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第10話 おどしですわ。
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アルガス様が連れていた白馬は毛並みが素晴らしく美しく、本当にお利口なお馬さんでした。
「この子は、人の感情を読み取るのが得意でね、急いでいる時には蹴らずとも早く走ってくれるんだ。サフィアは馬に乗るのは初めてかい?」
「え、ええ。乗り合い馬車ぐらいしか乗った事がないのです。直接馬に乗る訳ではなく荷車に乗っているので、体感がこんなにも違うのですね」
思ったよりも揺れて強い振動がある。原生林を駆け抜ける白馬から落ちないようにアルガス様のフルメイルが装着された背中にひっしと抱き着く。
とても近い距離に鼓動が早くなる。アルガス様はとても良い匂いがする、お花のような密のような甘い匂いだ。
普段なら妄想が止まらないわたくしですが、今は妄想している場合ではないので意識をしっかりと保つ。
「間もなく、森を抜ける。村も近いぞ」
アルガス様の勇ましい声がそう告げる。
¥
「いんや~そうは言われてもねぇー。部外者には売るなって村長が決めてるもんでなー」
モックの村に着き、駆け込むように調合士が経営する毒消しポーション専門店に入る。
店内の棚には様々な毒に対応出来る、毒消しポーションがずらーっと並んでいた。
ダイダラスネークの毒に聞くポーションを発見して喜び勇んでカウンターに持っていった所、そう言われた。
「いや、しかし、急を要しているのだ。わたしはバブルブルグ騎士団、騎士団長のアルガスと申す。何とか売ってもらえないだろうか」
アルガス様が頭を下げる。
「パプルプルル? 聞いた事ねぇーなぁー。まぁいずれにしても売れねぇもんは売れねぇから、諦めておくんなす」
キレそうになりました。アルガス様が頭を下げて頼んでいるというのに。
そして田舎過ぎる為に、バブルブルグの事を知らないという驚きぶり。空いた口が塞がりませんわ。
「村長さんにお話しをつけてきます!」
カウンターに両手を叩きつけて凄むと、調合士のお婆さんは「ほえー」と気の抜けた返事を返す。
わたくしは踵を返して村長の家に向かいます。
「しかし、頭の固い人だな。田舎は閉鎖的だと聞いていたが……」
「大丈夫ですわ、アルガス様。わたくしに考えがございます」
村長の家の木戸を勢い良く開く。
「たのもー!」
わたくしは声を張り上げて村長を呼ぶ。
「何事じゃ」
いかにも頭の固そうな、古臭い考えに取りつかれていそうな顔をした、白髪の老人が出てきます。
「あの、こちらの村では部外者にはポーションを売らないという裏ルールがあるようなのですが本当でしょうか?」
「本当じゃ」
「それは何故ですか」
「部外者をこの村に呼び込みたくないからじゃ。人が集まれば災いが起きるからのぅ」
何て古い考えなのかしら。
「災いなんて、起きません。人間はモンスターではないですから理性があります。ポーションが売れればこの村だって繁盛して繁栄します。そんな古い考えは捨ててわたくしどもに毒消しポーションを売ってもらえないでしょうか?」
「無理じゃ」
カチン。
押してだめなら引いてみろですわ。
「村長さんは災いを恐れているのですね?」
「そうじゃな、災いとモンスターはワシの天敵じゃ」
なるほど、ならば。
「わたくしがそのモンスターを呼び寄せる事を得意とする人物だとしたらどうしますか。村をいくつも壊滅に追い込んでいます。もし毒消しポーションを売ってくれなければこの村を滅ぼします」
「ふんっ、小娘風情が脅しなどワシには通じんぞ。諦めて帰るんじゃな」
「ビーストソング!」
「さ、サフィア!」
アルガス様が驚いた声を上げる。その声に続くように
「はぅあーっ!」
ゴブリンに囲まれた村長が腰を抜かして尻餅をつく。
「どうです。売ってくれますよね」
「わ、解った! いくらでも売ろう。じゃから、頼むからこのゴブリンをなんとかしてくれ!」
¥
「まぁー、あの頭の固い村長が許可を出すなんて、あんた達どんな恐ろしい手を使ったんだね」
「特には何もしていませんよ。しいて言えば可愛さアピールぐらいです。その点、女の子は得ですね」
「ほえー、そうかい。でもあんたちっぱいで魅力にかけるけんども」
カチン。
でも特製の毒消しポーションを売ってもらえる事になったので穏便にすませます。
「これがダイダラスネークの毒に聞く、毒消しポーションだ。1日3回、朝・昼・晩とこの専用の吸出しでお口に入れてやっておくんなまし」
「ありがとうございます調合士さん!」
「恩に着ます」
「気ぃーつけてなー、お若いお二人さん」
わたくしとアルガス様は満面の笑みで毒消し専門のポーションショップを出ます。
毒が回り切るまで残り2日。
