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みんなでお泊まりに行こう③
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街に出た俺は、小物を取り扱うお店に入った。
「あら、いらっしゃい」
優しい声で話しかけてきた店員さんは、羊人の女性だった。
「あの~……なにか女性に送るプレゼントで、おすすめなものってありませんか?」
「う~ん、そうですねぇ……その情報だけだと、答えかねます」
「そうですよね……あはは……」
入店早々気まずい。
なにか喜ばれそうなプレゼントは無いものか……。
俺は必死に考えた結果、1つだけ思いついた。
「イヤリングでなにかおすすめはありませんか?」
「イヤリングですね、かしこまりました。
こちらへどうぞ」
店員さんに案内され、イヤリングがたくさん置かれているコーナーに着いた。
「こちらがイヤリングのコーナーになります。
その女性は、どのような方なのでしょうか?」
「そうですね……一言で言えば、綺麗ですかね」
俺は少し照れながら言った。
今どきの店員さんって、相手の女性をどう思ってるのかまで聞いてくるんだなぁと少し関心した。
しかし、店員さんはすごく真面目な顔でこう言った。
「お客様申し訳ありません、
髪色や見た目について詳しい情報が欲しかったのですが、言葉足らずで申し訳ありません」
……これは恥ずかしい。
俺は必死に誤魔化した。
「そうですよね! 俺ってば、バカだな……あはは……」
その後一呼吸置いたあと、改めて言い直した。
「金髪ショートで、透き通るように綺麗な肌をしています。
なんというか天使みたいな感じって表現でわかりますかね?」
店員さんはしばらく考えたあと、
「少し待っていてください」
と言い残し店の裏に戻って行った。
しばらくすると、店員さんが戻ってきた。
「お客様、大変お待たせ致しました。
こちらの商品なんていかがでしょうか? 」
店員さんは、右耳用がピンク色、左耳用が黄色のハート型イヤリングを持ってきた。
「お~、すごくいいと思います!」
「恥ずかしながら、こちらの商品は私が作ったものなのです」
「す、すごい……これにします!」
「ありがとうございます!」
「あと、これもお願いします」
「はい」
俺はハート型イヤリングとは別に、もう1つイヤリングを買った。
プレゼントっぽい包装もしてもらい、後は渡すだけ。
気づけば空もすっかり暗くなっていた。
俺は気合を入れ、部屋に戻った。
「キュレル、大丈夫か?」
扉を開けると、部屋の隅っこにダークオーラ全開の天使がいた。
こんなんじゃ、天使というより悪魔だな。
ふと机の上を見ると、置き手紙が1通。
『よくわからないけど、窓開けといた。キース』
うん。
よくわからないけど、緊張はほぐれたよ。
ありがとな、キース。
俺はキュレルに声をかけた。
「あのさ、キュレルにプレゼントがあるんだけど……」
「プレゼント……?」
おっ、今少し反応した気がする。
「そうなんだよ! 少し街に出ていたら、キュレルに似合いそうなものを見つけてな」
「それを私にくれるの?」
「もちろん! キュレルのために買ってきたんだ!」
手応えあり、悪くない。
さて、どうなる……。
「ふんっ! それならさっさとそう言いなさい!」
「……あれ?」
キュレルは立ち上がり、ベッドの上に堂々と座った。
先程までキュレルの周りを覆っていたダークオーラも、見る影もないほど綺麗さっぱりだ。
思ってた展開とは違ったが、結果オーライか。
「はい、どうぞ」
「ほわぁ~……ありがとう!」
キュレルはビリビリと包装を破り、箱を開けた。
「可愛い……」
キュレルは、中に入っていたイヤリングに手をかけ、そのまま抱きしめるようにそっと自分の胸元に当てた。
「どうだ? 気に入ったか?」
俺が尋ねた直後、キュレルの目から綺麗な涙が落ちた。
「はぁ、しょうがねぇな」
俺はキュレルの頭を優しく撫でながらこう言った。
「キュレルには必ず友達ができる。
それどころか人気者にだってなれる。
安心しろ、俺が保証してやる」
「うん……」
「だからさ、キュレルも一緒にお泊まり行こうぜ!」
「うん……」
キュレルは涙を流しながら、にっこりと笑った。
風が吹き、カーテンの隙間から月明かりが差し込む。
「うんうん。キュレルはこうでなくっちゃね」
月明かりに照らされ笑うキュレルは、間違いなく本物の天使だった。
「あら、いらっしゃい」
優しい声で話しかけてきた店員さんは、羊人の女性だった。
「あの~……なにか女性に送るプレゼントで、おすすめなものってありませんか?」
「う~ん、そうですねぇ……その情報だけだと、答えかねます」
「そうですよね……あはは……」
入店早々気まずい。
なにか喜ばれそうなプレゼントは無いものか……。
俺は必死に考えた結果、1つだけ思いついた。
「イヤリングでなにかおすすめはありませんか?」
「イヤリングですね、かしこまりました。
こちらへどうぞ」
店員さんに案内され、イヤリングがたくさん置かれているコーナーに着いた。
「こちらがイヤリングのコーナーになります。
その女性は、どのような方なのでしょうか?」
「そうですね……一言で言えば、綺麗ですかね」
俺は少し照れながら言った。
今どきの店員さんって、相手の女性をどう思ってるのかまで聞いてくるんだなぁと少し関心した。
しかし、店員さんはすごく真面目な顔でこう言った。
「お客様申し訳ありません、
髪色や見た目について詳しい情報が欲しかったのですが、言葉足らずで申し訳ありません」
……これは恥ずかしい。
俺は必死に誤魔化した。
「そうですよね! 俺ってば、バカだな……あはは……」
その後一呼吸置いたあと、改めて言い直した。
「金髪ショートで、透き通るように綺麗な肌をしています。
なんというか天使みたいな感じって表現でわかりますかね?」
店員さんはしばらく考えたあと、
「少し待っていてください」
と言い残し店の裏に戻って行った。
しばらくすると、店員さんが戻ってきた。
「お客様、大変お待たせ致しました。
こちらの商品なんていかがでしょうか? 」
店員さんは、右耳用がピンク色、左耳用が黄色のハート型イヤリングを持ってきた。
「お~、すごくいいと思います!」
「恥ずかしながら、こちらの商品は私が作ったものなのです」
「す、すごい……これにします!」
「ありがとうございます!」
「あと、これもお願いします」
「はい」
俺はハート型イヤリングとは別に、もう1つイヤリングを買った。
プレゼントっぽい包装もしてもらい、後は渡すだけ。
気づけば空もすっかり暗くなっていた。
俺は気合を入れ、部屋に戻った。
「キュレル、大丈夫か?」
扉を開けると、部屋の隅っこにダークオーラ全開の天使がいた。
こんなんじゃ、天使というより悪魔だな。
ふと机の上を見ると、置き手紙が1通。
『よくわからないけど、窓開けといた。キース』
うん。
よくわからないけど、緊張はほぐれたよ。
ありがとな、キース。
俺はキュレルに声をかけた。
「あのさ、キュレルにプレゼントがあるんだけど……」
「プレゼント……?」
おっ、今少し反応した気がする。
「そうなんだよ! 少し街に出ていたら、キュレルに似合いそうなものを見つけてな」
「それを私にくれるの?」
「もちろん! キュレルのために買ってきたんだ!」
手応えあり、悪くない。
さて、どうなる……。
「ふんっ! それならさっさとそう言いなさい!」
「……あれ?」
キュレルは立ち上がり、ベッドの上に堂々と座った。
先程までキュレルの周りを覆っていたダークオーラも、見る影もないほど綺麗さっぱりだ。
思ってた展開とは違ったが、結果オーライか。
「はい、どうぞ」
「ほわぁ~……ありがとう!」
キュレルはビリビリと包装を破り、箱を開けた。
「可愛い……」
キュレルは、中に入っていたイヤリングに手をかけ、そのまま抱きしめるようにそっと自分の胸元に当てた。
「どうだ? 気に入ったか?」
俺が尋ねた直後、キュレルの目から綺麗な涙が落ちた。
「はぁ、しょうがねぇな」
俺はキュレルの頭を優しく撫でながらこう言った。
「キュレルには必ず友達ができる。
それどころか人気者にだってなれる。
安心しろ、俺が保証してやる」
「うん……」
「だからさ、キュレルも一緒にお泊まり行こうぜ!」
「うん……」
キュレルは涙を流しながら、にっこりと笑った。
風が吹き、カーテンの隙間から月明かりが差し込む。
「うんうん。キュレルはこうでなくっちゃね」
月明かりに照らされ笑うキュレルは、間違いなく本物の天使だった。
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