7 / 9
07.
しおりを挟む
気が付くと窓の外は真っ暗になっていた。定時はとうに過ぎていて、時刻はもうすぐ十九時になろうとしていた。会議の議事録をまとめて今日の参加者に送信する。休憩を入れて、もう少しだけ仕事を片づけてから帰ろうと休憩室に向かった。
水曜日はノー残業デーと社内で謳っているせいかいつもより残っている人は少ない。開発部も忙しくなる前に帰れるときには帰るというスタンスのようだ。
「んー、休憩室一人占めかー!」
三十五階にある休憩室の窓から見える夜景は絶景だ。無料のカフェラテを入れて、ソファ席にゆったりと座りながら灯りをぼーっと眺める。そうしていると宮川とエレベーターで交わしたキスのことを思い出して、唇に手を当てた。
宮川とするキスはとても気持ちが良くて流されそうになってしまう。だからあの時抵抗してしまった。あのままずるずると関係を続けていてはダメになってしまうと思ったからだ。「はぁ……でも気になることが多すぎるよ……」
お試し期間のこと、元カノのこと。宮川が何を考えているか分からなくてまさに積み状態だ。聞けばいいのに怖くなって逃げてしまった。宮川との関係が崩れるのなら、何もなかったことにして、ただの同期に戻りたかった。ただそれだけなのに、結局はその関係にすら戻れないでいる。
「……ん、ふぁ……」
もやもやと考えていると人の声が聞こえてきて亜美は周りを見渡した。すると長いソファからむくりと起き上がってくる人物がいて目を凝らす。
「やべ、もう暗くなってる……」
「み、宮川……?」
「ん……お前……!」
亜美が休憩室に来たとき、部屋の灯りが付いていなかったため誰もいないと思っていた。宮川の言葉を聞く限り、おそらく日が暮れる前からここで寝ていたのだろうか。それはそれであり得ない。
「もう十九時だけどそんな前から寝てたの……?」
「いや、十七時半ぐらいに来たはず」
起き上がった宮川はあくびをしながらコーヒーを入れている。焦った様子もなくて、亜美は逆に気が抜けてしまった。
「疲れてるならちゃんと帰って寝た方がいいんじゃない?」
「ん~。そうするか……」
意外と普通に話が出来ていることに驚いてしまった。もしかしたらこのまま今までの関係に戻れるのではないか。そう期待してしまう。
「それで? お前はこれから社長とデートでもしにいくのか?」
「え?」
そう期待していたのに、思ってもいなかった宮川からの言葉に亜美は間抜けな声を出してしまう。なぜここで藤沢が出てくるのか。宮川はコーヒーを持ったまま亜美の隣に座った。
「お前さ、社長とデキてるなら早く言えよ。俺が間男みたいだろ」
「え、ちょ、なんでそんな話に……?」
宮川から出てくる言葉に亜美の理解が追いつかない。確かに何度か藤沢に気にかけてもらった事はあるけれど、そんな関係ではないはずだ。
「今日のミーティングのあと、社長と、その……キス、してただろ」
「し、してない! してないってば!」
言いにくそうにしていた宮川から出て来た言葉に亜美は全力で否定をした。確かに泣いていたところを慰めてもらったがそんな接触はない。
「あれは、ちょっと相談に乗ってもらってたっていうか、その、泣いてしまって……」
宮川のことを話していたとは言えない。でもそういう風に勘違いされたくない。それだけは本当だ。
「じゃあお前の片思いか。いいんじゃないか。社長も独り身だし、お前も結婚したいならアリだと思うし」
「だから、違うって!」
「社長なら夜の方も優しくしてくれるだろ、俺と違ってさ」
そう言われて亜美の堪忍袋は限界だった。誤解されたくないと必死で否定をしたのに嫌味を言われ、さらに関係ない藤沢のことまであること無いこと言われるのには我慢ができなかった。
「そっちこそ、結婚考えてた元カノと、ヨリ戻そうとしてたんじゃないの? お似合いだったじゃない」
「は? それこそお前何言ってんだ?」
確証は持っていない。でも会話の内容からそうとしか思えないのだから、これは言ってしまってもいいだろう。
「プレスリリースの日。近くにいたから会話が聞こえてきたの。結婚は無理って振られたって。結婚考えてたのってその人でしょう?」
「あの時近くにいたら声かけろよ。お前の仕事だろ?」
「かけづらいに決まってるでしょ!」
