上 下
47 / 48

45話 ディアンナ来襲

しおりを挟む
「そ、それはどうして……?」

「そんなの……ハース様がエモーラになった途端、目をハートにして追いかけるようなやつらだからですよ!
 ハース様への忠誠心は、その程度で揺らがない!
 みんな、そうだよな!」

「そうだっ!」

 ま、まぁ、レオルの言うことも、あながち間違ってない……のかな。
 でも、これがもし逆の立場だったらどうなっていただろうか。

「じゃあさ、みんなに聞くけど、めちゃくちゃ自分のタイプな人がエモーラだったら、追いかけたりしないの?」

「も、も、も、も、も、もちろんですよ……!
 み、みんなもそうだよなぁ?」

「お、おう……」

「と、当然だよなぁ?」

 はぁ、これだから男ってやつは……。

「ちなみに、俺なら全力で追いかける!」

「おおっ、流石はハース様!」

 俺は再び拍手の雨を浴びた。
 なんかもうここまで来ると、俺の発言全てに謎の力が備わっているようで、少し話しづらい。

「はいはい、拍手終了」

「はっ!」

 俺の指示を受け、拍手から敬礼に切り替える隊員たち。

 うわっ、なんか今のすごく隊長っぽい!

「それではハース様、この地下通路をご案内いたします!」

「あっ、うん。
 ありがとう」

 へぇ、こんなところに階段か。

 ズザァァァァァァ!

 レオルに続いて、俺が土の階段を降りようとすると、突然大きな剣が目の前を通過した。

「なんだなんだ!?」

 そしてその直後、地面が2つに割れた。

 もし俺がそのまま脚を下ろしていたら、今頃どうなっていたことだろう。
 いや、これに関しては考えない方が自分のためか。

「ハース様!」

「あっ、バイバイ」

「ハース様ぁぁぁああああ!」

 それと、今の出来事によって、俺とレオルが完全に分断された。
 力任せに土の壁を壊せば、この辺り一帯の地面が崩れかねない。
 だから、実質分断されたって感じだ。

 それはさておき、俺には誰がこんなことをしたのかなんとなく分かる。
 だって、こんなことが出来るのは、魔王軍幹部の中でも、あの人くらいしかいない。

「うふふ、ハースくんみーっけ」

「はぁ、最悪だ……」

 青空の見える上方から、華やかに降ってくる和服の女性。
 スタッと軽やかに着地すると、その人は俺の頭を撫でた。

「いちいちこんな派手な登場する必要なかったですよね、ディアンナさん」

 そう。
 彼女はディアンナだ。

「だってだって、ハースくんがエモーラになったなんて聞いちゃったら、直接会いに行くしかないじゃない?」

「行くしかないことはないですよね、はぁ」

「もうっ、ハースくん冷たい!」

 そんな様子を見ていた隊員たちは、ディアンナに有利に働きそうな、こんな言葉を口にした。

「あれって、ハース様の彼女?」

「まぁ、ハース様にはお似合いか」

「ってか、ハース様がモテないはずないもんな」

「それにしても、美人さんだなぁ」

 この空気、あのディアンナが利用しないはずが無い。

「うふふ、彼女だなんて……。
 まだ、よ」

「ヒュー、ヒュー!」

 口元に人差し指を近づけ、ウィンクで答えるディアンナ。
 今すぐにでも逃げ出したいが、隊員たちをこの場に残したら、何をされるか分かったもんじゃない。

「くっ、ここまでか……」

 その時だった。

「家の庭で何してるのだ?」

「シェルヴィ様……!」

 ディアンナに続き、上方に姿を現したのはシェルヴィ様……とパパさん!?

「ハースくん、シェルヴィから君に話があるんだって」

「話……ですか?」

「うん」

 パパさんが1回手を叩くと、酷く荒れ果てた庭はすっかり綺麗な庭に戻り、地中にいた隊員たちに加え、俺を探していた隊員たちまでもが、並べられたベンチに座らされた。

「あれ?
 みなさんお揃いなんですね」

「ハースさん、お久しぶりです」

「ナタリアさんまで!?」

 俺、ディアンナ、レオル、フェンリアル、パパさん、ママさん、クロさん、シロさん、ナタリアさんの9人は先頭の列に、シェルヴィ様はマイクを片手に木で作られたお立ち台に立っている。

「パパ、ありがとうなのだ!」

「いやいや、このくらいどうってことないよ」

 あっ、パパさんめちゃくちゃ嬉しそう。

「皆の衆、我の話をよく聞くのだ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

解放の砦

さいはて旅行社
ファンタジー
その世界は人知れず、緩慢に滅びの道を進んでいた。 そこは剣と魔法のファンタジー世界。 転生して、リアムがものごころがついて喜んだのも、つかの間。 残念ながら、派手な攻撃魔法を使えるわけではなかった。 その上、待っていたのは貧しい男爵家の三男として生まれ、しかも魔物討伐に、事務作業、家事に、弟の世話と、忙しく地味に辛い日々。 けれど、この世界にはリアムに愛情を注いでくれる母親がいた。 それだけでリアムは幸せだった。 前世では家族にも仕事にも恵まれなかったから。 リアムは冒険者である最愛の母親を支えるために手伝いを頑張っていた。 だが、リアムが八歳のある日、母親が魔物に殺されてしまう。 母が亡くなってからも、クズ親父と二人のクソ兄貴たちとは冷えた家族関係のまま、リアムの冒険者生活は続いていく。 いつか和解をすることになるのか、はたまた。 B級冒険者の母親がやっていた砦の管理者を継いで、書類作成確認等の事務処理作業に精を出す。砦の守護獣である気分屋のクロとツンツンなシロ様にかまわれながら、A級、B級冒険者のスーパーアスリート超の身体能力を持っている脳筋たちに囲まれる。 平穏無事を祈りながらも、砦ではなぜか事件が起こり、騒がしい日々が続く。 前世で死んだ後に、 「キミは世界から排除されて可哀想だったから、次の人生ではオマケをあげよう」 そんな神様の言葉を、ほんの少しは楽しみにしていたのに。。。 オマケって何だったんだーーーっ、と神に問いたくなる境遇がリアムにはさらに待っていた。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...