お利口なあの白馬にとってはいとも容易い時間でしょう。
「この子は、人の感情を読み取るのが得意でね、急いでいる時には蹴らずとも早く走ってくれるんだ。サフィアは馬に乗るのは初めてかい?」
「え、ええ。乗り合い馬車ぐらいしか乗った事がないのです。直接馬に乗る訳ではなく荷車に乗っているので、体感がこんなにも違うのですね」
思ったよりも揺れて強い振動がある。原生林を駆け抜ける白馬から落ちないようにアルガス様のフルメイルが装着された背中にひっしと抱き着く。
とても近い距離に鼓動が早くなる。アルガス様はとても良い匂いがする、お花のような密のような甘い匂いだ。
普段なら妄想が止まらないわたくしですが、今は妄想している場合ではないので意識をしっかりと保つ。
「間もなく、森を抜ける。村も近いぞ」
アルガス様の勇ましい声がそう告げる。
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「いんや~そうは言われてもねぇー。部外者には売るなって村長が決めてるもんでなー」
モックの村に着き、駆け込むように調合士が経営する毒消しポーション専門店に入る。
店内の棚には様々な毒に対応出来る、毒消しポーションがずらーっと並んでいた。
ダイダラスネークの毒に聞くポーションを発見して喜び勇んでカウンターに持っていった所、そう言われた。
「いや、しかし、急を要しているのだ。わたしはバブルブルグ騎士団、騎士団長のアルガスと申す。何とか売ってもらえないだろうか」
アルガス様が頭を下げる。
「パプルプルル? 聞いた事ねぇーなぁー。まぁいずれにしても売れねぇもんは売れねぇから、諦めておくんなす」
キレそうになりました。アルガス様が頭を下げて頼んでいるというのに。
そして田舎過ぎる為に、バブルブルグの事を知らないという驚きぶり。空いた口が塞がりませんわ。
「村長さんにお話しをつけてきます!」
カウンターに両手を叩きつけて凄むと、調合士のお婆さんは「ほえー」と気の抜けた返事を返す。
わたくしは踵を返して村長の家に向かいます。
「しかし、頭の固い人だな。田舎は閉鎖的だと聞いていたが……」
「大丈夫ですわ、アルガス様。わたくしに考えがございます」
村長の家の木戸を勢い良く開く。
「たのもー!」
わたくしは声を張り上げて村長を呼ぶ。
「何事じゃ」
いかにも頭の固そうな、古臭い考えに取りつかれていそうな顔をした、白髪の老人が出てきます。
「あの、こちらの村では部外者にはポーションを売らないという裏ルールがあるようなのですが本当でしょうか?」
「本当じゃ」
「それは何故ですか」
「部外者をこの村に呼び込みたくないからじゃ。人が集まれば災いが起きるからのぅ」
何て古い考えなのかしら。
「災いなんて、起きません。人間はモンスターではないですから理性があります。ポーションが売れればこの村だって繁盛して繁栄します。そんな古い考えは捨ててわたくしどもに毒消しポーションを売ってもらえないでしょうか?」
「無理じゃ」
カチン。
押してだめなら引いてみろですわ。
「村長さんは災いを恐れているのですね?」
「そうじゃな、災いとモンスターはワシの天敵じゃ」
なるほど、ならば。
「わたくしがそのモンスターを呼び寄せる事を得意とする人物だとしたらどうしますか。村をいくつも壊滅に追い込んでいます。もし毒消しポーションを売ってくれなければこの村を滅ぼします」
「ふんっ、小娘風情が脅しなどワシには通じんぞ。諦めて帰るんじゃな」
「ビーストソング!」
「さ、サフィア!」
アルガス様が驚いた声を上げる。その声に続くように
「はぅあーっ!」
ゴブリンに囲まれた村長が腰を抜かして尻餅をつく。
「どうです。売ってくれますよね」
「わ、解った! いくらでも売ろう。じゃから、頼むからこのゴブリンをなんとかしてくれ!」
¥
「まぁー、あの頭の固い村長が許可を出すなんて、あんた達どんな恐ろしい手を使ったんだね」
「特には何もしていませんよ。しいて言えば可愛さアピールぐらいです。その点、女の子は得ですね」
「ほえー、そうかい。でもあんたちっぱいで魅力にかけるけんども」
カチン。
でも特製の毒消しポーションを売ってもらえる事になったので穏便にすませます。
「これがダイダラスネークの毒に聞く、毒消しポーションだ。1日3回、朝・昼・晩とこの専用の吸出しでお口に入れてやっておくんなまし」
「ありがとうございます調合士さん!」
「恩に着ます」
「気ぃーつけてなー、お若いお二人さん」
わたくしとアルガス様は満面の笑みで毒消し専門のポーションショップを出ます。
毒が回り切るまで残り2日。
お利口なあの白馬にとってはいとも容易い時間でしょう。
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