仕事だと言われればその通りなのだが、かけづらい理由が今なら分かる。亜美はもう宮川に引かれていた。だから声をかけて、彼女のことをなんて紹介されるか怖かったのだ。
「なんで」
「なんでって……それは……」
いつものミーティングの時のような態度でそう尋ねられて亜美は思わず言葉に詰まる。なんで、なんて理由は一つしかない。
「それは……?」
宮川を見ると全てを分かっているような顔をしている。悔しい。結局対等だと思っているのに宮川の方が一枚上手な気がしてしまう。
「……もし、自惚れじゃなかったら俺が思ってることと、お前が思ってること、同じだと思っていいか?」
「宮川の考えてることなんてわかんないよ! 大体、宮川だって元カノと食事に行ったんじゃ……」
「行った。けどアイツもう他の人と結婚してる人妻だし、うちの会社のこと根掘り葉掘り聞かれて終わっただけ」
「え……? でも……」
もしかしたら宮川はまだ元カノに未練があるのではないか、そう思ってしまう。
「俺の中ではもう過去のことだよ。改めてアイツに会ってそう思った。ってかむしろ苦手意識の方が増してた。いつも言い負かされてたし」
はぁとため息を吐いた宮川は心底嫌そうな顔をしていた。一時期結婚まで考えてた相手なのに、少し会わなかっただけでこうも印象は変わってしまうのだろうか。
「それに、もう好きなやつ、いるし」
そういった宮川の顔が近づいてくる。亜美は思わず宮川の胸元を押し返してしまう。
「社長は良くて、俺はダメなの?」
「だから、社長とはそんなんじゃ……」
「黙って」
小さく囁かれて顎を取られるとそのまま宮川の唇が重なった。あの人同じように熱くて、蕩けるような熱に亜美は全てを持って行かれそうになる。
「ん……」
「お前、何でもかんでも一人でつっぱしって、勝手に結論出す癖、直した方がいいと思う」
唇が離れると宮川が少しだけ拗ねたような表情を浮かべていた。勝手にキスしてきたくせに文句まで言われて、亜美も黙ってはいられない。
「そ、そういう宮川だって、何も言わないじゃない。いつもは、言いたい事ずけずけ言ってくるくせに、肝心なこと……」
鼻の先が触れあう距離で宮川の瞳を見つめると、その瞳の中に映る自分がとても滑稽に見えて情けなくなってくる。自分でも分かるぐらい、宮川のことを好きだという顔をしている自覚があった。
「だから、お前と同じ事思ってるって……」
「ちゃんと言ってよ」
悔しくて、少しだけ意地を張ってしまう。自分からじゃなくて宮川から行って欲しい。それぐらいの乙女心は分かって欲しい。
「……言ったら、本当に前みたいに戻れなくなるけど、いいのか?」
甘く熱っぽく囁かれる声に亜美は頬が熱くなっていくのが分かる。
「そういう聞き方ずるいよ。もう、戻れないってわかってるのに」
お互いにどうなりたいかなんて分かっているはずなのに、一歩が踏み出せない。亜美は、少しだけ観念して、自分から宮川にキスをした。
「戻れなくて、いいよ」
「……俺も。戻りたくない。……好きだ」
「んっ……」
すぐ傍にあった唇がまた塞がれる。注ぎ込まれる熱に亜美はただ翻弄されるしかなかった。
熱くて気持ち良くて、やっぱり宮川との相性はいいのだと再確認する。
「あの日、お前と一緒に夜を明かして、久々にぐっすり寝れた。それから一人で寝ようとしてもなかなか眠れなくて……」
抱き締められながら耳元で囁かれる宮川の声を聞いていると心地よい。腰に回された手に全てを委ねたくなる。
「だから、会社に良く泊まってるの?」
「……気が付いてないだけでそうだったのかも」
一つ、宮川自身が気付けていなかったことを知った。意外と宮川はさみしがり屋なのかも知れない。そして亜美が思っているよりも繊細な人だ。
「それに、なんかお前と言い合いできないのも調子狂うっていうか。元に戻ろうって言われても、戻れないのは俺の方だったのかもな」
「うん、それは私も」
マーケティング会議の日。言い合いをしなかったことにほっとしながらもどこか寂しいと思っている自分もいた。だからあの場で泣き出してしまい藤沢にも心配されてしまったのだ。二人ともとっくに戻れないところまできてしまっていた。
「好き。悔しいけど、私も宮川のことずっと考えてるの。あの日から……」
その二文字を口にすると心の中のモヤが晴れていくような気がした。やっと自分の気持ちに素直になれた。
