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第2章 獄中生活

第四十七話

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 このゲーム【アトランティス】には基本的に犯罪防止コード的なモノは存在しない。
 全てで、なにか犯罪を犯したら警告もなにもなく【牢獄】に強制転移することになっている。

 裁判もなく問答無用で牢屋にって…と思わなくもないけど、ログで記録されてるから犯罪を犯した時点でアウト。確定です。って感じなのだろう。
 情状酌量の余地もなくで刑罰を決められるこっちはたまったものじゃない。

 ナオのヤツ…人のアバターからだでなんてことをしでかしたんだ…。
 僕はもう怒りを通り越して呆れてしまっていた。
 ステータスメニューの下にはこう追記されていた。

『ペナルティ1。前歴者オレンジプレイヤー
『暴行傷害罪で一年六ヶ月の懲役刑。残り一年五ヶ月二十六日』
『未決通算無し』
『賞罰無し』

 一年半もいなきゃいけないのか…。
 ていうか未決通算とか賞罰ってなに?

 ちなみに現実のリアルと違ってここでは救済措置?で課金をすれば刑罰が短縮する。
 調べてみると一年短縮で30000円………。
 30000…三万…サンマンエン……。Gじゃなくて円ですか?
 課金としては高額すぎる値段だ。
 バイトを辞めた高校生(半引きこもり)には手が出せないくらい高すぎる…。
 普通に高額すぎてゲーム辞めたくなるレベルだと思う。
 まあ、ダイブオン買えるくらい家が裕福なご家庭なら三万くらい払えるかもしれないけど、僕のような必死にバイトして金を貯めて購入したPCプレイヤーにはキツすぎるペナルティだ。

 ここで嘆いていても仕方ないし、辞める気もない僕はとりあえず獄中生活を送ってみようと思った。
 に準拠した所だと聞いている。
 実際にリアルで刑務所生活なんてできないししたくもないけど、ここなら金次第ですぐに出れるし、ここでしか参加できないクエストやミッション、そしてジョブやスキルを得られるとも聞いている。

 というわけで僕はとりあえず様子見をすることにした。
 最悪やっていけないと思ったらまたバイトしてここを出所できる金を貯めればいいし。
 
「よし。やってみるか」

 独居房と呼ばれる個室で考えをまとめた僕は行動を起こすことにした。
【生活の心得】という冊子が机の中に入っていた。
 それによると看守を呼びたい時は扉にあるなるモノを押せばいいと書いてあった。
 小窓がある鉄の扉。
 ドアノブはない。扉の右隣には食器口のようなモノがあった。

「報知器ってどこだ?」

 キョロキョロ扉付近を探す僕。

「これかな?」

 扉の鉄枠にボタンがあった。
 試しに押してみると、カタンとなにか降りた音がした。
 小窓から外を覗いてみると押した辺りになにか札というか白いプレートのようなモノが外に出ていた。
 コツンコツンと誰かの足音が響いてきた。
 誰か来る?どうやらこのボタンが報知器で間違いなさそうだ。
 予想通り来たのは制服を着たおじさん。頭上のHPゲージを見ると緑。NPCだった。

「248番。何か用か?」
「え…あの」

 呼び出したはいいけどなに話したらいいんだ?
 ていうか僕248番なんだ。
 そういえば刑務所って番号で呼ばれるって聞いたことがある。
 とりあえずこれからどうなるのか聞いてみることにしよう。

「あ、あの、僕はこれからどうなるんでしょうか?」
「刑に服するのか?」

 看守がそう言うとシステムメッセージが流れた。

『課金すれば刑期の短縮ができます』
『金額はメニュー内の【獄中生活】の項目を参照して下さい』
『課金しますか?』
『YES』
『NO』

 などと表示された。
 それはさっき見たし、払う気は今のところない。
 いつでも課金できるみたいだから今はNOだ。
 ていうか課金勧めるね…。どれだけ気だよ…(苦笑)
 僕はNOをタップした。

「それではこれから貴様を移送する」

 ガチャッと扉の鍵が開いた。
 看守が外から扉を開けると「出ろ。ついてこい」と言われた。
 僕は看守とともに移送されることになった。


 違う棟に移動した僕はとある部屋に案内された。
 看守に促されて入ってみると、緑色の作業着?を着た坊主頭のNPCがいた。
 部屋の中央には椅子が置かれていた。

「そこに座れ」

 そう言われたので僕は椅子に座る。
 すると坊主頭のNPCが僕の後ろに回り首にケープ?みたいなモノを巻かれた。

「まずはここで身嗜みを整えてもらう」

 看守がそう言うと、僕の後ろにいた坊主頭のNPCが僕の髪を摘んだ。

ジョキッ!

「へ!?」

 いつの間に手にしたのか坊主頭のNPCの手にはハサミが握られていた。
 ウソッ髪切られた!?

「動くな248番!」

 看守に怒鳴られてしまった。

「貴様はこれから己の罪を償い見つめ直すためにで更生するのだ!まずはその髪を五厘にする!」

 やれ!看守の名に従い坊主頭のNPCが僕の髪をジョキジョキ切っていく。
 ああ…せっかくチュートリアルの時に苦労して作った僕のヘアースタイルが…(泣)
 
「よし!次はそこにある服に着替えろ!」

 頭を刈り終えた僕はカゴの中に入った灰色の服を手に取った。
 僕はメニューから【装備欄】をタップし、いま装備している防具を解除して、カゴの中にあった灰色の長袖とズボンを手で着替えた。
 着替え終わるとシステムメッセージが流れた。

『【装備欄】の項目にロックがかかりました』
『【アイテム欄】の項目にロックがかかりました』
退装備の変更ができなくなりました』
『アイテムの使用にがかかりました』

 マジか…!って、まあ当然の仕様か。
 こういう所は普通に私物使えないと思うし、しょうがない…。

「よし。次に行くぞ」

 続いて看守に連れられた場所は違う棟にある看守のいる棟だった。
 けっこう広めの部屋に案内された僕は偉そうな看守の前に立たされた。
 一緒に来た看守は少し離れて代わりに僕の両脇に看守の制服が若干違うNPCに挟まれた。
 
「氏名、年齢、職業、罪状を述べよ」

 偉そうな看守が僕に言った。

「えっと…ファントムです。歳は17です?職業は戦士です。罪状は…たしか暴行傷害です」
「冒険者か?」
「あ、はい」
「刑期は?」
「えっと、一年半です」

 偉そうな看守は手元のファイルを見て「ふむ」と頷いた。

「貴様は未成年だ。成人していない貴様はただ刑期を終えればいいという訳ではない。我々は貴様に犯した罪を見つめ直す機会を与え、そして無事に社会復帰できるようにさせる為に尽力する。貴様はこれから少年房で自身を見つめ直し二度としないようにする為にはどうすればいいのか考えるのだ。貴様は身元引受け人はいるか?」
「…いえ、いません?」
「身元引受け人がいないと未成年の貴様はいつまで経っても出所、未成年の場合は退というが仮退院はできない。しかし貴様は冒険者だ。冒険者組合に身元引受け人の申請をすれば通ると思うがどうする?申請するか?」
「あ、はいお願いします」
「では、こちらで申請しておこう」

 偉そうな看守はファイルになにかを書き込んだ。

「ではこれで終わりだ」
「248番気をつけい!」

 一緒に来た看守が叫んだ。
 僕は気をつけの姿勢をした。

「礼!」

 僕は頭を下げた。

「よし248番、これから貴様を少年房に連行する。ついてこい」

 こうして、僕の獄中生活が幕を開けた。
 
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