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第4章 NPC

第百二十八話

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「ここか…」

 見上げる先には古びた洋館。
 アルフヘイムの街の東の端に位置する洋館は蔦に覆われていて、なにやら怪しげな雰囲気をまとっていた。

 ヴァイスとルーネが失敗した依頼を受け直した僕達は、依頼主の自宅にやってきたわけだけど………

「なんか、だよね…」
「さすがにゴーストは斬れねえなぁ」
「カイの頭には斬ることしかないのかい?」
「だ、大丈夫よ、お化けなんて迷信よ…!(ガタガタブルブル)」
「大丈夫ですよみなさん、お化けよりも厄介な人がいるだけです」

 ルーネ…それはフォローになってないよ…

 まあ、事前に二人から聞いた話によると、依頼主は相当な変人というか変態らしいけど………

 その時、バンッ!と勢いよく玄関の扉が開いた。
 現れたのはエルフの男性。
 金髪碧眼長い耳、見た感じどこにでもいる普通のエルフっぽい。
 格好は貴族っぽいスーツ?に白衣を羽織ってるという少しおかしな格好だけど、そこまで変じゃないと思う。

「何奴だ!」

 いきなり怒鳴られてしまった…=)

「あ、あの、アイテムの検証実験の依頼を受けた者なんですけど…」

 と僕が言うと、男の目が急に爛々と輝いた。
 口元には笑みがこぼれているけど、どこか狂気じみた笑みだった。

 あ…この人ガチでヤバい人じゃない?

「そうかそうか!よく来てくれた、まあ入るがいい」

 僕達は恐る恐る洋館に足を踏み入れた。


「自己紹介が遅れたな。私の名はグランツ・エル・クレイアールヴ、稀代の天才魔導だ。私の専攻は魔導工学なのだが、最近は他の大陸から流れてきた魔導具に興味を持ってね、まあ詳しい話はしてもわからないと思うので端折るが、それを調べているのだよ」

 案内しながら口早にそう説明じみたことを言うグランツさん。
 そして奥の一室に案内されて中に入った僕は目の前の光景に絶句してしまった。
 薄暗い部屋はそれなりに広かったけれど、壁一面に備え付けられた本棚にはびっしりと本が詰められていて、奥には巨大なテレビ画面みたいなものがあった。
 その画面にはストリー○ファイターIIのタイトルが…:-()

 話には聞いていたけど、ゲームってコレか………

 テレビゲーム。
 しかも任○堂のスーパーフ○ミコン。
 超レトロゲーじゃん。

「君達にはこのス○IIを私と一緒にプレイしてもらう」

 テレビ画面?の前に座り込みスーフ○ミのコントローラーを握るグランツさん。

「あの、ただプレイするだけですか?」
「そうだ」
「………:-c」

 ていうかコレのどこが研究なのか、全く意味がわからないんですけど………

「…本当に大丈夫か?」

 ヴァイスが心配そうに僕に耳打ちしてきた。

「…負けたらボロクソにディスられるぞ?」
「僕、悔しくて泣いちゃいました…」

 その時のことを思い出したのか、渋面を浮かべるヴァイスとルーネ。
 僕は二人を安心させようと笑いかけた。

「うん、大丈夫。この手のゲームは自信あるから」

 僕が生まれる以前に流行ったゲームだけど、レトロゲーは幼い頃から両親に散々しごかれている。
 スーフ○ミはもちろん、ファ○コン、PCエ○ジン、セガ○ターン、メガ○ライブなどで人気だったゲームは一通りプレイしているし。
 問題はグランツさんがス○IIをどれくらいやり込んでるかだけど、僕も久し振りだからなあ………

「さあ、早速検証を始めようじゃないか。まずは誰から私の餌食に…いや、協力をしてくれるのかな?」

 そう言うグランツさんの表情は悪そうな笑みを浮かべていた。
 
 …この表情かおは身に覚えがある。
 いじめっ子特有の胸くそ悪い笑みだ。
 フツフツと、僕の胸の内から怒りがこみ上げてきた。

「僕からいきます」

 僕はグランツさんの隣に座ると2コンを手に取った。

「どれだけやり込んだか知らないけど、弱いものいじめしてた舐めプーじゃ、逆に痛い目に遭いますよ?」
「ほう…その口ぶりからして、経験者かな?」
「ええまあ」
「フッ、面白い…!だが私の腕は並ではないぞ?ス○IIで壊したボーナスステージの車は数知れず、難易度MAXをノーコンテニューで全クリしてるのだ」
「ぷ、くすくすwww」

