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4 婚約破棄と国外追放

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    あっ、水晶が青く光っている。


    少し開いていた唇を片手で隠し鑑定士の言葉を待った。

「ほぅ。水魔法ですね」

    あの子は水魔法なんだ、凄いな。

    次はオレンジ色の光。

「おぉ、騎士とは素晴らしい!」

    騎士ってことは、将来は騎士団に入れるんだ。

    次々とスキルが出るたびに、ドキドキしている。

(んっ? どうしたんだろう?)


    周りがワッとざわついた時だった。


    私は大きく目を見開いた。青と白が重なり合うようにして、綺麗にキラキラと輝いてる光なんて、見たこともなかったからだ。

「聖騎士!!

    ルドルフ殿下、おめでとうございます!!」

「さすが、我が息子だ!」


    ルドルフ殿下が聖騎士、凄いスキルだわ。その本人は鼻高々な態度で「ふん、俺なんだから当たり前だ!!」と偉そうな態度だった。


    そんな中、大広間は聖騎士が誕生したという歓喜の声で溢れていた。

「きゃぁん!

    ルドルフ殿下、素敵っ!!

    はぁはぁ……」

    前に並んでいたはずなのに、いつ隣に来たのだろう。

    ってか、ブリアンの息遣いが気持ち悪いわ。

    次はブリアンの番でしょ、早く行きなさいよ!  と、目で訴えると、ルンルン気分な足取りで行くブリアン。

    なんだか嫌な予感がする。ジワジワと体がうずいて、胃が重く感じる。

    体が一瞬こわばったときだ。水晶の光が真っ赤に染まった。

    赤い光ってことは、火か炎?

「うむ、火魔法です」

「火魔法!

    ……うふふふっ……」

    ブリアンの不気味な声と表情を見た私は、一歩二歩すり足で下がった。

    そんな私を見たブリアンは、気持ち悪い笑みを(ニヤァ)と浮かべながら、わざと足をグリグリと踏んで「っっ!!」通り過ぎた。


(痛っ!!)


    もう!  体重が重すぎなのよっ!

    骨が折れるかと思ったじゃないの!!

    私は脳内で悪態を吐いた。


    ブリアンは火魔法かぁ。

    お屋敷に帰るのが怖いと思ってしまうし、スキルを授かったあとの行動を慎重に考えないと。

    剣士、騎士、武術師、魔法、テイマー、商人、薬師……と、様々なスキルが鑑定されたなか。


    ブリアンの鑑定後、私の鑑定となった。

    水晶に手をかざすと水色や白、黄緑やピンクの光が輝き、私も周りの全員が期待に満ち光は虹色に変わったが……数秒で消え。鑑定士は首を傾げたあと、一瞬眉をひそめ水晶に集中したが、鑑定されたスキルはゴミ以下だと判定された。

    周りの視線が期待から失望へと変わってくるのが分かる。

(はぁ)と深いため息、歯ぎしりの音、しかめ面をした王族。

    鑑定士は無表情のまま、私を貶すように話した。

「稀にいるんですよね。

    光を惑わすゴミ以下スキルがね!」

「何だと、ゴミ以下!?」

「このような聞いたこともないスキルは無能と決まっているんですよ!」

「なんと!

    この、ローバル貴族の恥さらしめがっ!」

    私のスキルは『草集め』と『特殊想像生成』聞いたこともないスキルは、ゴミ以下だと鑑定士に判断された。

    ゾクッとする視線を感じ。

    おそるおそる、後ろを振り向くと。

    周りの者達の険しい目つきに、恐怖で震えがきそうなくらい私を見ていた。

「無能……」

「ローバルにゴミスキルはいらないんだよ!!」

「オマエはゴミ以下だなっ!!」


    罵る声。

    怒りに満ちた目。

    殺気を放つ身内。


    私に……味方は……いない。

    味方なんて初めからいなかった。

(いてくれたのは、たった一匹のマロンだけ)

    体が重くフラフラする。

    身内である、叔父と叔母。ブリアンにも罵倒され。

「我ら侯爵家の恥さらしがっ!

    身内でもないお前は、今直ぐにここから出て行け!!」

「育ててやった恩を仇で返すだなんて、役立たずの馬鹿なガキだわ!」

「ルルナは地味でブスだから王子様に嫌われるのよ。

    あははっ、無様よねっ!!」

    侯爵家?

    アンタ達は侯爵ではなく『男爵家』でしょ!


    重い空気で吐き気がする。

    頭も重い。


    父様の爵位を奪う行為は極刑の犯罪。

    この人達は狂ってる!



    叔父達のことを考えている間に、王様から国外追放を宣言された。

「叔父様たちは男しゃ……」

 叔父たち家族は男爵でしょう?

 と、言い終わる前に叔父によって言葉を遮られた。


「黙れっっ!!

『賢者(魔石に付与可能)』それも魔石に付与が出来るとは何かの間違いでしょう。伝説級のスキルですし、もう何百年も前から存在しなくなりましたからね。

『草集め』に『特殊想像生成』など、何の役にも立たないスキルのお前は、侯爵の名を剥奪する。

    この国から今すぐに出て行けっ!!!」

    エメロイ侯爵は先祖代々受け継いできたのは体の中にある由緒正しい【血】だ。言葉だけではエメロイ侯爵家と判断されないし、王様が手続きをしたとしても出来ない。

 エメロイ侯爵家だけは、当主が代わるごとに神獣様の許可がいるのだ。

   馬鹿な王様の言葉を聞いた叔父たちは、笑みを浮かべて再び罵った。

「ゴミ虫スキルしかないお前は、我らの身内ではないわ。我らの前から消えろ!」

「ルルナなんて、魔物に襲われて死んじゃえっ!!」

    家族(両親と兄は亡くなっているので叔父夫婦が現在の両親)にも罵倒され縁切りまでされた私は、庶民へと堕とされた。

    エメロイ侯爵家の家宝である【神獣の主の古記】はここにあるから庶民にはなれないんだけど、今は放置でいよう。

「役に立たないスキルのお前は、この国から出て行け!」

    王様は王座から立ち、右手で大きく振りかざし、私に出て行けと態度で示していた。

    そして、幼い頃にエメロイ侯爵との繋がりが欲しい王族は、嫌がる私に『無理矢理』第二王子と婚約話がでたのだが、私は婚約者だなんて一度も思ったことはない。

    その第二王子であるルドルフ殿下は私に近付き、心無い言葉を口にした。

「お前の父が死んだんだから、婚約する意味ないよな。

    お前の両親と兄は無様な死に方だよなぁ……ぷくくっ……。

    だが、エメロイ侯爵とのつながりは大切だと父上が言っていた。

    だから、無能で恥さらしな家族がいたお前との婚約を破棄にし、お前の従姉妹のブリアンと婚約する!

    良い考えだろ?

    ふっ、俺は天才だな!」

「はははっ、そうだな。

    良い判断だ。さすが我が自慢の息子だ!」

    アホ面した王様とドヤ顔の王子様に矢継ぎ早に言われ。

    大切な両親と兄様を侮辱する言い方、許さない!!

    それに、私が何をしたというのよ。

    今日まで暴力や血反吐を吐きながら耐えてきたのに。

    こんな仕打ち、あんまりだ!

    王族と広間に集まっている貴族共は、絶望のど真ん中にいる私を見てあざ笑っている。

    この国の王族と一部の貴族は狂っている。

    5歳の子供に対して放って良い言葉ではないからだ。

    この国の王族と貴族共は、血も涙もない連中だわ。

「庶民の子がいていい場所ではなくてよ!」




    王様と王妃様、そして第二王子に矢継ぎ早に罵られ。

「1週間だけ猶予をやろう。

    1週間で国境を越えてなければ、その場で処刑だ!」


    震える唇、胃が締めつけられるような吐き気。

    時間がないのは分かってる。

    けど、ドクドクと鳴る鼓動に呼吸が乱れ、私は目の前が真っ暗になり、その場でへたり込んでしまった。



    だが、ギリっと強く腕を捕まれ、痛みのあまり声が漏れた。

「い、痛いっ!

    離してっ!!」

    痛みを訴える私を無視し、騎士は追い討ちをかけるように大広間から強引に引きずり【無一文】で、王城から放り出された。
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