待ちに待ったVRMMO!でもコミュ障な僕はぼっちでプレイしています…

はにゃ

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第5章 抗争

第百六十七話

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 いつの間にか二層に辿り着くという状況……。
 追われていたしみんなの後についていくので精一杯だった。
 ぶっちゃけどういうルートで来たのかすら覚えていないw

「本当に二層?」

 迷宮にしては短くない?
 視界のMAPを確認して本当に僕は二層なのだと理解した。
 
 今いるところは地下道のような洞窟の中。
 ひび割れた壁には所々に灯りのようなモノが浮かんでいる。
 道の幅は大体3メートルくらい。
 天井もそれくらいあって、もし戦闘が起こってもこの広さなら支障はなさそうだ。

「ルビーさん【広範囲索敵】を」
「了解しましたわ。【広範囲索敵】……えっ!?」

 ルビーさんの顔色が変わった。
 
「これはまさか阻害魔法ジャミング!?お兄様、この階層では索敵は使えないようです」
「えっ!?」

 マジか!?

「さくら、罠探知は?」
「申し訳ありませんご主人様。このジャミングの中では難しいかと(>_<)」

 罠探知も無理か……。
 え、じゃあこのまま進むの!?
 すごい気が進まないんですけど……:-(
 でも先へ進まなきゃいけないし……

「と、とりあえず、みんな慎重に進もう」

 そう言って僕は先に進むことにした。
 
 罠を警戒しながらおっかなびっくり進んでいく。
 そのせいかいつも以上に歩みが遅い。
 真っ直ぐ伸びた道はどこまでも続いている。
 ていうか長くない?
 体感だけどもう1キロ以上歩いてる気がする。
 代わり映えのない分かれ道もない道をただひたすらに歩いていると本当に前に進んでいるのかわからなくなる。
 まあ、MAPも見る限り進んでいることはたしかだ。
 
 みんな一切口をきかずに黙々と歩いている。
 警戒を怠らず歩いているのはわかるけど、どうもこの沈黙に包まれた空気は馴染めない。
 なにか喋ったほうがいいのだろうか?と不安になる。
 と言ってもなにか話題になりそうなネタは持っていないんだけどね……(自嘲)
 ヘタに話しかけてウザいヤツと思われたくないし……。

 しばらく歩いていると少し開けた場所にでた。
 ちょっとした広場かな?
 道がいくつか分かれている。
 分岐点か。どっちに行こう?
 僕はキョロキョロと視線をさまよわせながら悩む。
 
「一応聞くけど、みんなどの道がいいと思う?」
「私はファントムに任せるわ」
「…右に同じく」
「お兄様に従いますわ」
「ご主人様の思いのままに(^_-)-☆」

 聞くだけ無駄だった……。
 まあ、そう言うと思ったけどね(苦笑)
 僕は辺りを見渡す。
 道は五つか……。
 どーれにしようかな、天の神様の言うとおり、よし一番左の道にしよう。
 適当に決めた僕はみんなとともに左の道へ向かった。

 魔物と罠を警戒しながらその先を進む。
 今のところ二層に来てから魔物とのエンカウントはおろか罠にもかかっていない。
 なんか、こうもなにもないと緊張感が薄れてくる。
 でもすぐに緊張で張り詰めた。
 進む先に扉が見えたから。

 両開きの分厚い扉。
 恐る恐る扉の前まで辿り着くと、僕は後ろを振り返ってみんなのほうを見た。

「なにがあるかわからないから、一応戦闘準備を」

 そう言って僕も衝撃槍と盾をチェックして、念の為に【心眼】と【堅牢】を発動しておく。
 みんなの準備が整ったところで僕は扉に手をかけた。

「って、ここは……?」

 入った先は小さな子部屋。
 部屋の中心にはポータルがある。

「安全地帯か……」

 ほっと胸を撫で下ろす僕。

「ご主人様、あちらをご覧下さい」

 さくらの指差すほうへ目を向けるとそこには…………

『【警告】!これより先は立入禁止区域です。命が惜しければ回れ右☆』

 という立て看板があった。
 その看板の横には両開きの扉。

「どうする?」

 アーチェさんが訊ねてきた。

「も、もちろん行くよ」

 僕はそう言うと、その扉のほうへ歩を進めた。
 ここまで来たんだ。帰る選択肢はない。
 
「お供します( ^ω^ )」
「気を引き締めて参りましょう」
「ヴァイス、お願いだから余計なことしないでよ」
「…np」
「アンタそればっかり!」

 僕達は立入禁止の扉を開け、先へ進むことにした。




 代わり映えのしない通路。
 先頭にはさくらとルビーさん、その後ろに僕、そして最後尾にアーチェさんとヴァイスという隊列で進むことにした。
 ここまでの道中、ジャミングで索敵系や探知系の魔法、スキルが使えないけど、さくらとルビーさんの観察眼は僕なんかより優れていることがわかった。
 なら罠とかは2人の目というか勘?に任せて、もし敵とエンカウントしたらすぐに僕が前衛につくというスタンスを決めた。
 
 2人は油断せず慎重に歩を進めていた。
 僕は2人の後ろ姿を見惚れ…いや、眺めながらついていく。
 チラリと後ろを振り向くと、いつでも矢を放てるように番えたままのアーチェさん。
 ぼけっとアーチェさんの横を歩いているヴァイスがいた。
 ていうかヴァイスは緊張感ないね……(苦笑)

 カチッ。
 
「しまっ…」

 ドオオオン!!

