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第一章

三話 剣と魔法の異世界

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「え!?いきなり助けてって言われても……」
「は!――ごめんなさい、私先走って……」

困惑する僕を見たセイラさんは我に返ると再び頭を下げました。

「頭を上げて下さい……セイラさんは僕に何をしてもらいたいのですか?」
「その、いや……気にしないで」

気まずそうな表情を浮かべながらセイラさんは先ほどの言動をはぐらかしました。

(う~んそう言われてもな)
(切羽詰まってるって印象だし……でも聞かれたくなさそうな事を詮索するのは失礼だよね)

「そうですか……えっと、あ!そうだ」
「セイラさん聞きたい事があるのすが、此処は一体どこなんですか?」
「…………」

顔を上げたセイラさん。
その顔に自責の念を映しながら僕の質問に答えました。

「此処は……対価のダンジョンだ」
「対価の……ダンジョン?」

(それってまるで……)

「カウルさんは自身に起きた異変に薄々気づいると思いますが……」
「この世界は貴方が居た世界とは別の世界です」
「!!!!」
「そして私が対価を捧げて……」
「貴方を召喚しました」

(嘘!?……本当にゲームやアニメみたいな出来事に僕巻き込まれたの!?)

「詳しく教えて下さい!」


僕は自身が置かれてる状況を知る為、セイラさんからこの世界の事について説明を受けました。
そして彼女の話を一言にまとめるのなら、この世界は剣と魔法のファンタジーらしいです。

「……じゃあ僕が今居る此処は本当に異世界なんだ」

あまりにも非現実的な事に呆然とする僕に対しセイラさんは複雑な顔をしてました。

「カウルさんもし出せるのなら貴方のステータスカードを見せて下さい」
「ステータスカード……説明の中にあった自身の能力が書いてるカードの事?」
「そう、ステータスカードには個人が習得してるスキルや魔術が記載されてます」
「カウルさん見てて」

そう言いながら彼女は手を開きました。
すると何も無い所からカードサイズの装飾された金属板が現れました。

「おぉ!これがステータスカードですか!」
「今は何も書いてないけど……どう?」

セイラさんが念じるとカードに文字が現れました。

「すごい!文章が出てきました!」
「これで他者に習得したスキルや魔法を見せる事が出来るの」
「カウルさんもやってみて」
「う、うん」

僕もセイラさんをまねて、手のひらを開いた。

「カードは自身の一部。自身の中にそれがある事を感じない?」
「えっと……あぁ!」

意識してみると僕の中にそれが確かにある事を感じました。
もし体内に金属板があったら大変な事になってるはずなのに、まるでそれが当たり前の様に感じました。
とても不思議な感覚です。

「それをポケットから取り出す様なイメージをしてみて」
「うん……」

すると僕の手のひらからセイラさんと同じカードが出現しました。

「すごい本当に出てきた!」
「それに貴方の能力が書いてあるはず、どう何が書いてあるの?」
「えっと……」

僕はカードに書かれた内容を確認しセイラさんに伝えました。

人間化。
人間の姿になれる。

二人乗り開放。
原動機付自転車形態の移動に際し二人以上の人を乗せる事が可能になる。

ヘルメット未着用可。
搭乗者のヘルメット着用義務を解除。

二段階右折解除。
原動機付自転車形態の移動に際し右折の制限が無くなる。

速度制限解除。
原動機付自転車形態の移動に際し速度制限が無くなる。

マ※※※ブ※※ト。
※※※※※※※※。

※※変※。
※※※※※※※※。

※※※し※※手。
※※※※※※※※。

※※主※※※。
※※※※※※※※。


「一部読めない所があるけどこれが僕のスキルみたいです……え!?」

それを聞いていたセイラさんの表情は凍り付き、青ざめながら額に汗を滲ませてました。

「……カウルさん『原動機付自転車』って乗り物?」
「はい。自転車にエンジンを付けた物で……待ってエンジンが無いのか」
「エンジンは燃料を燃やして、そこから出るエネルギーを回転する力に変換する装置です」
「それを搭載して車輪を回す自転車を原動機付自転車って言います」
「……つまり本来の貴方は……本当にただの乗り物って事?」
「そうなんですけど、今は『人間化』のスキルでこの姿になってるみたいです」
「これだけなの?――お願い私に見せて!」
「ど、どうぞ」

セイラさんは渡されたカートを隈なく凝視してました。

「そんな……なんの為に『あれ』を対価にして……」

振るえる声で呟くセイラさん。

カラン……。

「あ――」

よほどのショックを受けたのか、脱力した指からカードがぽろりと落ちました。
そしてその場でがっくりと力なく肩を落としうつむいてしまった。
僕は慌ててカード拾いました。
そしてセイラさんに一番聞きたい質問を投げかけました。

「セイラさん僕聞きたい事が……」
「ごめんなさい……私……」

彼女は消えそうな小さな声呟くと、僕の質問を遮りました。

「え、まって――あのセイラさん」

しかしセイラさんは俯き黙り込んでしまった。

(えぇ、どうしよう……僕の能力そんなに期待外れだったの?……)

彼女の様子を見た僕の心はまるで重量オーバーの荷物を載せられた様な重く苦しい気持ちになりました。
そして僕と彼女の間に嫌な空気が漂い、刻々と時間だけが過ぎて行きました

(はぁ……こんな事になるなら先に聞いとけよかった)
(……僕元の世界に帰れるのかな?)

「ご主人に……会いたいよ」


次回 『人の体』
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