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ふつかめ ~なにかがこわれてく~

おるすばんのはじまり

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 目の前に現れたのは、美人なお姉さん。
「ひすいさん、今日の日給は一万円でオーケー?」
「うん! お姉さんにドンと任せなさい!」
 女子中学生に雇われる成人女性とは流石に笑えてくる。
 というか主に妹の金銭感覚やらなんやらが若くして崩壊しかかってるような気がするのが怖いが……そもそも子供の生活費おこづかいとして毎月四十万支給してくる親も親なのだ。もうなにも言うことはない。
 以上。閑話休題。
 瑠璃は「ちゃんとお姉さんの言うことを聞いて……」なんてぐちぐち言いつつも。
「行ってきまーす」
 無事に学校へと向かった。
「さて……翡翠ひすいさん、でしたっけ?」
「そうよ。ひすいお姉さんって呼んでもいいのよ?」
「……」
 ペースが崩されそうになるが。
「じゃあ、まずは自己紹介とかどうです? ……あ、お茶入れてきます」
「いいわよ~。ちっちゃい子に気を使わせるのは悪いわ」
 朗らかな笑みを浮かべてやんわりと断りつつ俺を子供扱いしてくる翡翠さん。
「いや、自分も飲むので。それともコーヒーの方が良かったですか?」
「じゃあ……お願いするわね」
 食い下がると、彼女は少しだけ顔を赤らめて迷う素振りを見せて、結局頷く。
 台所に向かい、ティーカップに紅茶のティーパックを入れて、給湯器でお湯を注ぐ。それを自分の分を含めて二回。
 普段より手間はかかったが、どうにか上手くいった。
 角砂糖は……昨日料理しようとしたときに使った踏み台を使えばどうにか取れた。すごく疲れたけど。
「どうぞ。粗茶ですが」
「あら、ありがとうね」
 手渡すと、翡翠さんは一口だけ飲んで、ほっと息をついた。俺も同じように飲もうとして……。
「あひっ!」
 どうやら俺は猫舌らしい。
 翡翠さんはくすくすと、微笑ましいものを見たように笑った。

「じゃあ、自己紹介をしましょう。まずは俺から」
「おれ?」
 翡翠さんは首をかしげる。俺はため息をついて。
「俺は、日向ひなた そうです。こんな身体になっちゃったけど……実年齢は十七歳、男性、高校生です」
「へぇ……え?」
「信じられないでしょうし、今すぐ出せる証拠もないのですが……一昨日までは確実に男子高校生だったんです」
 それこそ信じられないものを見る目で俺をまじまじと見つめる翡翠さん。俺も最初はそういう心境だった。数分後には全てを受け入れてたという瑠璃の順応性がおかしかっただけで、普通はこんなもんなのだ。
「……どおりで、今はすごく大人びてたわけね。店でのあの様子を見たら信じられないけど……」
 ……受け入れ始めているように見えるのは気のせいだろうか。だとしたらこの世界の女子って順応性高すぎないか?
「あなたの番ですよ」
 とりあえず催促すると、彼女は「あっ……ええ、はい」と戸惑いつつも返事をした。
「私は、山野やまの 翡翠ひすい。二十二歳です。普段はニシマツヤで働いてます。……ため口でもいいかな?」
「あ、はい」
 まぁ、実年齢でも年上のお姉さんだし。
「……できれば、ため口で接してほしいな」
「いいんですか?」
「いいの。そっちの方が話しやすいし」
 予想外。家族以外の他人とこうしてプライベートで話すことすら珍しい俺には、大分難易度が高いように思えたが。
「……うん、わかった」
 何故かすんなりと上手くいった。

 無言の時間が過ぎていく。
 ……にしても、このお姉さん、美人だなぁ。
 俺は自他ともに認めるロリコンではあるが、本当に綺麗な女の人に反応しないほど腐ってもいない。
 おっとりとした雰囲気、ふわふわと柔和な笑みを浮かべている。年齢に対して小柄な背丈。どこか垢抜けないような、可愛いとも言えるような美人。
 俺が男の状態であったならば、息子様がご起立していたであろう。彼女はロリコンでさえ虜にしてしまうほどの、無自覚な魅力を放っていた。
 それが、すこしもじもじとし出して……ん?
「ねぇ、翡翠さん」
 話しかけると、翡翠さんは大袈裟にびくりとして――微かなせせらぎの音と共に、ふぅっと大きく息をついた。
「なに?」
「あの……トイレ、我慢してない?」
 さっきの彼女の仕草、あれはきっとおしっこを我慢してたのだ。俺にはそう見えた。
 だが。
「大丈夫」
 不思議なことに、断られる。
 むしろ、もじもじとするのはこちらの方であった。
「ん……っ」
 さっきからちびちびと飲んでいた紅茶のせいだろうか。急激な尿意が俺の下半身を襲い。
「大丈夫? おトイレ?」
 こくりと首を振ろうとしたが――その刹那よりも膀胱括約筋が限界を迎える方が早かった。
 ポリマーに水が叩きつけられる音が響いている、ような気がする。吸収体がどんどんと膨張していき。
「……だめだった」
 告げると彼女は苦笑い。そして、突然衝撃的な告白をした。
「私も、だめだったんだ」
「へ?」
 一瞬、理解できなかった。
 そういえば、瑠璃に聞いた、ベビー用品店のとある店員の話。
『その人はおむつが大好きだったそうだからむしろ喜んでたそうだけど』
『あの人も普段からおむつしてるんだってー。なんでも、逆トイレトレーニングとやらで自分でおもらしできるようにしたとか』
 まさか、そんなことは。その変態店員がこの美女なわけが。
 可能性を否定するかのように、彼女は己のスカートをめくり上げた。

 そこには、ぷっくりと膨らんだ、白地にピンク色のハートが散りばめられた、大きめの子供用紙おむつが。

「さあ、二人で取り替えっこしましょ?」
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