言のせいで、少し計画が狂いそうだ。
彼女の予言では僕が想定していないヒロインが登場する。
そしてそのヒロインと僕は恋に落ちることになっている。
いや、想定してなかったわけではない。実はそれらしいシナリオも僕自身考えてはいた。一つの案として。
なので、クラウディアに言われた時には本当に驚いた。
適当な―――言い方が悪いな―――適度な、僕とそこそこ身の丈のあった令嬢と交際を始め、クラウディアと少しずつ距離を置く。
そんな僕に愛想を尽かして、クラウディアは他の男性―――僕が見繕った紳士―――と仲を深めていく・・・。
そうして結果、100%僕の浮気が原因で婚約解消するというシナリオだ。
まあ、この案は公爵家に泥を塗ることになるので、父の意向に背くことになるわけだが、手っ取り早い方法ではあると考えていたのは確かだ。
だが、クラウディアの予言だと、僕に愛想を尽かすどころか、ますます僕に執着してしまうと言うではないか。
その上、嫉妬のあまり、そのヒロインに嫌がらせまでしてしまうなんて!
嫉妬してくれるのは嬉しいが、嫌がらせなんてあり得ない。僕の天使にそんなことをさせるわけにはいかない。
まして、それで断罪って何? 僕って何様?
クラウディアを守るために、好きでもない女と付き合ったというのに、彼女を悪役令嬢に貶めて断罪、追放って・・・本末転倒過ぎる!
これだけはどうあっても避けなければならない。
来年そのヒロインに出会っても、そして、万が一恋に落ちたとしても、絶対にクラウディアだけは守らなければ!
実は、これはなかなかハードルが高い。
ましてや、伯爵家に非も無く、クラウディアに一切の汚点を残すことなく解消するには、公爵家側が泥を被るか、双方の家にとってよっぽどの利害の一致を模索しなければいけない。
地位から言えば、同じ泥を被っても公爵家ともなれば、伯爵家ほど影響はない。
なので、全面的に僕が悪者になって解消も申し出ることもやぶさかではないのだが、そこは腐っても公爵家。父は家名に傷が付くことを極端に嫌う。
特に王家を陰で支えている我が家は、表向きには立派で燦爛たる家でなければならないからだ。
裏の顔がどんなに後ろ暗くても。いや、むしろ後ろ暗いがゆえに。
金銭的な面から言えば、今のロイス伯爵家はかなりの資産家なのでさしたる心配はない。どちらかと言えば我ら公爵家の方に影響が出る。
先代までは伯爵家としてもさほど上位ではない上に、大した財力も無かったのだが、現当主のロイス伯爵がはした金で購入した鉱山が爆当たりし、一気に大金持ちになったのだ。
つまり、言い方は悪いが成金に近い。金に物を言わせるところがチラホラ見える。
それどころか、その財力で公爵家との縁組をもぎ取ったと言っても過言ではない。
僕が婚約解消を申し入れても、財力でもみ消そうと悪足掻きするだろう。
父にとっても伯爵家の財力は魅力的だ。決して手放したがらないはずだ。
なんせ裏稼業には金が掛かるから・・・。
それ以外にも難関はある。
僕と婚約解消した後は、クラウディアの新しい相手を探さなければならない。
身を切る思いで手放す僕の天使を誰に託すのか。
資産家のロイス伯爵家には恐らく婚約が白紙に戻された令嬢のもとに、傷心を癒そうと多くの男どもが群がるはずだ。
伯爵はクラウディアを溺愛してはいるものの、娘が絶世の美女ではないことは十分知っている。それこそ、彼女にはロイス家の財産しか取り柄が無いとすら思っているのだ。
どんなに伯爵家に非の無いようにしても、婚約解消は伯爵に大きな焦りと負い目を植え付けるだろう。そうなると彼は急ぎ過ぎて、爵位や名誉だけで彼女の嫁ぎ先を決め兼ねない。それは僕としては絶対に避けたい。
彼女の幸せの為に身を引くのだから、彼女は絶対に幸せになってもらわないといけない。
彼女の相手は、誠実で優しくて、身分も財力もある男。そしてなにより、己の身を挺して彼女を守れる男でないといけないのだ。
だから、その相手は僕が探すことにする。
来年、僕らが16歳を迎える年、クラウン王立学院に入学するわけだが、そこは貴族と騎士中心の学院だ。
全国各地から優秀な紳士淑女が集まってくる。そこで僕のお眼鏡にかなう男を数人見繕う予定だ。
そのためには、当然クラウディアにも学院に入学してもらわなければならない。
入学前に婚約解消をして、万が一クラウディアに汚点を付けてしまったら、傷物令嬢と噂が広がり入学自体危ぶまれる恐れもある。
なので、婚約解消は学院に入学後、数名の候補を見つけてからだ。
ここまではずっと前に考えていたことだ。
だが、クラウディアから聞かされた予言のせいで、少し計画が狂いそうだ。
彼女の予言では僕が想定していないヒロインが登場する。
そしてそのヒロインと僕は恋に落ちることになっている。
いや、想定してなかったわけではない。実はそれらしいシナリオも僕自身考えてはいた。一つの案として。
なので、クラウディアに言われた時には本当に驚いた。
適当な―――言い方が悪いな―――適度な、僕とそこそこ身の丈のあった令嬢と交際を始め、クラウディアと少しずつ距離を置く。
そんな僕に愛想を尽かして、クラウディアは他の男性―――僕が見繕った紳士―――と仲を深めていく・・・。
そうして結果、100%僕の浮気が原因で婚約解消するというシナリオだ。
まあ、この案は公爵家に泥を塗ることになるので、父の意向に背くことになるわけだが、手っ取り早い方法ではあると考えていたのは確かだ。
だが、クラウディアの予言だと、僕に愛想を尽かすどころか、ますます僕に執着してしまうと言うではないか。
その上、嫉妬のあまり、そのヒロインに嫌がらせまでしてしまうなんて!
嫉妬してくれるのは嬉しいが、嫌がらせなんてあり得ない。僕の天使にそんなことをさせるわけにはいかない。
まして、それで断罪って何? 僕って何様?
クラウディアを守るために、好きでもない女と付き合ったというのに、彼女を悪役令嬢に貶めて断罪、追放って・・・本末転倒過ぎる!
これだけはどうあっても避けなければならない。
来年そのヒロインに出会っても、そして、万が一恋に落ちたとしても、絶対にクラウディアだけは守らなければ!
0
お気に入りに追加
145
あなたにおすすめの小説
性悪という理由で婚約破棄された嫌われ者の令嬢~心の綺麗な者しか好かれない精霊と友達になる~
黒塔真実
恋愛
公爵令嬢カリーナは幼い頃から後妻と義妹によって悪者にされ孤独に育ってきた。15歳になり入学した王立学園でも、悪知恵の働く義妹とカリーナの婚約者でありながら義妹に洗脳されている第二王子の働きにより、学園中の嫌われ者になってしまう。しかも再会した初恋の第一王子にまで軽蔑されてしまい、さらに止めの一撃のように第二王子に「性悪」を理由に婚約破棄を宣言されて……!? 恋愛&悪が報いを受ける「ざまぁ」もの!! ※※※主人公は最終的にチート能力に目覚めます※※※アルファポリスオンリー※※※皆様の応援のおかげで第14回恋愛大賞で奨励賞を頂きました。ありがとうございます※※※
すみません、すっきりざまぁ終了したのでいったん完結します→※書籍化予定部分=【本編】を引き下げます。【番外編】追加予定→ルシアン視点追加→最新のディー視点の番外編は書籍化関連のページにて、アンケートに答えると読めます!!
殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね
さこの
恋愛
恋がしたい。
ウィルフレッド殿下が言った…
それではどうぞ、美しい恋をしてください。
婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました!
話の視点が回毎に変わることがあります。
緩い設定です。二十話程です。
本編+番外編の別視点
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
88回の前世で婚約破棄され続けて男性不信になった令嬢〜今世は絶対に婚約しないと誓ったが、なぜか周囲から溺愛されてしまう
冬月光輝
恋愛
ハウルメルク公爵家の令嬢、クリスティーナには88回分の人生の記憶がある。
前世の88回は全てが男に婚約破棄され、近しい人間に婚約者を掠め取られ、悲惨な最期を遂げていた。
彼女は88回の人生は全て自分磨きに費やしていた。美容から、勉学に運動、果てには剣術や魔術までを最高レベルにまで極めたりした。
それは全て無駄に終わり、クリスは悟った。
“男は必ず裏切る”それなら、いっそ絶対に婚約しないほうが幸せだと。
89回目の人生を婚約しないように努力した彼女は、前世の88回分の経験値が覚醒し、無駄にハイスペックになっていたおかげで、今更モテ期が到来して、周囲から溺愛されるのであった。しかし、男に懲りたクリスはただひたすら迷惑な顔をしていた。
転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
転生モブは分岐点に立つ〜悪役令嬢かヒロインか、それが問題だ!〜
みおな
恋愛
転生したら、乙女ゲームのモブ令嬢でした。って、どれだけラノベの世界なの?
だけど、ありがたいことに悪役令嬢でもヒロインでもなく、完全なモブ!!
これは離れたところから、乙女ゲームの展開を楽しもうと思っていたのに、どうして私が巻き込まれるの?
私ってモブですよね?
さて、選択です。悪役令嬢ルート?ヒロインルート?
【完結】異世界転生した先は断罪イベント五秒前!
春風悠里
恋愛
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら、まさかの悪役令嬢で断罪イベント直前!
さて、どうやって切り抜けようか?
(全6話で完結)
※一般的なざまぁではありません
※他サイト様にも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる