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ラブコメはやめて
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気が付くと俺はベッドの上にいた。
枕横の時計はちょうど七時を指している。
どうやら俺は久しぶりに再会したベッドに吸い寄せられ、眠ってしまっていたようだ。
昨日の夜の記憶は全くないが、熟睡できたようでとても気分がいい。
それなら今日はいつもと一味違う朝にしよう。
少し悩んだ末、俺は朝シャワーに決めた。
「朝に浴びるシャワーとか……絶対気持ちいいじゃん!」
俺はルンルンでお風呂場へ向かった。
お風呂場へ向かう途中、一つ思い出したことがある。
遡ること昨日の夕方、俺はスラにお願いして物運びスライムを借りた。
「もしもし、スラか?」
「うむ。我であるがどうした?」
「物運びスライムを十体ほど貸してほしいんだけど、頼めるかな?」
「ほうほう。何に使うかは知らぬがすぐに手配しよう」
「流石はスラだな!」
「そんなに褒めぬでよい。では我は研究に戻る、さらば」
そして五分後、物運びスライムが到着した。
俺は彼らに指示を出し、水月の荷物を全て隣の部屋へと運んでもらった。
なぜこんなことをしたのか。
理由はもちろん、勝手に筋トレ器具を俺の大切な部屋に置いたからだ。
何らかの形で反省してもらわなければと思ったが、一人暮らししてもらうのがマンションの部屋も埋まるし都合がいい。
そして昨日、水月の部屋は一六四号室になった。
「親友よ……筋肉のせいなんだ……信じてくれ……」
一人暮らしで思い出したが、ヴェントスは一九四号室で一人暮らしを始めたらしい。
慣れない一人暮らしだが、イムに助けてもらいながら頑張っているみたいだ。
「イムさん、見てください!
この玉子、焼いたら黒くなりました!
私感動いたしました!」
「ヴェントスさん……それ焦げてるだけです」
「えぇえええええ!」
ここで話を戻そう。
「おっ風呂~!」
という声に合わせ、俺は脱衣所のドアを開けた。
脱衣所の中に入ると、誰もいないはずのお風呂場から水の音が聞こえてきた。
この音はシャワーだ。
昨日の夜の記憶がない俺は、想像で物事を考えられる。
これもおそらく、昨日の俺が出しっぱなしにしてしまったのだろう。
俺はシャワーを止めるため、お風呂場の扉を開けた。
その瞬間、フローラルな香りが俺を包み込んだ。
「すごくいい匂い……」
お風呂場から溢れ出るいい匂いに導かれ、ゆっくり視線を下げると見覚えのある女の子が視界に入った。
ピンク色のショートカットに……小柄な体格……。
「いやいや、まさかそんな訳」
俺は幻覚だと思い、二回瞬きをした。
ようやくここで自分が今置かれている状況を理解した。
「……」
その女の子は無言で俺を睨んでいる。
とりあえず危険を察知した俺は、無言で扉を閉めた。
そして足早に脱衣所を去り、自分の布団にくるまった。
「えーっと……ちょっとタイム。
なんでイムが俺の部屋のお風呂場にいるんだ?」
パニックになり頭が真っ白になってしまった俺だったが、あることを思い出した。
いや、思い出してしまったというべきか。
「そういえば……昨日の夜の記憶がない……」
なぜか俺の部屋にいたイム、気づいたらベッドにいた俺。
この二つを合わせた時、考えられるシチュエーションは一つしかない。
でも俺にそんな勇気はない……はずだ……。
俺は一人悶々としながら、ベッドの上をゴロゴロと転がり続けた。
「俺はやってない……俺はやってない……」
とひたすらに唱えながら。
そんな時、脱衣所の辺りで扉が開く音がした。
イムがお風呂から上がったようだ。
おそらくイムは今とても怒っているはず。
ならば俺は布団に隠れ、この場を凌ぎきるのが最適解だ。
しかし、現実はそう甘くはなかった。
突然玄関のドアが開く音が聞こえ、誰かがドッドッドッドッとベッドへ一直線に走ってくる。
「今日も来たよ~!」
この声は……キースだ。
そういえば、今キースの部屋はソフィの部屋から出たゴミで埋め尽くされている。
だから俺の部屋に来ているとか。
そんなことを考えている間に、キースは勢いよくベッドへダイブした。
当然布団にくるまっていた俺は、タックルを受けた時のような衝撃に襲われた。
「やっぱりここが1番落ち着く」
キースは痛みに耐えている俺を抱き枕代わりに、ベッドの上をゴロゴロとしている。
そんなキースの行動がイムを俺の元に呼び付けてしまった。
「キースさん、また来たんですか?」
お風呂上がりのイムは初めて見た。
なんだかいつもより魅力的な気がしないこともない。
……というか、その言い方だとイムも何回か来てることにならないか?
