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第4章 NPC
第百四十二話
しおりを挟むカイが死んだと思った瞬間、僕の頭の中が真っ白になった。
「あああああああああ!!!」
【突撃】
前方に突き進む突進系の攻撃スキルで一気に距離を詰める僕。
怒りに身を任せた僕の攻撃はキングタイガーの前足に当たった。
硬い前足に当たった槍から痺れるような衝撃と技後硬直が僕を襲う。
一瞬動けない自分の身体を疎ましく感じながらも、動けるようになった僕はキングタイガーに向かって衝撃槍を力任せに繰り出した。
でも、硬質な金属音が鳴り響くだけでキングタイガーに傷を負わせることもできていない。
「っ!?」
全身を駆け抜ける衝撃とともに、気がつけば僕は宙に浮いていた。
地面に弾むように落ちる僕。
なんだ…!?なにが起きた…?
僕はふらつく身体にムチ打って立ち上がった。
満タンだったHPが大幅に削れ瀕死間近まで下がっている。
キングタイガーの攻撃というか、暴れるキングタイガーのどこかに当たって吹き飛ばされたのか?
さっきヴァイスにかけてもらったリジェネの効果でじわじわと僕のHPは回復している。
ヴァイスのおかげで助かったって感じかな。
「おい大丈夫か!」
「うん、なんとか……って、えええ!?」
こちらに駆け寄って声をかけてきたカイを見て、僕は驚きの声をあげてしまった。
「ちょっと待って、なんで生きてるの!?」
たしかにカイのHPが全損したのを僕は目にした。
でも、目の前にいるカイのHPは満タンのフルだ。
「フェニックスの特殊効果だよ」
僕の疑問に答えてくれたのはアリサさんだった。
いつの間にかこちらに来ていたアリサさんは両手に刀を携えて僕の横に並んだ。
え…あ、あの、ちょっと近くないですかね…?
「フェニックスの羽はパーティメンバーに自動蘇生魔法の効果を付与するの。だから一度だけならすぐに生き返る」
ああ、そういうことね。
視界の片隅に表示されているPTメンバーのHPゲージに見たことのないアイコンが付いてるけど、これはリレイズのアイコンか。
他のメンバーにはまだ付いてるけど、カイのHPゲージに付いていたアイコンが消えている。
てっきり死んだかと思ってびっくりしちゃったよ…(苦笑)
ていうか………
「あの、動いても大丈夫なんですか?」
「うん、しばらくゲージ上がらないしこんな状況だもの、私も戦わないと」
「つうか、どうするよ?マジで手に負えねえぞあのトラ…」
カイの言う通りキングタイガーが強すぎる。
今も暴れて街を破壊しながらのたうちまわっていた。
そのせいで街が壊れまくっている。
少なくても南は壊滅かな………
「ファントム!」
アルとアーチェさん、そしてスカーレットさん達と騎士達がこちらにやってきた。
「無事みたいね」
「ええまあ…」
合流したスカーレットさんに曖昧に頷く僕。
無事っていうか一回死んだけどねw
「隊長指示を願います!」
「えっと………」
騎士の人に言われた僕は返答に困った。
そんなこと言われてもあんなチートじみたボスどうやって撃退すればいいの?
「つうか、近づくのは危険ね」
「そうだな。ここは遠距離からの攻撃で削っていくしかないだろ?」
スカーレットさんとカイがそう言うと他のみんなも口を開いた。
「…魔法、若しくは壁にあるバリスタで攻撃」
「あと弓スキルで中距離から遠距離攻撃のスキルも手よ。あたしたちエルフは弓が得意だし」
「攻撃力上昇の支援魔法もかけたほうがいいと思うよ」
「それと回復アイテムとか魔法で援護したほうがいいと思います!」
「私は遠距離攻撃のスキル持ってないんだけど…」
「のんちゃんはタンクだから頑張ってタゲとれば?」
「それって私に死ねって言ってるの?」
みんなはそれぞれの意見を出し合い作戦に組み込んでいく。
僕はそれを黙って聞いていることしかできなかった。
だって、口を挟む隙間というかタイミングが掴めなかったし、言い出しづらい感じだったし………
そんなこんなで作戦は決まった。
遠距離攻撃(魔法やスキル)のある人はアタッカーとして距離をとってキングタイガーにひたすら攻撃。
攻撃の手段がない人は城壁にあるバリスタで攻撃。
あぶれた人達はMP回復のエーテル水などを持って、アタッカーのMPがきれそうだったらそれを使って回復させる。
あとキングタイガーの攻撃を喰らってダメージを受けたり死んだりした場合に備えてヒーラーのPTをいくつか編成しておく。
そんな感じの作戦を立てた僕達は各部隊に連絡し編成を組み直すようにしてもらった。
騎士団長がすぐOKしてくれたので特に揉めることなくPTが組み直された。
僕達以外のPCも特に揉めることなくそれぞれができそうな役割についてくれた。
「って、あれ…?」
態勢を整えていざ!という時に、キングタイガーが壊した城壁から外に出て行ってしまった。
「………………:-()」
『戦闘が終了しました!』
『ファントムはEXPを50000獲得しました!』
etc…
視界にシステムメッセージが表示され流れていく。
え………?
あまりに突然の終わりかたに呆然とする僕。
スカーレットさんをはじめとした他のPCも呆然と去っていったキングタイガーを見送っていた。
「勝った…勝ったぞおおおおおお!!!」
騎士の一人がそう叫ぶと、他の騎士達も歓声をあげて拳や武器を天に掲げた。
勝利の雄叫びをあげる騎士の中で、僕は胸の内で「えええええええええ!?」と叫んでいた。
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