番になれないアルファ

番ってそんなに大事ですか？

   己自身がアルファだというのは産まれたころからなんとなく分かっていた

両親は運命の番でアルファとオメガ

仲睦まじく 愛し合い そして産まれたのがオレだった

小さいころからずっと見てきたから

当たり前に運命の番を見つけて当たり前に両親のようになるって信じてたんだ

幼稚園に入ると同じバースで組をわけられた

そこで出会ったのがアイツだった

アイツとはずっと腐れ縁で中学生 高校 大学と同じ道を進むことになった。

いつも一緒にいるのが当たり前で「お前らいいコンビじゃん」とか「お前ら番同士みたい」だの

周りの目はつねに俺らをセットとして見ていた。

そんな関係が終わりを迎えたのは大学４年も終わり頃

「真っ先にお前に伝えたくて走ってきた！安希！運命の番を見つけたんだ！」

嬉しそうに話す相棒を見てこれが運命の番を見つけた顔かなんて思った。

両親の仲睦まじい姿を知らないオメガと相棒とに重ねて想像した。

「そうかよかったじゃないか」

笑顔で祝福する。それが俺からできることだった

チクッと棘がささる感覚は無視をしよう。

きっとこれは相棒をとられる事に対する友情の嫉妬だ。

よくある事だと言い聞かせて。

しばらくしてすぐにアイツは結婚もした。

だから幸せになるアイツをみてオレも運命の番見つけて
家族ぐるみで仲良くなんてことを考えていた。

しかしその幸せな計画はすぐに崩れた

あいつの運命の番はあっけなく交通事故でこの世を去っていった

斎場で肩を落とすアイツとオレの2人きり

「これからどうするんだ」

「周りからは新しい番をって言われてる。オメガだったらいいだろうって。でも僕はこれから先、番を作るつもりはないよ、また失うのが怖いんだ」

オレは肩を抱き寄せた

「泣けよ」

「ごめん」

肩で泣くから頭をポンポンと宥めたのだ

「オレが代わりになってやろうか」

「安希、それってどういう」見開かせれた目でオレを見つめる

「アルファ同士で結婚している奴はいるだろ。結婚は無理でもオレが番の代わりみたいなのなってやるよ」

これがなにを意味するのか知らない子供じゃない

「それじゃ君に負担が、君はアルファだよ」

「俺は抱くより抱かれる側だって認識してたんだよ。俺も運命の番とかオメガと番とか怖くなった。だからお前さえよければ、この提案受け入れてくれ」

「分かったよ。これからよろしく」

利害の一致で結ばれたなにかが始まった