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第三章

二十四話 僕の行方

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 「ごめんねカウル君これは受け取れないよ」
「どうしてですか!?確かに魔道具は反応してました!」

僕はドン!と椅子から立ち上がり抗議した。

 「まぁ、これなら反応はするだろうけど」
「私は『有用な物』を所望したんだよ?」
「君達はこれが原因で色々と面倒事になったでしょ?」
「そ、それは……」
(確かにその剣を持ったセイラさんの様子は異常だったし……結果的に大怪我までした……)
「心辺りあるはずだよ。まぁ、セイラ君の様子を見れば大体察しはつくけどね」
「……セイラさんがおかしくなってしまった原因はやはりその剣にあるのですね」

ラミさんは鞘を手に取り、細めた視線を向けた。

 「うん。この剣には『破壊神の眷属』と呼べる魂……いや呪いが封じられてる」
「呪い……先ほど言った破壊神の眷属って何ですか?」
「うん。それの説明の前にまずはこの世界に存在する『二大神』について簡単に説明するね」
「この世界には結構な数の神様が存在すると言われてる」
「その中でも特に有名な神が『創造神』と『破壊神』」
「相反する二つの神をまとめて二大神って私達は呼んでる」
「そして破壊神は全てを原子に返す破壊の力そのものと呼べる存在なんだ」
「この剣には破壊神の力の一端と、持ち主を破壊神の手先にしようとする破壊神の眷属の魂が封じ込められてた」
「もしこれを振るい続けたら、破壊神の力に魅入られしまう。言葉の通り周りのものを破壊しつくす狂人にね」
「こんな危険物はさすがに受け取れないよ」
 「それじゃ……依頼は……失敗……」
(僕はもうご主人に会えない……)

ラミさんの話に僕の体はがくっと脱力し、膝から崩れ落ちた。
「セイラさんはこれからも辛い思いをして……僕はずっとラミさんと暮らす事になるの?」
「私は嬉しいけどね。彼女には悪いけど」
「そんなの……うぅ……うぅ……」
「カウル君。悲しいのは分かるけど私の前でそこまで辛そうな姿見せないでおくれ。見てるこっちも苦しくなるよ」

僕を見下ろすラミさんは不適に笑いながら僕に手を差し伸べた。

「だって……だって僕は……」
「うむぅ……しかしカウル君」
 「此処で私にとって残念な報告だ」
「実を言うとね君と話合う前から既に報酬は受け取ってるんだ」
「……へ?えぇ!?」

突然の発言に驚き茫然とする僕にラミさんはすっと宝飾された箱を持ち出した。

「カウル君。さぁ、見たまえ!」

ラミさんが仰々しく箱から取り出したものは……一輪の花でした。
天使の羽のように何処までも白く、穏やかな気持ちにさせる。何処かで見た……花。

「これは『神聖樹の花』と言ってとても貴重な物なんだよ」
「神聖樹の……花」

記憶がだんだんと蘇る。光る世界。一面の花畑。天へ伸びる巨木……。

「これを使用した薬はあらゆる怪我や病気、果ては生物に付与された呪いも払う最強の万能薬になるのさ!」
「で、でも僕そんなの持ってきてません」
「いや、戻ってきた君の体にくっついてたよ」

視界を遮った人影。手の中でふわふわと踊る花。

「本当に君達は素晴らしいよ!」
「神域指定地を探索し、こんな素晴らしいアイテムを持ち帰るなんて」
「文句無しの合格!依頼達成だ!」
「対価を払ったカウル君は此処での自由と希望を手入れたのさ」

その言葉が真っ白な希望の光となって僕の感情を包み込んだ。

「僕は自由……あぁ、良かった……」
(やりましたセイラさん……ご主人、元の世界へ帰る一歩を踏みだせたよ)

困難を乗り越えた歓喜の涙が頬を流れた。

 カツン、カツン。

その時ツリーハウスへ繋がる階段を上がる足音が響いた。
そしてゆっくりと玄関の扉が開いた。

 「神域指定地の深部に入れたのならやはりお前は……」
「『本物』だったな」

其処には僕の知らない人が立ってた。
白を基調とした清らかなドレスを纏った女性はまるで神社の巫女様を連想させた。
しかし彼女が放つ気配は僕の心を否応なくざらつかせ、見た目とは真逆の存在だと本能が警告する。

「カウルよ。私と一緒に来てもらうぞ」

そして僕の前に立った女性は高々に仰々しく傲慢に言い放った。

第三章 完

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