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12.ダンス
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「ローゼ様。私と一曲踊って頂けませんか?」
優雅なお辞儀と共に差し出された手。
私はクロードのその手をじっと見て固まってしまった。
どうしよう。どう答えよう。
彼は今日の主役だ。そんな彼の誘いを断るのは大変失礼なことだ。
しかし、時間的にどう考えても、彼はまだ誰とも踊っていないはず。ここで受けたら私がファーストダンスの相手になってしまうのではないか? 大切な彼の誕生パーティーという場で。
いやはや、そんなことはできない。彼は未婚で婚約者もいないのだ。そんな彼のファーストダンスが既婚者でいい訳がない。
ましてや、私は夫婦不仲説が流れているのだ。たった今聞いた情報だけど。
恐らく噂は八割方私に分が悪いものだろう。夫に相手にされていない女って。なんてったって、今までの夜会でアーサーと踊ったことないのだから。
そんな女が他の男と最初のダンスを踊ってごらんなさい。噂を肯定することになるわっ。
ああ、せめて夫であるアーサーと先に踊った後だったら・・・。
そんな絶対有り得ないことを考えてしまう。
私は何とか断ろうと口実を探すが、なかなかいい案が思い浮かばない。
もうこうなったら、単純に素直に断る?
「お、お誘いは大変嬉しいのですが・・・」
「では、どうぞお手を」
いやいやいや、最後まで話聞けや!
「ここにいたのか、ローゼ」
切羽詰まっている私の元に、一人の人物が大股で近寄ってきた。
絶対来ないであろうと思っていた人物の登場に、私は目を丸めた。
「ア、アーサー様・・・」
驚いている私を余所に、アーサーは隣に立つと私の腰を抱いた。
「っ!?」
その行為に今度は目玉が飛び出した。
こっちはそれほど驚いているのに、アーサーは澄ました顔をして私を見ている。
「見当たらないと思っていたら、今日の主役を独り占めにしていたんだな? あんまり独占していると他のご令嬢から恨まれてしまうぞ?」
優しく笑うと、今度はクロードに向き合った。
「君も主役がこんなところにいるなんてどうかと思うぞ。みんな君を祝いたくて待っているんだから」
そう言って大広間を親指で指した。
その先には美しい女性陣がソワソワしたようにこちらを伺っている。
うへぇ~、二人きりで話しているところをずっと見られてたのか? 変に誤解されていなければいいけど。
「貴女もそろそろクロードを解放してあげなさい、ローゼ。もう十分話しただろう?」
「はいっ! そうですわね、アーサー様! ごめんなさい、クロード様、私ったら長々とお引止めして! ホホホ!」
「ありがとう、クロード。妻の我儘に付き合ってもらって。では行こうか、ローゼ」
「はいっ、アーサー様! クロード様、失礼いたしますわ」
いつの間にか私が悪者になっていることが若干気になるが、ここはクロードから逃げることが先決だ。目を瞑ろう。
私はアーサーに腰を抱かれたまま踵を返し、大広間へ向かった。
「た、助かった・・・」
大広間に入った時、安堵から溜息と共に心の声が漏れてしまった。
その言葉が聞こえたのか、アーサーは私の腰に回している手を緩めた。
それに気が付き、私は彼から離れようとしたのだが・・・。
驚いたことに、アーサーは離れようとする私を引き寄せたのだ。
「?!」
ビックリして隣の彼を見上げた。だが、彼は私の方など見もせず、ただズンズンと歩を進めるだけだ。
何事かと声も出ず、彼に促されるまま歩いていると、気が付いたらホールの中央まで来ていた。
ここでやっとアーサーの手が離れたと思ったら、今度は私と向き合った。
「・・・一曲、私と踊って欲しい」
そう言ったかと思うと、私の返事など待たずに手を取った。
「え? え?」
私は驚き過ぎてそれしか声が出ない。
目を丸めて、口をパクパクさせている私を抱き寄せるようにして、アーサーはステップを踏み始めた。
あのアーサーが・・・。
私に指一本でも触れるのを嫌そうにしていたあのアーサーが・・・私と踊ってる! 私の手をしっかりと握り、体もしっかりと引き寄せて。他のカップルですらこんなに近くないのではと思うほど私に寄り添っている。
ちょっ、ちょっと! 一体何が起こってる!?
