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第三章

十七話 探索準備

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 「今から向かう神域指定地は薄暗い雲に覆われた、砂漠に飲まれた廃墟群って感じの場所だから色々と物が要るね」

そう言ってラミさんは奥の部屋から様々な衣服や道具を持ってきました。

 「まずこれ、全身を砂埃から守るローブ。これは必須」

ばさっとローブを広げるラミさんの横で、道具をまじまじと見つめるセイラは考えこみながら呟きました。

「……武器は無いのか?」
「それは駄目。結界のセンサーは外部から持ち込まれた武器に反応するから」
「それに神聖な場所にそんな物騒な物を持ち込む罰当たりなんて出来ないでしょ」
「しかしそれではカウルさんを護れない」
「脅威が現れたら逃げれば良いよ。対価のダンジョンみたいに」
「簡単に言って……」
 「後は食料、救急道具と……これ」

ラミさんは僕達に二種類の魔道具を僕に手渡しました。
一つは宝石が埋め込まれたブローチ。
もう一つは中央に宝石を削り出した指針が付いた方位磁針でした。

 「ブローチは帰還用の魔道具」
「特定条件を満たすか一定時間経過後に自動で転送魔法が発動して、家の前まで君達を転送させる」
「条件は必要なアイテムを入手してる事。二人が肌で触れ合える程近距離に居る事の二つ」
「それと一定時間の自動発動も二人が一緒じゃないと起動しないからそれを踏まえて動いてね」
「これは君達にとって命綱だから絶対に無くさない事。良いね」

 その話にセイラさんが不満そうな顔で質問をしました。

「危機的な状況になったら任意で転送魔法を発動出来ないのか?」

その問にラミさんはだめだめと首を横に振った。

「元々転送魔法は私専用に開発した特別な魔法なんだ」
「だから魔法に関する情報漏洩防止の為、他人に発動権を渡さない仕組みにしてる」
「そう言う訳だからセイラ君、精一杯彼女の盾になりなさい」

 そう言うとラミさんはもう一つの魔道具の説明をはじめた。

「こっちは簡単に言うとアイテム発見機」
「宝石の針が光って方向を指し示すから、それを頼りに進めば相応のアイテムがあるはずだよ」
「すごい魔道具ばかりですね」
「ふふ、これだけ便利な物があれば行ける気がするだろう」

 「それと道具ついでにセイラ君。それは置いていきなさい」

ラミさんが指差したのはセイラさんが腰に下げてる聖剣を収めてた鞘でした。

「結界のセンサーは鞘も武器の一部と認識されるからね」

その助言にセイラさんは顔を曇らせ明らかな難色を示しました。

「これは私に残されたリフル様との繋がりだ。此処に置いていく訳には行かない」
「……ならちょっと待ってて」

そう言ってラミさんは奥の部屋へ行き、大きな箱を持って居間に戻ってきた。

「よいしょっと」

どん、と机に置いた箱の中には、工具や様々な色をした鉱物、金属のアクセサリーが入ってました。

「持ち込みたいなら魔法が施された装飾品で鞘を改造するけど良いかい?」
「駄目に決まってるだろ!」
「まぁまぁ、話を聞いて」
「鞘には聖王女の加護付与されてる」
「それを飛躍させ邪気を払うタリスマンにすれば、道中の安全に役立つと思うよ」
「勿論依頼が完了した後は元の状態に戻すからさ」
「くう、そうか……なら頼む」

セイラさんはぐっと顔に力を込め、悩みながらラミさんに許可を出しました。

「うん、それじゃ少し待ってね」

ラミさんはささっと手際良く加工した鉱石や金属を鞘に取り付けた。

「はい完成。武器として振り回しちゃ駄目だよ」
「そんな事するか!……だがこれで離れずにすむ」

受け取った鞘を装着したセイラさんは装飾品で飾られた鞘に触れながら呟きました。

 「ラミさんいじわる言う事もありますけど、僕達の為に色々とやってくれるのですね」
「ふふ、勿論さ……でもね」

ラミさんは此方を振り向いた。

「カウル君は直過ぎるから言っちゃうけど」
「私は欲深い魔女だって覚えておいてね」

そう何処か冷たい笑顔で言った。

 準備を整えた僕達は屋外に描かれた魔法陣の上に居た。

「それじゃ今から転送魔法で向こうに送るから、心の準備は良いかい?」
「頼む」
「よろしくお願いします」
「良し……それじゃいってらっしゃい!」

ラミさんが転送魔法を発動すると目の前が溢れ出す光で真っ白になりました。

(この景色……あの時と同じだ)

そう思った僕の視界は再び滲むように色づき始めた。

次回 『砂の異界』
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