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2 僕の話

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僕は前世の記憶を持っている。
全然違う文化の、全然違う国の記憶だ。



僕には婚約者がいる。僕も男で相手も男だけど、物心のつく前に決められた婚約者。
二度目の人生を生きるこの世界には、神聖な御告げによって定められた「生涯の伴侶」がいる。それは魂を最も高めあえる最上級の相性であり、性別や年齢は関係ないとされる。
特に貴族社会では「生涯の伴侶」制度は重要視され、僕も教会から告げられた相手と婚約を結ばれた。

幸運にも同年齢で住まいも近かった僕らは当然幼馴染みで、それなりに仲の良い、穏やかな関係性を築いてきた。
心が震えるような恋ではないけれど、彼はずっと僕の家族のようなもので、死ぬまで一緒にいるものだと思ってきた。

15の誕生パーティーまで。

僕のとなりに立ったまま、彼はひとりの令嬢に見惚れていた。

その横顔を見たときから予感はあった。

彼は遊びに誘ってこなくなり、かの令嬢が親しくしている派閥のお茶会にひとりで頻繁に足を運ぶようになった。

翌年の誕生パーティーで、彼は僕をほおって彼女をエスコートした。

その様子を見て、パーティーの翌日には僕の家族と彼の家族で話し合いが持たれた。
特に貴族として「生涯の伴侶」制度を重視する彼の両親は酷い顔色だった。
「生涯の伴侶をないがしろにするな」と父親から唸るような声で叱られた彼は、ふてくされ、開き直った。

「自分が決めた相手じゃない」





喧嘩をしたわけでも、何か行き違いがあったわけでもない。
ただ、知り合いが増えただけ。

二人きりの時は大切にしてもらえるけれど、選択肢ができた途端にいらなくなる。
例え神様に相性の良さを保証されても、時間をかけて関係性を育んでも、結局その程度の価値しかない。

前世の、愛されなかった人生から、僕は何も変わってない。
僕の存在は所詮そんなものなのだと、この時に悟った。
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