優雅なお辞儀と共に差し出された手。
私はクロードのその手をじっと見て固まってしまった。
どうしよう。どう答えよう。
彼は今日の主役だ。そんな彼の誘いを断るのは大変失礼なことだ。
しかし、時間的にどう考えても、彼はまだ誰とも踊っていないはず。ここで受けたら私がファーストダンスの相手になってしまうのではないか? 大切な彼の誕生パーティーという場で。
いやはや、そんなことはできない。彼は未婚で婚約者もいないのだ。そんな彼のファーストダンスが既婚者でいい訳がない。
ましてや、私は夫婦不仲説が流れているのだ。たった今聞いた情報だけど。
恐らく噂は八割方私に分が悪いものだろう。夫に相手にされていない女って。なんてったって、今までの夜会でアーサーと踊ったことないのだから。
そんな女が他の男と最初のダンスを踊ってごらんなさい。噂を肯定することになるわっ。
ああ、せめて夫であるアーサーと先に踊った後だったら・・・。
そんな絶対有り得ないことを考えてしまう。
私は何とか断ろうと口実を探すが、なかなかいい案が思い浮かばない。
もうこうなったら、単純に素直に断る?
「お、お誘いは大変嬉しいのですが・・・」
「では、どうぞお手を」
いやいやいや、最後まで話聞けや!
「ここにいたのか、ローゼ」
切羽詰まっている私の元に、一人の人物が大股で近寄ってきた。
絶対来ないであろうと思っていた人物の登場に、私は目を丸めた。
「ア、アーサー様・・・」
驚いている私を余所に、アーサーは隣に立つと私の腰を抱いた。
「っ!?」
その行為に今度は目玉が飛び出した。
こっちはそれほど驚いているのに、アーサーは澄ました顔をして私を見ている。
「見当たらないと思っていたら、今日の主役を独り占めにしていたんだな? あんまり独占していると他のご令嬢から恨まれてしまうぞ?」
優しく笑うと、今度はクロードに向き合った。
「君も主役がこんなところにいるなんてどうかと思うぞ。みんな君を祝いたくて待っているんだから」
そう言って大広間を親指で指した。
その先には美しい女性陣がソワソワしたようにこちらを伺っている。
うへぇ~、二人きりで話しているところをずっと見られてたのか? 変に誤解されていなければいいけど。
「貴女もそろそろクロードを解放してあげなさい、ローゼ。もう十分話しただろう?」
「はいっ! そうですわね、アーサー様! ごめんなさい、クロード様、私ったら長々とお引止めして! ホホホ!」
「ありがとう、クロード。妻の我儘に付き合ってもらって。では行こうか、ローゼ」
「はいっ、アーサー様! クロード様、失礼いたしますわ」
いつの間にか私が悪者になっていることが若干気になるが、ここはクロードから逃げることが先決だ。目を瞑ろう。
私はアーサーに腰を抱かれたまま踵を返し、大広間へ向かった。
「た、助かった・・・」
大広間に入った時、安堵から溜息と共に心の声が漏れてしまった。
その言葉が聞こえたのか、アーサーは私の腰に回している手を緩めた。
それに気が付き、私は彼から離れようとしたのだが・・・。
驚いたことに、アーサーは離れようとする私を引き寄せたのだ。
「?!」
ビックリして隣の彼を見上げた。だが、彼は私の方など見もせず、ただズンズンと歩を進めるだけだ。
何事かと声も出ず、彼に促されるまま歩いていると、気が付いたらホールの中央まで来ていた。
ここでやっとアーサーの手が離れたと思ったら、今度は私と向き合った。
「・・・一曲、私と踊って欲しい」
そう言ったかと思うと、私の返事など待たずに手を取った。
「え? え?」
私は驚き過ぎてそれしか声が出ない。
目を丸めて、口をパクパクさせている私を抱き寄せるようにして、アーサーはステップを踏み始めた。
あのアーサーが・・・。
私に指一本でも触れるのを嫌そうにしていたあのアーサーが・・・私と踊ってる! 私の手をしっかりと握り、体もしっかりと引き寄せて。他のカップルですらこんなに近くないのではと思うほど私に寄り添っている。
ちょっ、ちょっと! 一体何が起こってる!?
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