転生異世界

転生異世界

　屋上から飛び降りた。

　死が迫る寸前、トラックに跳ねられ無事死亡。

　眩い光に照らされ、神様が現れる。

「死んでしまうとは何事か。仕方ない、異世界へ転生させてやろう」


　次に目を覚ますと、そこは知らない世界。

「まあ、あなたこの世界の住人ではないわね」

　とびきりの美少女が自分の現状を理解してくれて、この世界のことをお世話してくれる。

　他のみんなも優しく受け入れてくれた。


　あっという間に馴染んだ異世界は文明に乏しい。

　ライターで火を点ければ魔法使いだと騒がれ、テコの原理で重い荷物を持ち上げれば豪腕だと讃えられる。

　収穫したものを保存食として残しておけば飢えを凌げる、畑を分割して二毛作を行えば年間を通じて様々な作物が食べられると、生活の改善案はいくらでも出てきた。

　驚くほど事は上手く進み、自分の知識を披露すればその通りに世界は発展する。


　気がつけば元居た世界と遜色ない文明レベルの異世界が作り出され、すっかり居心地良く暮らしていた。

「これ以上は何も望まない。ここは理想の世界だ」

「もう、あなたが必要とするべきものはありませんか」

「十分だ。ここは桃源郷さ」









「では、あなたも必要ありません」


　グサリ、と。

　え。

　なんで――





「この世界は栄枯盛衰を繰り返してきました。あなたのような異世界人を定期的に招いて」


「その異世界人が持つ文明を享受してこの世界は繁栄してきました」


「しかし、異世界人は発展途上でいつも満足してしまう」


「停滞を理想として成長を望まない。そうなればもう不要だ」


「異世界人の追放とともに文明は衰退し、元通り」


「だから新たな異世界人を呼んで、別の文明を築くの」


「この世界はその繰り返し」





「あなたが読んでいるその作品の成れの果てがこの世界」


「永遠に続く異世界なんて存在しない」


「『○○異世界で××に!?』も『△△転生』も、同じセットで作られた映像作品のようなもの」


「じゃあね、理想の現世にお戻り」