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学園編
秋の収穫祭①
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「うう~」
研究室まで走って戻ってきたあと、手の甲にある契約印に触れグレンを呼び、そのもふもふな羽毛に顔を埋める。不思議そうな顔をしながら受け入れてくれた。優しい。
本当に、リーゼとミリアが変なこと言うから…そもそも私は平民でヴィンス様は貴族。越えられない身分差があるし、貴族の養子になったとしても血筋が変わるわけではないのでご両親も嫌なはず。
私自身、ヴィンス様をどう思ってるのかはわからない。けど、彼がいつか身分に相応しい令嬢と結婚することを思うと、少し胸が痛む。
「研究しよ!」
前回の発表会ではまだ一般へ普及させるには使えなさすぎる。もっと効果を上げて作り方も簡素にしなければ。
頬を叩いて気合いを入れ直す。
ーコンコン
「?はーい」
ドアを開けると、ヴィンス様が立っていた。
「ヴィ、ヴィンス様?!とりあえず中へどうぞ!」
中へ招いて向かい合ってソファに座る。
「急にすまない。今大丈夫か?すぐに済む」
「は、はい!どうかしました?セロに何かありました?」
「いや、セロはノエル嬢のおかげで元気だ。実は、その…聞きたいことがあってな…」
「はい!何でしょう?」
「収穫祭は…誰かと行くのか?」
「いえ、今のところは1人で回る予定ですが?」
「そうか、もし良ければ何だが、一緒に行かないか?」
え?!驚きすぎて声も出なかった。私と?ヴィンス様が?
「わ、私でいいんですか?」
「ああ、ノエル嬢がいい。もちろん無理にとは言わないさ」
そう言ってヴィンス様は優しく微笑んだ。その笑顔に胸がドキドキと高鳴る。顔に熱が集まる感覚がする。
「私でよければ…喜んで」
何とか声を絞り出して頷くと、ヴィンス様は破顔した。
「よかった、ありがとう。当日は女子寮の門まで迎えに行く。時間はいつ頃がいい?」
「い、いつでも大丈夫です」
「なら…昼からでも大丈夫か?食べ歩きも祭ならではだろう?」
「はい!じゃあそれで。楽しみです」
「俺もだ。それでは失礼する。研究頑張ってくれ」
そう言うと、ヴィンス様は出て行った。
さっきやっと冷めた顔がまた熱い。確信を得れるほど前世の恋愛経験値は高くないし、今世に至ってはゼロ。だけど、私って…ヴィンス様のこと好きなのかな…?
研究室まで走って戻ってきたあと、手の甲にある契約印に触れグレンを呼び、そのもふもふな羽毛に顔を埋める。不思議そうな顔をしながら受け入れてくれた。優しい。
本当に、リーゼとミリアが変なこと言うから…そもそも私は平民でヴィンス様は貴族。越えられない身分差があるし、貴族の養子になったとしても血筋が変わるわけではないのでご両親も嫌なはず。
私自身、ヴィンス様をどう思ってるのかはわからない。けど、彼がいつか身分に相応しい令嬢と結婚することを思うと、少し胸が痛む。
「研究しよ!」
前回の発表会ではまだ一般へ普及させるには使えなさすぎる。もっと効果を上げて作り方も簡素にしなければ。
頬を叩いて気合いを入れ直す。
ーコンコン
「?はーい」
ドアを開けると、ヴィンス様が立っていた。
「ヴィ、ヴィンス様?!とりあえず中へどうぞ!」
中へ招いて向かい合ってソファに座る。
「急にすまない。今大丈夫か?すぐに済む」
「は、はい!どうかしました?セロに何かありました?」
「いや、セロはノエル嬢のおかげで元気だ。実は、その…聞きたいことがあってな…」
「はい!何でしょう?」
「収穫祭は…誰かと行くのか?」
「いえ、今のところは1人で回る予定ですが?」
「そうか、もし良ければ何だが、一緒に行かないか?」
え?!驚きすぎて声も出なかった。私と?ヴィンス様が?
「わ、私でいいんですか?」
「ああ、ノエル嬢がいい。もちろん無理にとは言わないさ」
そう言ってヴィンス様は優しく微笑んだ。その笑顔に胸がドキドキと高鳴る。顔に熱が集まる感覚がする。
「私でよければ…喜んで」
何とか声を絞り出して頷くと、ヴィンス様は破顔した。
「よかった、ありがとう。当日は女子寮の門まで迎えに行く。時間はいつ頃がいい?」
「い、いつでも大丈夫です」
「なら…昼からでも大丈夫か?食べ歩きも祭ならではだろう?」
「はい!じゃあそれで。楽しみです」
「俺もだ。それでは失礼する。研究頑張ってくれ」
そう言うと、ヴィンス様は出て行った。
さっきやっと冷めた顔がまた熱い。確信を得れるほど前世の恋愛経験値は高くないし、今世に至ってはゼロ。だけど、私って…ヴィンス様のこと好きなのかな…?
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