「あの日、お前にお試しだって言ったの、軽い気持ちじゃないから。あわよくば、お前と恋人になりたいって思ってた」
「あわよくばって……やっぱりずるい」
「だって、お前はその気が無かっただろ? 俺だけはあり得ないって」
嘘だ、本当は気になっていた。あの日、結婚を考えた人がいると聞いてショックだったのは、宮川と同期という立場にあぐらをかいていたからだと気付いた。本当にそう思っていたら、酔っていたとしても流されたりなんかしない。
「私もあわよくば、宮川とそういう関係になりたいって下心があったのかも」
「……なんだよ、それ。お前もずるいだろ」
耳元で宮川の笑う声が聞こえる。それが心地よくてずっと宮川の声を聞いていたくなる。
「なぁ、あの日の続き、してもいいか?」
すっと宮川の手が亜美の身体を撫でる。その手つきであの夜のことを思い出して、亜美の背筋がぞくりとする。
あの日の続きを、亜美も期待している。
「今度はお試しじゃない。恋人としての関係を深めたいんだ」
その言葉に亜美はただ頷いた。
目を細めると夜景がぼやけていく。触れた唇の熱を受け入れながら、亜美はただ目の前の熱を必死でたぐり寄せるのだった。
水曜日はノー残業デーと社内で謳っているせいかいつもより残っている人は少ない。開発部も忙しくなる前に帰れるときには帰るというスタンスのようだ。
「んー、休憩室一人占めかー!」
三十五階にある休憩室の窓から見える夜景は絶景だ。無料のカフェラテを入れて、ソファ席にゆったりと座りながら灯りをぼーっと眺める。そうしていると宮川とエレベーターで交わしたキスのことを思い出して、唇に手を当てた。
宮川とするキスはとても気持ちが良くて流されそうになってしまう。だからあの時抵抗してしまった。あのままずるずると関係を続けていてはダメになってしまうと思ったからだ。「はぁ……でも気になることが多すぎるよ……」
お試し期間のこと、元カノのこと。宮川が何を考えているか分からなくてまさに積み状態だ。聞けばいいのに怖くなって逃げてしまった。宮川との関係が崩れるのなら、何もなかったことにして、ただの同期に戻りたかった。ただそれだけなのに、結局はその関係にすら戻れないでいる。
「……ん、ふぁ……」
もやもやと考えていると人の声が聞こえてきて亜美は周りを見渡した。すると長いソファからむくりと起き上がってくる人物がいて目を凝らす。
「やべ、もう暗くなってる……」
「み、宮川……?」
「ん……お前……!」
亜美が休憩室に来たとき、部屋の灯りが付いていなかったため誰もいないと思っていた。宮川の言葉を聞く限り、おそらく日が暮れる前からここで寝ていたのだろうか。それはそれであり得ない。
「もう十九時だけどそんな前から寝てたの……?」
「いや、十七時半ぐらいに来たはず」
起き上がった宮川はあくびをしながらコーヒーを入れている。焦った様子もなくて、亜美は逆に気が抜けてしまった。
「疲れてるならちゃんと帰って寝た方がいいんじゃない?」
「ん~。そうするか……」
意外と普通に話が出来ていることに驚いてしまった。もしかしたらこのまま今までの関係に戻れるのではないか。そう期待してしまう。
「それで? お前はこれから社長とデートでもしにいくのか?」
「え?」
そう期待していたのに、思ってもいなかった宮川からの言葉に亜美は間抜けな声を出してしまう。なぜここで藤沢が出てくるのか。宮川はコーヒーを持ったまま亜美の隣に座った。
「お前さ、社長とデキてるなら早く言えよ。俺が間男みたいだろ」
「え、ちょ、なんでそんな話に……?」
宮川から出てくる言葉に亜美の理解が追いつかない。確かに何度か藤沢に気にかけてもらった事はあるけれど、そんな関係ではないはずだ。
「今日のミーティングのあと、社長と、その……キス、してただろ」
「し、してない! してないってば!」
言いにくそうにしていた宮川から出て来た言葉に亜美は全力で否定をした。確かに泣いていたところを慰めてもらったがそんな接触はない。
「あれは、ちょっと相談に乗ってもらってたっていうか、その、泣いてしまって……」
宮川のことを話していたとは言えない。でもそういう風に勘違いされたくない。それだけは本当だ。
「じゃあお前の片思いか。いいんじゃないか。社長も独り身だし、お前も結婚したいならアリだと思うし」
「だから、違うって!」
「社長なら夜の方も優しくしてくれるだろ、俺と違ってさ」
そう言われて亜美の堪忍袋は限界だった。誤解されたくないと必死で否定をしたのに嫌味を言われ、さらに関係ない藤沢のことまであること無いこと言われるのには我慢ができなかった。
「そっちこそ、結婚考えてた元カノと、ヨリ戻そうとしてたんじゃないの? お似合いだったじゃない」
「は? それこそお前何言ってんだ?」
確証は持っていない。でも会話の内容からそうとしか思えないのだから、これは言ってしまってもいいだろう。
「プレスリリースの日。近くにいたから会話が聞こえてきたの。結婚は無理って振られたって。結婚考えてたのってその人でしょう?」
「あの時近くにいたら声かけろよ。お前の仕事だろ?」
「かけづらいに決まってるでしょ!」
仕事だと言われればその通りなのだが、かけづらい理由が今なら分かる。亜美はもう宮川に引かれていた。だから声をかけて、彼女のことをなんて紹介されるか怖かったのだ。
「なんで」
「なんでって……それは……」
いつものミーティングの時のような態度でそう尋ねられて亜美は思わず言葉に詰まる。なんで、なんて理由は一つしかない。
「それは……?」
宮川を見ると全てを分かっているような顔をしている。悔しい。結局対等だと思っているのに宮川の方が一枚上手な気がしてしまう。
「……もし、自惚れじゃなかったら俺が思ってることと、お前が思ってること、同じだと思っていいか?」
「宮川の考えてることなんてわかんないよ! 大体、宮川だって元カノと食事に行ったんじゃ……」
「行った。けどアイツもう他の人と結婚してる人妻だし、うちの会社のこと根掘り葉掘り聞かれて終わっただけ」
「え……? でも……」
もしかしたら宮川はまだ元カノに未練があるのではないか、そう思ってしまう。
「俺の中ではもう過去のことだよ。改めてアイツに会ってそう思った。ってかむしろ苦手意識の方が増してた。いつも言い負かされてたし」
はぁとため息を吐いた宮川は心底嫌そうな顔をしていた。一時期結婚まで考えてた相手なのに、少し会わなかっただけでこうも印象は変わってしまうのだろうか。
「それに、もう好きなやつ、いるし」
そういった宮川の顔が近づいてくる。亜美は思わず宮川の胸元を押し返してしまう。
「社長は良くて、俺はダメなの?」
「だから、社長とはそんなんじゃ……」
「黙って」
小さく囁かれて顎を取られるとそのまま宮川の唇が重なった。あの人同じように熱くて、蕩けるような熱に亜美は全てを持って行かれそうになる。
「ん……」
「お前、何でもかんでも一人でつっぱしって、勝手に結論出す癖、直した方がいいと思う」
唇が離れると宮川が少しだけ拗ねたような表情を浮かべていた。勝手にキスしてきたくせに文句まで言われて、亜美も黙ってはいられない。
「そ、そういう宮川だって、何も言わないじゃない。いつもは、言いたい事ずけずけ言ってくるくせに、肝心なこと……」
鼻の先が触れあう距離で宮川の瞳を見つめると、その瞳の中に映る自分がとても滑稽に見えて情けなくなってくる。自分でも分かるぐらい、宮川のことを好きだという顔をしている自覚があった。
「だから、お前と同じ事思ってるって……」
「ちゃんと言ってよ」
悔しくて、少しだけ意地を張ってしまう。自分からじゃなくて宮川から行って欲しい。それぐらいの乙女心は分かって欲しい。
「……言ったら、本当に前みたいに戻れなくなるけど、いいのか?」
甘く熱っぽく囁かれる声に亜美は頬が熱くなっていくのが分かる。
「そういう聞き方ずるいよ。もう、戻れないってわかってるのに」
お互いにどうなりたいかなんて分かっているはずなのに、一歩が踏み出せない。亜美は、少しだけ観念して、自分から宮川にキスをした。
「戻れなくて、いいよ」
「……俺も。戻りたくない。……好きだ」
「んっ……」
すぐ傍にあった唇がまた塞がれる。注ぎ込まれる熱に亜美はただ翻弄されるしかなかった。
熱くて気持ち良くて、やっぱり宮川との相性はいいのだと再確認する。
「あの日、お前と一緒に夜を明かして、久々にぐっすり寝れた。それから一人で寝ようとしてもなかなか眠れなくて……」
抱き締められながら耳元で囁かれる宮川の声を聞いていると心地よい。腰に回された手に全てを委ねたくなる。
「だから、会社に良く泊まってるの?」
「……気が付いてないだけでそうだったのかも」
