138 / 186
第4章 NPC
第百三十一話
しおりを挟むゲームで徹夜してしまった早朝。
「また来てよ?絶対来てよ?約束だからね!」
「ああうん、わかったから。じゃあね」
名残り惜しそうに念を押すアリシアが玄関の隙間から顔を覗かせていた。
僕は軽く手を挙げ洋館を後にする。
まだ背中に視線を感じる。
突き刺すような視線を背中に感じまくった僕は足早にこの場を後にした。
「ふわあぁぁ…」
一通りの少ない道で、口をめいいっぱい開けて盛大な欠伸をする僕。
それにしても疲れた。
まさかVRMMO RPGやってて、昔の格ゲーで徹夜するとは思ってもみなかった。
まあ、そのおかげでクエスト報酬がけっこういいモノをゲットできた。
帰り際アリシアから報酬として部屋にある本を三冊もらえることになった。
漫画やラノベばかりだったけど、中には稀少な魔導書や転職の本があったからとりあえず【レイズデッド】の魔導書二冊と【衝撃槍作製カタログ】をもらった。
他にも欲しい本があったから、またここに来てもいいかと考えている。
約束もしたしね。
「とりあえず今日はこのまま転移門まで行って落ちよう…」
さすがにもう眠くて仕方がない。
一旦寝て、食事済ましたらインするか…
「あれ?今日は何日だっけ?」
なにか忘れてる気がする………?
それがなにかも思い出せないまま、僕は転移門からログアウトして、そのまま現実で眠りについてしまった………zzz
◇
「起きなさーい!」
とてつもない衝撃を受けて僕は目を覚ました。
く、苦しい…!?
それもそのはず僕の上には母さんが馬乗りになっていた。
「なに?」
「なにって、今日授業でしょ!?いつまで寝てるのよ」
「えっ!?」
正味五分も寝ていない僕は急いで身支度をし、自宅を出るはめになった。
僕の通うことになった通信制の高校は都内にある。
そこまで電車で通学するんだけど、案の定電車は満員で、眠る間も無く電車に揺られていくことになってしまった。
僕は編入組で本当なら三年生なんだけど、引きこもりが長かったみたいで単位が二年の中途までしか取れてないらしく、三年生の編入ではなく二年生からの中途編入となっていた。
まあ、ダイブオンの資金集めのバイトやらその後の引きニートゲーマーの日々を考えると当然の結果だと思う…(泣笑)
ていうか、それならなんで三年になれたんだ?という疑問が湧くが、恐らくその理由は僕の知らない力が動いたのだろうwww
それはさておき、僕の通う通信制は単位習得型でレポートは期限内(大体一~二週間)にネットを経由して送れる。
アトランティスでもネットに繋いでゲームとか動画などのサイトが使えるから、インしてても勉強できてレポートを送れるのが利点だ。
でも月に三~四回あるスクーリングは未だに慣れない。
普通に授業がある日もあれば勉強でわからないところを先生に訊ねる個別面談みたいな日もある。
ちなみに今日は普通の授業がある日だ。
人見知りな僕は、それが面倒くさくてイヤになってくる…
高校に着くとまず【出校カード】とやらを書かなければいけない。
氏名と入学年度を記入して提出。
ここは全日制の教室を借りて授業を行うので、選択した科目を受けに教室を移動する。
クラス分けがないので、毎回手書きの名札を胸につけて名前を覚えてもらうことになっている。
ぶっちゃけ誰とも必要以上に関わる気はないので名前を覚える気もないし、覚えられてほしくもない。
教室に着いた僕は、一番後ろの窓際の席に向かった。
席は自由だからね。どうせならいい場所を狙わないと。
ていうか今日は眠いからずっと寝てそうな気がするwww
席についた僕は、欠伸を噛み殺しながらカバンから教科書を出していると
「………(じー)」
前の席に幼稚園児のように小さい女の子が席についていた。
なんだこの幼女は………(汗)
こ、この人もクラスメイトかな?
それにしては小さすぎる気が………ていうか、まんま幼女だよね?
さすがに通信制に通える年代じゃないだろう。
「ママ、あゆもべんきょ~すゆ」
「はいはい、わかったから大人しくしててね」
隣の席の女子、ていうか女性が幼女の頭を撫でながら、言い聞かせるように言っていた。
美人だけど若いな。二十歳くらい?もしかしてこの子のお母さん???