 僕が笑うとムカつく笑みを浮かべていたグランツさんは不機嫌そうな表情に変わった。
 ていうかそんなの自慢にもならないんですけどwww
 
「貴様のその余裕をすぐにかき消してくれるわ!ソニッブゥンム!」

 グランツさんはネイティブな発音でガ○ルを選択した。
 ふーん、ガ○ルか……
 対する僕はザ○ギエフを選択。

「ハッ!そんな鈍重なキャラで私のガ○ルを倒せると思っているのか笑止!」
「はぁ…」

 僕はため息をついた。
 なんだ、ザ○ギの強さを知らないのかこの人。

「兄貴頑張ってください!」
「やっちまえー!」
「頑張って」
「負けたら承知しないわよ!」
「ファントムさんファイトです!」
「…gl」

 みんなの声援が地味にプレッシャーを感じる…(苦笑)
 
『ROUND1 ファイッ!』

 そうこうしているうちに戦いの幕が切って落とされた。

『ソニックブ~ム!』

 飛んできたソニックブームをダブルラリアットで回避。

「小癪な!」
『ソニック、ソニック、ソニックブ~ム!』

 バカのひとつ覚えのように連発してきた。
 僕はザンギを操作し、飛んできたソニックブームをダブルラリアットで躱していく。

 あ、これ、ガチでスーフ○ミ版のス○IIだな…

 なにかパロってるかと思ったけど、まんまス○IIだ。
 著作権やらなにやら大丈夫か?と変な心配をしつつも徐々にガ○ルに近づいていく。
 多分相手は待ちガ○ルをしていると予想する。
 このまま不用意に突っ込んでいったらしゃがみ蹴りからのサマーソルトのコンボがくるだろう。
 待ちガ○ルはザ○ギのように飛び道具がないキャラにはこれといって対策がないし、一方的に削られて終わるけど、あえて僕はソニックブームを避けながらガイルに突っ込んでいく。
 当たり判定が反則並みのしゃがみ蹴りの間合いはわかっている。
 ソニックブームの硬直時間はわずか0.3秒なのもわかっている。
 あとはタイミングだけ。
 
「なに!?」

 グランツさんが驚きの声をあげた。
 いつの間にか詰め寄っていた僕のザ○ギがガ○ルの蹴りをガードしスクリューパイルドライバーをかけていた。

「待ちガ○ルには立ちスクリュー」

 と呟く僕。
 このまま端に追い込んでスクリューはめだな。
 こうなると切り返しの乏しい待ちガ○ル使いはなにもできなくなる。
 絶好のカモと化したガ○ルにスクリューはめをするザ○ギ。

「はい終了」

『KO!』

「ば、馬鹿な…!?私のガ○ルが…」

 呆然と呟くグランツさん。
 負けたのが信じられないようだ。

「すげえ…すげえっすよ兄貴!」
「ふわぁ!強すぎですよファントムさん!」
「…gg(いいプレイだった)」
「や、やるじゃない…///」
「おいおいマジかよ!ファントムが超強えええ!?」
「カイ、何気に彼に失礼だよ」

 みんなの賞賛の声がくすぐったい。
 いやいや、僕なんかそんなに強くないよ?
 ス○IIやり込んだガチゲーマーなんか神のように強いから。
 僕なんてせいぜいレベル鬼くらいだよ。

「もう一度だ…!もう一度勝負しろ!」

 グランツさんがリベンジマッチを望んできた。

「いいですよ」

 気軽に了承する僕。
 ぶっちゃけ負ける気がしない。
 あの程度の待ちガ○ル使いで初心者相手に俺TUEEE!やってるクズに思い知らせてやろう。
 僕は次にガ○ルを選択した。

「なに!?私と同じガ○ルだとぉ!」

 ガ○ルvsガ○ル。

「本当の待ちガ○ルというものを教えてあげますよ」
「ふ、ふん、面白い。私のガ○ルと貴様のガ○ル、どちらが上か勝負だ!」

 ていうか勝負にならないと思うけどwww

『ROUND1 ファイッ!』



『KO!』

 特筆することなどなにもなく、僕のガ○ルがグランツさんのガ○ルを秒殺した。
 
「………(パクパクパク)」

 鯉のように口をパクパクさせているグランツさん。
 僕は次にブランカを選択した。

「まだやりますよね?」
「と、当然だ…!負けたままで終われるか…!」

 そうこなくちゃ。
 心が折れるまでフルボッコにしてやる…>:-)
 そう心に誓った僕はコントローラーを握り直した。


 一時間後。
 僕が操る全キャラ相手にグランツさんのガイルは全敗し、その度に僕は「無駄にソニックブームを撃ってても勝てませんよ?」とか「なんであそこで中パンチ?」とかさりげなくダメ出しを口にしてプレイしていたら、とうとうグランツさんの心が折れたw

 仇は討ったよ、ヴァイス、ルーネ:)

『ヴァイス(NPC)の好感度が30上がりました!』
『ルーネ(NPC)の好感度が30上がりました!』
『ファントムは【ストリートファイター】の称号を獲得しました!』














 

 
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