一つ、宮川自身が気付けていなかったことを知った。意外と宮川はさみしがり屋なのかも知れない。そして亜美が思っているよりも繊細な人だ。
「それに、なんかお前と言い合いできないのも調子狂うっていうか。元に戻ろうって言われても、戻れないのは俺の方だったのかもな」
「うん、それは私も」
マーケティング会議の日。言い合いをしなかったことにほっとしながらもどこか寂しいと思っている自分もいた。だからあの場で泣き出してしまい藤沢にも心配されてしまったのだ。二人ともとっくに戻れないところまできてしまっていた。
「好き。悔しいけど、私も宮川のことずっと考えてるの。あの日から……」
その二文字を口にすると心の中のモヤが晴れていくような気がした。やっと自分の気持ちに素直になれた。
「あの日、お前にお試しだって言ったの、軽い気持ちじゃないから。あわよくば、お前と恋人になりたいって思ってた」
「あわよくばって……やっぱりずるい」
「だって、お前はその気が無かっただろ? 俺だけはあり得ないって」
嘘だ、本当は気になっていた。あの日、結婚を考えた人がいると聞いてショックだったのは、宮川と同期という立場にあぐらをかいていたからだと気付いた。本当にそう思っていたら、酔っていたとしても流されたりなんかしない。
「私もあわよくば、宮川とそういう関係になりたいって下心があったのかも」
「……なんだよ、それ。お前もずるいだろ」
耳元で宮川の笑う声が聞こえる。それが心地よくてずっと宮川の声を聞いていたくなる。
「なぁ、あの日の続き、してもいいか?」
すっと宮川の手が亜美の身体を撫でる。その手つきであの夜のことを思い出して、亜美の背筋がぞくりとする。
あの日の続きを、亜美も期待している。
「今度はお試しじゃない。恋人としての関係を深めたいんだ」
その言葉に亜美はただ頷いた。
目を細めると夜景がぼやけていく。触れた唇の熱を受け入れながら、亜美はただ目の前の熱を必死でたぐり寄せるのだった。
0
お気に入りに追加
65
あなたにおすすめの小説
【R18】豹変年下オオカミ君の恋愛包囲網〜策士な後輩から逃げられません!〜
湊未来
恋愛
「ねぇ、本当に陰キャの童貞だって信じてたの?経験豊富なお姉さん………」
30歳の誕生日当日、彼氏に呼び出された先は高級ホテルのレストラン。胸を高鳴らせ向かった先で見たものは、可愛らしいワンピースを着た女と腕を組み、こちらを見据える彼の姿だった。
一方的に別れを告げられ、ヤケ酒目的で向かったBAR。
「ねぇ。酔っちゃったの………
………ふふふ…貴方に酔っちゃったみたい」
一夜のアバンチュールの筈だった。
運命とは時に残酷で甘い………
羊の皮を被った年下オオカミ君×三十路崖っぷち女の恋愛攻防戦。
覗いて行きませんか?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
・R18の話には※をつけます。
・女性が男性を襲うシーンが初回にあります。苦手な方はご注意を。
・裏テーマは『クズ男愛に目覚める』です。年上の女性に振り回されながら、愛を自覚し、更生するクズ男をゆるっく書けたらいいなぁ〜と。
副社長氏の一途な恋~執心が結んだ授かり婚~
真木
恋愛
相原麻衣子は、冷たく見えて情に厚い。彼女がいつも衝突ばかりしている、同期の「副社長氏」反田晃を想っているのは秘密だ。麻衣子はある日、晃と一夜を過ごした後、姿をくらます。数年後、晃はミス・アイハラという女性が小さな男の子の手を引いて暮らしているのを知って……。
木曜日の内緒のレッスンは恋のはじまり~触れられるたび好きになってしまいます~
sae
恋愛
若槻瑠衣(わかつきるい)(25)は学生の時に不感症と言われて以来恋愛下手になり未だに処女を手放せずにいる。社内の高嶺の花に恋をしているがそのトラウマと自信のなさから見守るだけの恋をしていた。ひょんなことからその恋の相手の同期、太刀川柾(たちかわまさき)(30)に秘密がバレて不感症を克服させてやると言われる。木曜日の定時後に行われる秘密のお試し期間に瑠衣の心に次第に変化が訪れて……。
▷俺様先輩×恋愛トラウマ女子の秘密のオフィスラブ。
▷R-18描写多め、キスなどの軽い描写は☆、濃厚シーンには☆☆表示、苦手な方はスルーしてください。
ただいま冷徹上司を調・教・中!
伊吹美香
恋愛
同期から男を寝取られ棄てられた崖っぷちOL
久瀬千尋(くぜちひろ)28歳
×
容姿端麗で仕事もでき一目置かれる恋愛下手課長
平嶋凱莉(ひらしまかいり)35歳
二人はひょんなことから(仮)恋人になることに。
今まで知らなかった素顔を知るたびに、二人の関係は近くなる。
意地と恥から始まった(仮)恋人は(本)恋人になれるのか?
【完結】maybe 恋の予感~イジワル上司の甘いご褒美~
蓮美ちま
恋愛
会社のなんでも屋さん。それが私の仕事。
なのに突然、企画部エースの補佐につくことになって……?!
アイドル顔負けのルックス
庶務課 蜂谷あすか(24)
×
社内人気NO.1のイケメンエリート
企画部エース 天野翔(31)
「会社のなんでも屋さんから、天野さん専属のなんでも屋さんってこと…?」
女子社員から妬まれるのは面倒。
イケメンには関わりたくないのに。
「お前は俺専属のなんでも屋だろ?」
イジワルで横柄な天野さんだけど、仕事は抜群に出来て人望もあって
人を思いやれる優しい人。
そんな彼に認められたいと思う反面、なかなか素直になれなくて…。
「私、…役に立ちました?」
それなら…もっと……。
「褒めて下さい」
もっともっと、彼に認められたい。
「もっと、褒めて下さ…っん!」
首の後ろを掬いあげられるように掴まれて
重ねた唇は煙草の匂いがした。
「なぁ。褒めて欲しい?」
それは甘いキスの誘惑…。
恋に異例はつきもので ~会社一の鬼部長は初心でキュートな部下を溺愛したい~
泉南佳那
恋愛
「よっしゃー」が口癖の
元気いっぱい営業部員、辻本花梨27歳
×
敏腕だけど冷徹と噂されている
俺様部長 木沢彰吾34歳
ある朝、花梨が出社すると
異動の辞令が張り出されていた。
異動先は木沢部長率いる
〝ブランディング戦略部〟
なんでこんな時期に……
あまりの〝異例〟の辞令に
戸惑いを隠せない花梨。
しかも、担当するように言われた会社はなんと、元カレが社長を務める玩具会社だった!
花梨の前途多難な日々が、今始まる……
***
元気いっぱい、はりきりガール花梨と
ツンデレ部長木沢の年の差超パワフル・ラブ・ストーリーです。
糖度高めな秘密の密会はいかが?
桜井 響華
恋愛
彩羽(いろは)コーポレーションで
雑貨デザイナー兼その他のデザインを
担当している、秋葉 紫です。
毎日のように
鬼畜な企画部長からガミガミ言われて、
日々、癒しを求めています。
ストレス解消法の一つは、
同じ系列のカフェに行く事。
そこには、
癒しの王子様が居るから───・・・・・
カフェのアルバイト店員?
でも、本当は御曹司!?
年下王子様系か...Sな俺様上司か…
入社5年目、私にも恋のチャンスが
巡って来たけれど…
早くも波乱の予感───
誤算だらけのケイカク結婚 非情な上司はスパダリ!?
奏井れゆな
恋愛
夜ごと熱く誠実に愛されて……
出産も昇進も諦めたくない営業課の期待の新人、碓井深津紀は、非情と噂されている上司、城藤隆州が「結婚は面倒だが子供は欲しい」と同僚と話している場面に偶然出くわし、契約結婚を持ちかける。 すると、夫となった隆州は、辛辣な口調こそ変わらないものの、深津紀が何気なく口にした願いを叶えてくれたり、無意識の悩みに 誰より先に気づいて相談の時間を作ってくれたり、まるで恋愛結婚かのように誠実に愛してくれる。その上、「深津紀は抱き甲斐がある」とほぼ毎晩熱烈に求めてきて、隆州の豹変に戸惑うばかり。 そんな予想外の愛され生活の中で子作りに不安のある深津紀だったけど…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる