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19.5話 獣魔隊
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「おいフェンリアル、さっきの話本当なんだろうな」
「もちろんガウ。
仲間に嘘はつかないガウ」
険しい山道を歩くフェンリアルと髪から服まで赤色の男。
男の髪はライオンのように逆立ち、右頬には切り傷のような跡が残っている。
雰囲気はそう、歴戦の猛者といった感じだ。
「あっ、ここガウ!」
そして、そんな2人が今いるのは、ハースとフェンリアルが戦ったあの場所だ。
「どれどれ。
お前の言ったことが本当なのか、俺様がこの目と鼻で確認してやるよ」
男はそう言うと四足歩行に切り替え、地面をくんくんと嗅ぎ始めた。
そして、嗅ぎ続けること3分。
男は雑草が少し焦げているのを見つけ、その辺り一帯を重点的に嗅いだ。
すると……。
「お、おい……まじかよ……!
この魔術痕、そしてこの懐かしい匂い。
うん、間違いない。
ついに隊長が、俺らの隊長が、帰ってきた……!」
「全く、すごい変わりようガウ……」
フェンリアルは呆れたようにため息をついた。
「おいおい、早く元獣魔隊のやつらに伝えた方がいいんじゃねぇのか!」
「まぁまぁ、とりあえず落ち着くガウ。
私だってまだ、心の整理がついてないガウ」
「あっ、悪ぃ。
そうだよな……。
お前は特に隊長のこと、大好きだったもんな」
「それはお互い様ガウ……」
この時、2人の頭には同じ情景が浮かんでいた。
それはシェルヴィ様が生まれるずっと前……。
「おい、どうなってんだよこれ……!」
「全員今すぐ逃げろっ!」
ほうきに跨り、杖を持ち、自由に空を飛ぶ三角帽子の女。
その女は、永久の魔女と呼ばれる魔女である。
永久の魔女は『死灯火』と呼ばれる火の魔法を多用し、木造建築が主流の獣族村を襲った。
獣族村の木造建築は、縄文時代の竪穴式住居を横に並べたような造りをしており、家から家へ火が燃え移るのは一瞬だった。
「レオル、早くしないとこの集会所も燃えちゃうガウ!」
「分かってる、分かってるけど……」
集会所には4つの机と24脚の椅子が置かれ、休みの日には多くの村人で賑わう。
村人憩いの場所だ。
「なら、私と一緒にあいつを倒すガウ!」
「お、俺には……無理だよ」
当時15歳のレオルにとって、魔女は地獄に住む悪魔だった。
出会ったら最後。
明日を生きる命はない。
そんな存在と戦うなんて想像も出来なかっただろう。
しかし、同い歳でもフェンリアルは違った。
今まさに右手で剣を持ち、怯むどころか1人魔女に立ち向かおうとしている。
「さぁレオル、早く行くガウ!」
「わ、分かったよ……。
やるよ、やればいいんだろ……!」
でも神様は、そんなに長く待てなかったらしい。
すぐ近くの家に放たれた死灯火。
その威力は凄まじく、2人が身を潜める集会所を軽く吹き飛ばした。
そして、その衝撃波に飛ばされたであろう木の柱が悪戯に2人の頭上へと落ちてくる。
「ねぇ、レオル……」
「なぁ、フェンリアル……」
「これは死んだ(ガウ)」
時間がゆっくりと流れているような、そんな感覚が2人を襲った。
しかし、諦めかけたその時。
奇跡は起きた。
いや、奇跡という言葉で片付けるのは失礼だ。
これは、必然だ。
「魔静術……消去」
その声が聞こえた直後、木の柱は忽然と姿を消した。
「ふぅ……」
2人の前に現れた白髪の青年は、燃える村に溶け込むような黒軍服を身に纏っていた。
制服の肩には金色の襟章が輝き、腰には幾重にも折り重なったバッジが光っている。
「た、隊長……!」
「ん?
あぁ、レオルか。
って、今はそんなこと言ってる余裕ないんだった。
さぁさぁ、2人は早く逃げて」
「ア、アースさんはどうするガウ?」
「ん?
そんなの決まってるでしょ。
みんなの逃げる時間を稼ぐんだよ」
「ぱぁぁぁ……!
はい、了解ガウ!」
これが獣魔隊隊長アースの最後であり、2人がアース隊長を愛するまでの経緯である。
「もちろんガウ。
仲間に嘘はつかないガウ」
険しい山道を歩くフェンリアルと髪から服まで赤色の男。
男の髪はライオンのように逆立ち、右頬には切り傷のような跡が残っている。
雰囲気はそう、歴戦の猛者といった感じだ。
「あっ、ここガウ!」
そして、そんな2人が今いるのは、ハースとフェンリアルが戦ったあの場所だ。
「どれどれ。
お前の言ったことが本当なのか、俺様がこの目と鼻で確認してやるよ」
男はそう言うと四足歩行に切り替え、地面をくんくんと嗅ぎ始めた。
そして、嗅ぎ続けること3分。
男は雑草が少し焦げているのを見つけ、その辺り一帯を重点的に嗅いだ。
すると……。
「お、おい……まじかよ……!
この魔術痕、そしてこの懐かしい匂い。
うん、間違いない。
ついに隊長が、俺らの隊長が、帰ってきた……!」
「全く、すごい変わりようガウ……」
フェンリアルは呆れたようにため息をついた。
「おいおい、早く元獣魔隊のやつらに伝えた方がいいんじゃねぇのか!」
「まぁまぁ、とりあえず落ち着くガウ。
私だってまだ、心の整理がついてないガウ」
「あっ、悪ぃ。
そうだよな……。
お前は特に隊長のこと、大好きだったもんな」
「それはお互い様ガウ……」
この時、2人の頭には同じ情景が浮かんでいた。
それはシェルヴィ様が生まれるずっと前……。
「おい、どうなってんだよこれ……!」
「全員今すぐ逃げろっ!」
ほうきに跨り、杖を持ち、自由に空を飛ぶ三角帽子の女。
その女は、永久の魔女と呼ばれる魔女である。
永久の魔女は『死灯火』と呼ばれる火の魔法を多用し、木造建築が主流の獣族村を襲った。
獣族村の木造建築は、縄文時代の竪穴式住居を横に並べたような造りをしており、家から家へ火が燃え移るのは一瞬だった。
「レオル、早くしないとこの集会所も燃えちゃうガウ!」
「分かってる、分かってるけど……」
集会所には4つの机と24脚の椅子が置かれ、休みの日には多くの村人で賑わう。
村人憩いの場所だ。
「なら、私と一緒にあいつを倒すガウ!」
「お、俺には……無理だよ」
当時15歳のレオルにとって、魔女は地獄に住む悪魔だった。
出会ったら最後。
明日を生きる命はない。
そんな存在と戦うなんて想像も出来なかっただろう。
しかし、同い歳でもフェンリアルは違った。
今まさに右手で剣を持ち、怯むどころか1人魔女に立ち向かおうとしている。
「さぁレオル、早く行くガウ!」
「わ、分かったよ……。
やるよ、やればいいんだろ……!」
でも神様は、そんなに長く待てなかったらしい。
すぐ近くの家に放たれた死灯火。
その威力は凄まじく、2人が身を潜める集会所を軽く吹き飛ばした。
そして、その衝撃波に飛ばされたであろう木の柱が悪戯に2人の頭上へと落ちてくる。
「ねぇ、レオル……」
「なぁ、フェンリアル……」
「これは死んだ(ガウ)」
時間がゆっくりと流れているような、そんな感覚が2人を襲った。
しかし、諦めかけたその時。
奇跡は起きた。
いや、奇跡という言葉で片付けるのは失礼だ。
これは、必然だ。
「魔静術……消去」
その声が聞こえた直後、木の柱は忽然と姿を消した。
「ふぅ……」
2人の前に現れた白髪の青年は、燃える村に溶け込むような黒軍服を身に纏っていた。
制服の肩には金色の襟章が輝き、腰には幾重にも折り重なったバッジが光っている。
「た、隊長……!」
「ん?
あぁ、レオルか。
って、今はそんなこと言ってる余裕ないんだった。
さぁさぁ、2人は早く逃げて」
「ア、アースさんはどうするガウ?」
「ん?
そんなの決まってるでしょ。
みんなの逃げる時間を稼ぐんだよ」
「ぱぁぁぁ……!
はい、了解ガウ!」
これが獣魔隊隊長アースの最後であり、2人がアース隊長を愛するまでの経緯である。
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