20 / 60
お使い
しおりを挟む「アイーシャ。調味料の残りが少ないから買いに行って来てって。」
「わかった、行って来る。ダイン、お使い行くよ~。」
「わかった。ちょっと待っとけ。」
アイーシャはお使いを頼まれると、ダインを呼ぶ。
「ダイン」とは、ガッシュとスザンヌが「大腕」につけた名前だ。
名前がないと、呼ぶ時や頼みを聞いてもらう時に面倒だったらしい。
ダインは自分がしていた仕事を中断し、アイーシャのお使いについていく準備をした。
時間はお昼を超え、太陽は下がり始めている。
「できたぞ。行くか。」
「じゃ、出発!」
二人での行動は普通となった。
アイーシャが何かを頼まれれば、ダインも基本的についていく。
一度行方不明になった。
そう言ったこともあり、アイーシャには一人での行動は避けて欲しい両親の思いがあった。
ということで、ダインはアイーシャに万が一がないように。
一緒についていくお目付役だ。
「あ、オリバー。」
「お、アイーシャじゃん。...おっちゃんも、こんにちは。」
ダインも慣れてきた村の中央通りを歩くと、アイーシャの友達がいた。
隠れんぼが得意なオリバーだった。
彼は強面のダインが怖いのか。
彼にはまともに話仕掛けることができない。
オリバーももお使いの途中なのか。
腰には小銭入れの布袋と、手には荷物を持っている。
「オリバーもお使い?」
「うん。最近危ない噂が多いからあまり遊ばせてくれないから、手伝いばっかりで大変だよ。」
「私の所もそうなの。ダインがきてからはちょっと楽だけど。」
「お前の所の宿はでかいからな。おっちゃんとおばちゃんと、一人増えた今が丁度いいんじゃねえの?。」
「私もいるもん。」
「アイーシャは二人に比べたら、ほとんどなんもしてねぇじゃん。」
アイーシャは自分も宿で働いている一人だと主張する。
しかし、オリバーがきれいに否定。
両親に比べれば自分は確かに働いていないので、片頬を膨らましアイーシャは不満を主張した。
「ところで聞いた?村の外れで煉獄の門が開いたんだってよ。」
「それ私も知ってる!なんか怖そうだよねぇ。アル大丈夫かな?」
「本当だ。大丈夫かな?でも、アルなら簡単に逃げてそうだけどね。」
「確かに。アルは凄い魔法も使えるから大丈夫か。」
「そういやぁ、アルってどんだけ魔法はどんだけ凄いの?」
「あ、そういえば言ってなかったっけ?本当に凄いんだよ!」
オリバーと何日かぶりに会ったからか。
話している間に二人は話が弾んでしまう。
しかし、そこでダインが待ったをかける。
「久しぶりだから話したくなるのもわかるが、俺も帰ったらやり残してることと夜飯の準備を手伝わねえと。」
「確かに。俺もこれさっさと運ばないといけねぇから。」
「私もお使いの途中だったから。じゃあね。」
「おう。バイバイ。」
二人は残念そうな顔をしつつも、それぞれのお使いに戻る。
そこから少し歩き、アイーシャは普段から色々と購入しているお店に入った。
ダインはお店の外で待機する。
(店から出てくるまで待ってるこの時間が、一番平穏で幸せな時間だな。)
宿の仕事に慣れつつあるダインではあるが、忙しいことには違いない。
特に何も考えずにいいこの時間が至福に感じられた。
しかし、突然誰かから声をかけられる。
「おい「大腕」。貴様、今の今までどこをほっついていた。」
突然後ろから腕を掴まれた。
振り返れば額に大きな傷がついた30代ぐらいの男。
ダインは不思議な顔を浮かべる。
(「大腕」ってなんだ?)
男の言っている意味が分からなかった。
だが間を置いて、この男が自分を知っているような口ぶりで話してきたことに気がついた。
「俺を知っているのか?」
「あ゛ぁ?ふざけている時間はないんだ。さっさと依頼通りにっ」
「ちょっと待て」
無理やり自分の腕を掴み連れて行こうとする男を振り払った。
すると目の前の男は俺を威殺しそうな目線を向けてきた。
どういう経緯かは知らないが、俺はこいつと行動を共にしていたらしい。
だが今はアイーシャを見る必要がある。
彼女が店から出てくるまでどこにもいくつもりはなかった。
額に傷がある男が話す。
「お前、裏切ったのか?」
「だからちょっと待て。一体なんの話をしてるのか分からん。」
「...。お前、後悔するぞ。」
「あ、ちょっと待ってくれ。」
ダインの話を聞かぬまま男は建物の角を曲がった。
追いかけたが、曲がった角を見たときには男はすでに消えている。
(俺を知っている奴がいた...。)
突然の出来事に混乱していると、アイーシャが店から出てきた。
「大丈夫?」
「あ、あぁ。...俺の過去が...何か思い出せそうな気がして。まぁ、今はいい。帰るぞ。」
「うん。」
アイーシャがダインを心配する。
アイーシャもわかるように表情に混乱が出ていたのだろう。
ダインは頭の中にモヤがかかったような感覚を憶えながらその日を過ごした。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる