とある者達の短編集

ぴよ

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願い事

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〔小さい頃〕


成瀬 遼なるせ りょう

私の幼なじみ

そして、初恋の相手


『りょーくん、あーそーぼ!』


遼「あ、さっちゃん!

いーいーよ!」


家が隣同士の私たちは

こうやって、よくふたりで遊んだ


〔小学5年生の冬〕


先生「遼くん、みんなに一言お願いします」


遼「みんな、今までありがとう

また会ったら───────」


遼が何か言ってたけど、

私の耳には入ってこなかった

たったひとつだけ分かったこと

それは、もう遼に会えなくなるということ


遼がいなくなる前日の夜…


『遼、これ…』


そう言って、私は遼にミサンガを渡した

私とお揃いのミサンガ


遼「これ、咲紀さきが作ったのか?」


不思議そうに首を傾ける遼


『うん、お揃いで作ったの

良かったらつけてほしいなって…』


そう言うと遼は笑顔になり、


遼「ほんとにいいのか!?

俺、今、すっごい嬉しい!!」


私に素敵な言葉をくれた


『良かった…

あ、ミサンガってね、

つける時にお願い事をしてつけるの

そして、そのミサンガが切れるとね、

そのお願い事が叶うんだって』


実際に叶うのかは知らないけど…


遼「へぇー、そうなのか

だったら、俺の願い事は、

〈________〉

だな!」


遼はお願い事を声に出さずに、

ミサンガを左手首につけた


今考えると、

遼のお願い事って何だったんだろう?


そのあと、

私も遼と同じように左手首につけた


《また、遼と出会えますように》


そう、願いを込めて…


次の日の朝、遼を見送った


やっぱり、この思いを伝えればよかった


そう思いながら、

左手で胸をおさえた


〔6年後(高校2年生)の冬〕


私はあの日から、

遼を忘れることはなかった


ぷつん


『あ、切れた…』


あの時のミサンガが

切れてしまった

お願い事は…


《また、遼と出会えますように》


でも、今、遼はいない


やっぱり迷信だったんだ…

期待していた自分がいた

そのせいか、少し残念に思った


遼のミサンガはもう切れたのかな

それとも、切れる前に外しちゃったかな


今でもまだ、遼のことを考えてる自分がいた


〔遼がいなくなって10年目〕


あれからも、遼とは会えていない


もう会えないのかな


そう思いながら、

下を向いて歩いていた


どんっ


『あ、すみません!』


?「こちらこそ、すみません!」


そう言って、

お互いに顔を上げた


?「あっ!」


『え…?』


ぶつかってしまった男の人が

いきなり声を上げた


?「え、咲紀なのか?」


え…

もしかして…!


『遼?』


遼「やっぱり、咲紀だ!

まさか本当に会えるとは…!」


遼が今、目の前にいる


理解出来たのはそれだけ

でも、とっても嬉しかった

その日から昔と同じように

遼とよくいるようになった


遼「俺は咲紀のこと、

小さい頃からずっと好きだった

俺と付き合ってください」


『っはい!』


私達は付き合うことになった

まさか小さい頃から

両思いだったとは…

思ってもみなかった

遼は私と違ってモテモテだったからね


遼「あ、そうだ

咲紀のミサンガ、

ちゃんと願い事叶えてくれた

ありがとな」


私のお願い事は

叶わなかったけど、

遼のお願い事は

叶ったみたい…


『ねぇ、あの時、

何をお願いしたの?』


遼「あー、内緒」


そう言って、幸せそうに笑った


《おわり》
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