俺がいなかった間にここは随分と人気スポットになっていたようだ。
「うん。最近はずっとここで寝てたからね」
何を当たり前のように言っている。
ここは俺の部屋だぞ。
「そういえば、夢さん見ませんでした?」
キースは匂いを嗅ぐと、こう言った。
「見てないし、この辺りにはいないみたいだよ」
キースは突然強い力で布団を抱きしめた。
まるで中にいる俺に気づいたみたいに。
「そうですかぁ」
イムは何やら考え事をしたあとで、ベッドに腰掛けた。
そしてキースにこう尋ねた。
「キースさんは夢さんのこと好きなんですよね?」
「うん。夢は私の生きる意味だから」
その答え方だと、キースがメンヘラのように聞こえる。
でも少し照れる。
「そうですか……なら私もはっきり言います。
私も夢さんが好きです!」
「同じだね」
「はい!」
この状況に俺はとても困惑していた。
確かにキースには、俺が勘違いさせるような発言をしてしまったという過去がある。
でも、イムが俺を好きになったのはなぜだ?
俺が気になっていると、ちょうどキースが質問した。
「イムは夢のどこを好きになったの?」
これはファインプレーすぎる。
この答えずらい質問にイムはすぐに答えた。
「実は私……料理が上手な男性が好きなんです。
あと少し……顔がタイプ……とか?」
「うわっ! その顔めっちゃかわいい!」
キースは笑顔で照れているイムをじっと見つめている。
俺はというと。あまりの恥ずかしさに悶え死にそうになっていた。
その一部始終を上から見守る一人の少年。
自由神クルルである。
「これは面白いね。
ボクがもう一押ししてあげる」
クルルが指を鳴らすと、あの時と同じ蝶々が一匹出てきた。
その蝶々はひらひらと舞いながら、イムの肩に止まった。
するとイムは突然顔を真っ赤にして話し始めた。
「実はさっき夢さんに裸を見られたんですよ!
これは何か埋め合わせをしてもらわないとダメですよね!」
「そんなことがあったの! これは先を越された……」
それを聞いたキースは先程とは比べ物にならない強さで布団を抱きしめた。
「もう私戻りますね!」
イムは部屋を飛び出していった。
「はぁ、危なかった。
私がいなかったらバレてたからね」
どうやらキースは匂いを嗅いだ時に気づいたらしい。
これも多分ソフィと一緒に暮らしていたのが原因だろう。
ところでキースの言葉に夢からの返答がない。
「ねえ、聞いてるの? ねえってば」
キースが布団開くと、そこには気絶している夢がいた。
夢は思った。
「恥ずかしさとキースによって、また死んでしまうかもしれない。
だからこれ以上、ラブコメはやめて……」
「やっぱりキミは面白いね。
また遊んでね、バイバイ」
クルルは満足そうに天界へと帰っていった。
枕横の時計はちょうど七時を指している。
どうやら俺は久しぶりに再会したベッドに吸い寄せられ、眠ってしまっていたようだ。
昨日の夜の記憶は全くないが、熟睡できたようでとても気分がいい。
それなら今日はいつもと一味違う朝にしよう。
少し悩んだ末、俺は朝シャワーに決めた。
「朝に浴びるシャワーとか……絶対気持ちいいじゃん!」
俺はルンルンでお風呂場へ向かった。
お風呂場へ向かう途中、一つ思い出したことがある。
遡ること昨日の夕方、俺はスラにお願いして物運びスライムを借りた。
「もしもし、スラか?」
「うむ。我であるがどうした?」
「物運びスライムを十体ほど貸してほしいんだけど、頼めるかな?」
「ほうほう。何に使うかは知らぬがすぐに手配しよう」
「流石はスラだな!」
「そんなに褒めぬでよい。では我は研究に戻る、さらば」
そして五分後、物運びスライムが到着した。
俺は彼らに指示を出し、水月の荷物を全て隣の部屋へと運んでもらった。
なぜこんなことをしたのか。
理由はもちろん、勝手に筋トレ器具を俺の大切な部屋に置いたからだ。
何らかの形で反省してもらわなければと思ったが、一人暮らししてもらうのがマンションの部屋も埋まるし都合がいい。
そして昨日、水月の部屋は一六四号室になった。
「親友よ……筋肉のせいなんだ……信じてくれ……」
一人暮らしで思い出したが、ヴェントスは一九四号室で一人暮らしを始めたらしい。
慣れない一人暮らしだが、イムに助けてもらいながら頑張っているみたいだ。
「イムさん、見てください!
この玉子、焼いたら黒くなりました!
