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第6章 迷宮攻略
第百七十七話
しおりを挟む深夜。
僕はみんなにバレないようにホームを抜け出した。
「どちらに行かれるのですか?」
「!?」
背後から声をかけられた僕は、びっくりしすぎてフリーズしてしまった。
恐る恐る振り返ると、そこにいたのはさくらだった。
「えっと……ちょっと散歩に」
「ではお供いたします」
「え、いや、それはちょっと……」
「お供いたします」
「…………はい」
迫力がある笑顔で迫られた僕は、そう頷くことしかできなかった……。
数時間前。
僕は通知を見て色々悩んだ結果、とりあえず行ってみようと思った。
一人で行こうとしたのにはわけがある。
デスペナが実装された今、ほかのメンバーに迷惑がかかるのと、色んな職業を並行している僕がもし死んだらデスペナはどうなるのか検証したかった。
どんな結果になっても僕は一~二回死んでもそんなにデメリットは少ないと思ったし、アリシアのことが気になっていたというのもある。
ぶっちゃけあの迷宮はクリアできないと思っているけど、今はできないというだけだ。
準備を怠らず対策をきちんと練ればいつかクリアできると思う。
でもそれは僕はもちろんほかのメンバー達にも迷惑がかかる。
多大な代償がかかるなら安全マージンを取りつつ取り掛かりたい。
そうすればいつかこの特殊クエストはクリアできると信じている。
クエスト更新に関して一応調べてみたけど、アリシアのクエストは特に期限が設定されていないのに更新しないと消去されるとなっていた。
これはクエストを放置していたからそうなったと推測される。
なら、とりあえずあの迷宮にもう一回潜れば更新できるかもしれないと僕は思い至った。
ソロで進んだら確実に死ぬだろうけど僕一人だけなら問題ないと判断し、みんなに内緒で行こうとしたんだけど……
僕の隣で寄り添うようについてくるさくらのせいで、それが困難になってしまった。
これは日を改めるしかないか……。
「ご主人様」
ムダな散歩をやめて諦めようとしたその時、さくらが僕に話しかけてきた。
「え、なに?」
「私事で申し訳ないのですが、アリシア様の屋敷に行きたいのです」
「は?」
なんでこのタイミングでそんなこと言うの!?
心でも読んだのかって思わず勘繰ってしまう。
「ど、どうして?」
「やはりアリシア様が心配で……」
「でも、あの地下迷宮は難しいと思うよ?」
とてもじゃないけど二人じゃ無理ゲーなんですけど……。
まあ一人で行こうとしてた僕が言うのもなんだけどさ。
「そうですがどうしてもアリシア様の安否が気になって……。私一人で行ってもよろしいでしょうか?」
「え!?それはちょっと……」
と口ごもる僕はふと思った。
まさかこれは行けと言うフラグなのだろうか?
「じゃあ行ってみる?」
「よろしいのですか!?」
「あ、うん。あ、でも命だいじにで」
「かしこまりました!」
というわけで、やってまいりましたアリシアの屋敷へ。
早速転移門を潜ってアルフヘイムに向かった僕とさくらはまっすぐここにやってきた。
現場検証していた騎士達はいない。
ていうか未だに崩れたままの屋敷には人の気配がない。
アリシアのお父さんもいない感じだ。
「行きましょうご主人様」
さくらはそう言うと足早に屋敷へ向かって行った。
逸る気持ちはわかるけど大丈夫かな?いのちだいじにだよ?
僕はさくらを追いかけながら【隠蔽】スキルを発動させた。
地下に降りて迷宮に入った。
前に入った時と変わらない廃墟の街。
視界に表示されたMAPで前に通った場所はわかる。
よくよく見てみるとまだ踏破してない箇所がある。というかけっこう残ってる。
まあゾンビに追いかけられてたからじっくり探索もできなかったしね。
先を歩いていたさくらはいま僕の右隣に並んで歩いている。
「さくら、敵の気配はある?」
「いえ。今のところありません」
「そう……」
さくらの【索敵】スキルには引っかかってないとはいえ、さくらの【索敵】はそこまで熟練度が高くないから見落としてる可能性が高い。
僕の【隠蔽】スキルはそれなりに高いけどここの迷宮の魔物のレベルからしていつ見つかるか気が気じゃない。
多分前にエンカウントしたゴブリンゾンビなら、僕とさくらの二人でならなんとか倒せると思う。
でも、魔剣に呼び寄せられたあのゾンビにはまだ勝てる気がしない。
ていうかここにある宝箱は絶対取らない。
当たり外れが酷すぎるから極力リスクは負わないほうが無難な気がする。
うーん……クエスト更新したっぽいしもう帰りたいんだけどなあ……。
「ご主人様以前通った道なりに進みますか?」
さくらがやる気で非常に帰りづらい……。
「うーん……とりあえず他にも降りれる場所がないか、一応この階層を探索してみようよ」
「……かしこまりました」
僕のほうに身体を向け、スカートの端をつまんでカーテシーをするさくら。
僕はそれを横目に適当に探索してキリのいいところで帰りたいなと思った。
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