 閃光。
 爆音と爆風が僕を包んだ。

「っ!?」

 あまりの衝撃に吹き飛ぶ僕。
 後ろにいたアーチェさんとヴァイスも僕にぶつかり吹き飛んでいく。
 床を転げ回った僕は全身に受けた衝撃で身体中が震えまくっている。

 一体なにが起きたの!?爆発!?

 視界の左端に表示されている僕のHPゲージが八割もなくなっていた。
 瀕死といってもいいかもしれない。
 その下に表示されているPTメンバーのHPを目にした瞬間、僕は震える身体をムリヤリ抑え込んで立ち上がった。
 僕の前にいたさくらは近くで倒れていた。
 HPは僕と同じくらい減っている。
 そしてルビーさんは爆発のあった辺りに死亡マーカーとなっていた。

「ルビーさん!」

 僕は慌てて駆け寄ろうとしたけど、まだ身体が言うことをきかない。
 走ることすらままならない僕はなんとか歩いてルビーさんの前に辿り着いた。
 ルビーさんの死亡マーカーに向かって手をかざした僕は、目を閉じて意識を集中させる。

「彼の者を死の淵より呼び起こせ……【レイズデッド】」

 目を開けると手から温かな光が放たれていた。
 光はルビーさんの死亡マーカーを包み込み、徐々に人の形を成していく。
 光が収まると傷ひとつないルビーさんの姿が現れた。
 
「大丈夫?」

 死んだのに大丈夫と訊ねるのはどうかと思うけど、僕はそう訊かずにはいられなかった。

「はいお兄様。生き返らせていただき感謝いたします」
「あ、うん、いいよ別に」
「ご主人様…( ̄^ ̄)」
「うわっ!?」

 僕のすぐ背後で恨めしそうな声を出したさくら。
 ビックリした……。急にやめてよ。
 振り返ると不満そうにほおを膨らましたさくらがいた。

「可愛いメイドを無視しないで下さいo(`ω´ )o」
「あ、ごめん……」

 ていうか、つい謝っちゃったけどなにが不満だったんだろう?
 
「ご主人様。私にも回復魔法を」
「え?あ、はい。……慈愛の光よ【ヒール】」

 言われるままにさくらに回復魔法をかけた。
 さくらのHPがみるみるうちに……とはいかず全体の二割も回復しなかった。
 やっぱ初級のヒールじゃ全快とはいかないな。
 そろそろハイヒールとか中級魔法を覚えないといけないか。

「慈愛の光、慈母の神よ……」

 なにやらさくらがぶつぶつ呟いている。
 あれ?これって詠唱?それにしては長くない?
 アトランティスの魔法詠唱って大体一章節から三章節と短くて覚えやすい配慮がなされてる。
 でもさくらがいまぶつぶつ唱えているのは長くて覚えにくそうな感じだ。

「【コンプリートヒール】」

 さくらのHPが一瞬にして全快した。

「ていうか回復魔法使えるの!?」
「はい。アリシア様にお預かりした魔法の中に回復魔法があります」
「……なら僕が回復しなくても良くない?」
「♪(´ε` )」

 明後日の方向を向いて口笛を吹くさくら。
 ……まいっか(苦笑)
 アーチェさんとヴァイスのほうを振り向くと2人とも無事のようだ。

「一体なにが起きたの?」
「申し訳ありません。私が罠にかかってしまいました……」

 申し訳なさそうに謝るルビーさん。
 
「いや、仕方ないですよ」

 探知ができない状況で頼んだ僕が悪い。
 やっぱ目視じゃ無理があるか。
 完全に僕のミスだ。
 どうしよう……?これ以上進むのは危険な気が………
 
「…俺に策がある」

 悩む僕にヴァイスがそう言ってきた。

「え、なに?」
「…【サモンナイト】」

 ヴァイスがデュラハンを召喚した。

「…コイツを先行させて罠を探させる」
「デュラハンを囮にするってこと?」

 ヴァイスがコクリと頷いた。
 なるほど。デュラハンを先にいかせて罠をわざと起動させるのか。
 僕はヴァイスの策を採用することにした。

 さらに召喚した二体のデュラハンが床を踏みならし壁を叩きながら進んでいる。
 僕達は巻き込まれないように離れてついていった。

 ドオオオン!

 デュラハンの足元が爆発した。
 隣にいたデュラハンも巻き添えを喰らってやられてしまった。
 
「…うんたらたった~【サモンナイト】×2」

 再びデュラハンを召喚するヴァイス。
 やられたら召喚し補充していく。
 うん、これは楽だw
 もっと早くこれをやれば良かったな。
 こうして僕達は先へ進み、ある小部屋に辿り着いた。


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