私感動いたしました!」
「ヴェントスさん……それ焦げてるだけです」
「えぇえええええ!」
ここで話を戻そう。
「おっ風呂~!」
という声に合わせ、俺は脱衣所のドアを開けた。
脱衣所の中に入ると、誰もいないはずのお風呂場から水の音が聞こえてきた。
この音はシャワーだ。
昨日の夜の記憶がない俺は、想像で物事を考えられる。
これもおそらく、昨日の俺が出しっぱなしにしてしまったのだろう。
俺はシャワーを止めるため、お風呂場の扉を開けた。
その瞬間、フローラルな香りが俺を包み込んだ。
「すごくいい匂い……」
お風呂場から溢れ出るいい匂いに導かれ、ゆっくり視線を下げると見覚えのある女の子が視界に入った。
ピンク色のショートカットに……小柄な体格……。
「いやいや、まさかそんな訳」
俺は幻覚だと思い、二回瞬きをした。
ようやくここで自分が今置かれている状況を理解した。
「……」
その女の子は無言で俺を睨んでいる。
とりあえず危険を察知した俺は、無言で扉を閉めた。
そして足早に脱衣所を去り、自分の布団にくるまった。
「えーっと……ちょっとタイム。
なんでイムが俺の部屋のお風呂場にいるんだ?」
パニックになり頭が真っ白になってしまった俺だったが、あることを思い出した。
いや、思い出してしまったというべきか。
「そういえば……昨日の夜の記憶がない……」
なぜか俺の部屋にいたイム、気づいたらベッドにいた俺。
この二つを合わせた時、考えられるシチュエーションは一つしかない。
でも俺にそんな勇気はない……はずだ……。
俺は一人悶々としながら、ベッドの上をゴロゴロと転がり続けた。
「俺はやってない……俺はやってない……」
とひたすらに唱えながら。
そんな時、脱衣所の辺りで扉が開く音がした。
イムがお風呂から上がったようだ。
おそらくイムは今とても怒っているはず。
ならば俺は布団に隠れ、この場を凌ぎきるのが最適解だ。
しかし、現実はそう甘くはなかった。
突然玄関のドアが開く音が聞こえ、誰かがドッドッドッドッとベッドへ一直線に走ってくる。
「今日も来たよ~!」
この声は……キースだ。
そういえば、今キースの部屋はソフィの部屋から出たゴミで埋め尽くされている。
だから俺の部屋に来ているとか。
そんなことを考えている間に、キースは勢いよくベッドへダイブした。
当然布団にくるまっていた俺は、タックルを受けた時のような衝撃に襲われた。
「やっぱりここが1番落ち着く」
キースは痛みに耐えている俺を抱き枕代わりに、ベッドの上をゴロゴロとしている。
そんなキースの行動がイムを俺の元に呼び付けてしまった。
「キースさん、また来たんですか?」
お風呂上がりのイムは初めて見た。
なんだかいつもより魅力的な気がしないこともない。
……というか、その言い方だとイムも何回か来てることにならないか?
俺がいなかった間にここは随分と人気スポットになっていたようだ。
「うん。最近はずっとここで寝てたからね」
何を当たり前のように言っている。
ここは俺の部屋だぞ。
「そういえば、夢さん見ませんでした?」
キースは匂いを嗅ぐと、こう言った。
「見てないし、この辺りにはいないみたいだよ」
キースは突然強い力で布団を抱きしめた。
まるで中にいる俺に気づいたみたいに。
「そうですかぁ」
イムは何やら考え事をしたあとで、ベッドに腰掛けた。
そしてキースにこう尋ねた。
「キースさんは夢さんのこと好きなんですよね?」
「うん。夢は私の生きる意味だから」
その答え方だと、キースがメンヘラのように聞こえる。
でも少し照れる。
「そうですか……なら私もはっきり言います。
私も夢さんが好きです!」
「同じだね」
「はい!」
この状況に俺はとても困惑していた。
確かにキースには、俺が勘違いさせるような発言をしてしまったという過去がある。
でも、イムが俺を好きになったのはなぜだ?
俺が気になっていると、ちょうどキースが質問した。
「イムは夢のどこを好きになったの?」
これはファインプレーすぎる。
この答えずらい質問にイムはすぐに答えた。
「実は私……料理が上手な男性が好きなんです。
あと少し……顔がタイプ……とか?」
「うわっ! その顔めっちゃかわいい!」
キースは笑顔で照れているイムをじっと見つめている。
俺はというと。あまりの恥ずかしさに悶え死にそうになっていた。
その一部始終を上から見守る一人の少年。
自由神クルルである。
「これは面白いね。
ボクがもう一押ししてあげる」
クルルが指を鳴らすと、あの時と同じ蝶々が一匹出てきた。
その蝶々はひらひらと舞いながら、イムの肩に止まった。
するとイムは突然顔を真っ赤にして話し始めた。
「実はさっき夢さんに裸を見られたんですよ!
これは何か埋め合わせをしてもらわないとダメですよね!」
「そんなことがあったの! これは先を越された……」
それを聞いたキースは先程とは比べ物にならない強さで布団を抱きしめた。
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イムは部屋を飛び出していった。
「はぁ、危なかった。
私がいなかったらバレてたからね」
どうやらキースは匂いを嗅いだ時に気づいたらしい。
これも多分ソフィと一緒に暮らしていたのが原因だろう。
ところでキースの言葉に夢からの返答がない。
「ねえ、聞いてるの? ねえってば」
キースが布団開くと、そこには気絶している夢がいた。
夢は思った。
「恥ずかしさとキースによって、また死んでしまうかもしれない。
だからこれ以上、ラブコメはやめて……」
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