ちらりと周りを見回すと僕と同じ十代の子の他に、四十代のおばさん、六十代のおじいちゃんもいるし、子連れで通うそういう人もいるのだろう。
改めて見ると色んな人がいるよな…でも、前に来た時より人が少ない気がする…?
「ま、どうでもいいか…」
むしろ人が少ない方が個人的に助かるし。
僕は机に突っ伏して寝る体勢に入った。
すみません…一時間目だけでいいんで寝かしてください…zzz
眠気に抗えなかった僕はそのまま眠りに………
「ママ~、うしろのおにいちゃんねてるよ~」
「コラあゆ、静かにしてなさい」
そっと顔を上げると幼女と目があった。
「あ、ママおにいちゃんおきた」
「あ、ごめんね。うちの子がうるさくて」
「いえいえ…」
「ほらあゆ、お兄ちゃんは仕事で疲れてるんだから寝かせてあげなさい」
と言って、幼女、あゆちゃんか。あゆちゃんを前に向かせる若いお母さん。
ていうかお母さん、僕別に仕事で疲れてるわけじゃないんですけど…(苦笑)
いや、一応依頼という仕事を徹夜でやってたから間違いではないか。
実質ゲームしてただけだけどね!www
そんなしょうもないことを思いつつ、僕のまぶたが重く落ちていく。
そして、心地よい眠りについていった………
一時間目を無駄にして睡眠をとった僕は、ある程度回復した。
まだ寝足りない感があるけど、我慢できないほどじゃない。
僕のようなゲーマーは短時間の睡眠で復活できるスキルを有しているからねw
「これでまだ戦える…」
フッ…と、そう一人呟いた僕は、次の授業を確認。
次はどこの教室に移動だ?
荷物を手早くまとめて次の教室に出ようとしたその時、急に現れた人影にぶつかった。
「痛っ!?」
「あ!ごめん…」
よろめきつつも、ぶつかってきた人を見ると、その人は前の席にいた若いお母さんだった。
「ホントごめんね」
手を合わせて謝る若いお母さん。
「いや、大丈夫です…」
「あ、そうだ。あゆ…うちの子見なかった?」
「いえ、見てないですけど…」
「そっか…ありがと、見かけたら教えて」
若いお母さんはそう言うと、教室に入り中を見回しながら「あゆ、どこにいるの?」と呼んでいた。
もしかしなくても、あの幼女がいなくなったのか…?
僕は廊下に出ると次の教室に向かって歩き出した。
途中で見かけたら教えてあげようと思いながら。
0
お気に入りに追加
685
あなたにおすすめの小説
仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
【短編】妹は恋愛ドラマの主役の素質があるようなので姉の私は妹を主人公に小説を書くことにした
藤也いらいち
恋愛
恋愛ドラマの主役になれる素質が妹にはある。
かわいくて、明るく優しい妹は恋に学業に大忙し!!
とはならなかった。
恋愛に全く興味のない妹は、姉の私の思惑とは裏腹にゴーイングマイウェイ!絵の道を突き進む!
妹は恋愛ドラマの主役にならないらしいが素質は十分、彼女の周りにはキャラ立ちした多種多様のイケメンが集まって来る。
もったいない!私が妹を主人公にしたIFの世界のラブストーリーを書いてしまおう!
妹の周りに現れるイケメンたちよ!私の小説のために劇的にフラれてくれ!
父の浮気相手は私の親友でした。
木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢であるティセリアは、父の横暴に対して怒りを覚えていた。
彼は、妻であるティセリアの母を邪険に扱っていたのだ。
しかしそれでも、自分に対しては真っ当に父親として接してくれる彼に対して、ティセリアは複雑な思いを抱いていた。
そんな彼女が悩みを唯一打ち明けられるのは、親友であるイルーネだけだった。
その友情は、大切にしなければならない。ティセリアは日頃からそのように思っていたのである。
だが、そんな彼女の思いは一瞬で打ち砕かれることになった。
その親友は、あろうことかティセリアの父親と関係を持っていたのだ。
それによって、ティセリアの中で二人に対する情は崩れ去った。彼女にとっては、最早どちらも自身を裏切った人達でしかなくなっていたのだ。
Select Life Online~最後にゲームをはじめた出遅れ組
瑞多美音
SF
福引の景品が発売分最後のパッケージであると運営が認め話題になっているVRMMOゲームをたまたま手に入れた少女は……
「はあ、農業って結構重労働なんだ……筋力が足りないからなかなか進まないよー」※ STRにポイントを振れば解決することを思いつきません、根性で頑張ります。
「なんか、はじまりの街なのに外のモンスター強すぎだよね?めっちゃ、死に戻るんだけど……わたし弱すぎ?」※ここははじまりの街ではありません。
「裁縫かぁ。布……あ、畑で綿を育てて布を作ろう!」※布を売っていることを知りません。布から用意するものと思い込んでいます。
リアルラックが高いのに自分はついてないと思っている高山由莉奈(たかやまゆりな)。ついていないなーと言いつつ、ゲームのことを知らないままのんびり楽しくマイペースに過ごしていきます。
そのうち、STRにポイントを振れば解決することや布のこと、自身がどの街にいるか知り大変驚きますが、それでもマイペースは変わらず……どこかで話題になるかも?しれないそんな少女の物語です。
出遅れ組と言っていますが主人公はまったく気にしていません。
○*○*○*○*○*○*○*○*○*○*○
※VRMMO物ですが、作者はゲーム物執筆初心者です。つたない文章ではありますが広いお心で読んで頂けたら幸いです。
※1話約2000〜3000字程度です。時々長かったり短い話もあるかもしれません。
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
旦那様はチョロい方でした
白野佑奈
恋愛
転生先はすでに何年も前にハーレムエンドしたゲームの中。
そしてモブの私に紹介されたのは、ヒロインに惚れまくりの攻略者の一人。
ええ…嫌なんですけど。
嫌々一緒になった二人だけど、意外と旦那様は話せばわかる方…というか、いつの間にか溺愛って色々チョロすぎません?
※完結しましたので、他サイトにも掲載しております
悪役令嬢の双子の兄、妹の婿候補に貞操を奪われる
アマネ
BL
重度のシスコンである主人公、ロジェは、日に日に美しさに磨きがかかる双子の妹の将来を案じ、いてもたってもいられなくなって勝手に妹の結婚相手を探すことにした。
高等部へ進学して半年後、目星をつけていた第二王子のシリルと、友人としていい感じに仲良くなるロジェ。
そろそろ妹とくっつけよう……と画策していた矢先、突然シリルからキスをされ、愛の告白までされてしまう。
甘い雰囲気に流され、シリルと完全に致してしまう直前、思わず逃げ出したロジェ。
シリルとの仲が気まずいまま参加した城の舞踏会では、可愛い可愛い妹が、クラスメイトの女子に“悪役令嬢“呼ばわりされている現場に遭遇する。
何事かと物陰からロジェが見守る中、妹はクラスメイトに嵌められ、大勢の目の前で悪女に仕立てあげられてしまう。
クラスメイトのあまりの手口にこの上ない怒りを覚えると同時に、ロジェは前世の記憶を思い出した。
そして、この世界が、前世でプレイしていた18禁乙女ゲームの世界であることに気付くのだった。
※R15、R18要素のある話に*を付けています。
悪役令嬢に転生してストーリー無視で商才が開花しましたが、恋に奥手はなおりません。
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】乙女ゲームの悪役令嬢である公爵令嬢カロリーナ・シュタールに転生した主人公。
だけど、元はといえば都会が苦手な港町生まれの田舎娘。しかも、まったくの生まれたての赤ん坊に転生してしまったため、公爵令嬢としての記憶も経験もなく、アイデンティティは完全に日本の田舎娘。
高慢で横暴で他を圧倒する美貌で学園に君臨する悪役令嬢……に、育つ訳もなく当たり障りのない〈ふつうの令嬢〉として、乙女ゲームの舞台であった王立学園へと進学。
ゲームでカロリーナが強引に婚約者にしていた第2王子とも「ちょっといい感じ」程度で特に進展はなし。当然、断罪イベントもなく、都会が苦手なので亡き母の遺してくれた辺境の領地に移住する日を夢見て過ごし、無事卒業。
ところが母の愛したミカン畑が、安く買い叩かれて廃業の危機!? 途方にくれたけど、目のまえには海。それも、天然の良港! 一念発起して、港湾開発と海上交易へと乗り出してゆく!!
乙女ゲームの世界を舞台に、原作ストーリー無視で商才を開花させるけど、恋はちょっと苦手。
なのに、グイグイくる軽薄男爵との軽い会話なら逆にいける!
という不器用な主人公がおりなす、読み味軽快なサクセス&異世界恋愛ファンタジー!
*女性向けHOTランキング1位に掲載していただきました!(2024.9.1-2)たくさんの方にお読みいただき、ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる