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孤高の吸血鬼①
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前にエレベーター内でソフィが言っていた
『そろそろ移動かしら』
とはこういう意味だったのかと、ようやく理解することが出来た。
でもこんなところで止まっている時間が一番もったいない。
「よし、俺はとりあえず砂漠を見てくる!」
俺は次々と階段をおり、エントランスへ向かった。
一人で行くつもりだったが、何やらニヤニヤした三人組が後を追いかけてきた。
「それではいってらっしゃい」
「我も応援している!」
「頑張ってください!」
なんだ、ただのお見送りだったのか。
ならそう言ってくれればよかったのに。
そして砂漠へと足を踏み入れた。
その瞬間、足の裏を襲ったとんでもない熱さに思わず飛び上がった。
「あっつ~!」
後ろでソフィ、スラ、イムの笑い声がする。
これが狙いだったとは、まったく性格の悪いやつらだ。
「戻りました」
「お、おかえりなさい」
ソフィは笑いながら答えた。
正直かなり恥ずかしい。
「おい、どうやって行けばいい」
「ほほ~。
人に尋ねる際の態度を知らんのかね」
「分かった。
教えてくださいお願いします」
「よかろう。
イムよ、あれは持ってきたな」
「はいもちろん!」
イムが手に持っているものは、靴に入れる中敷のような見た目をしている。
さすがにそんなものを使ったところで、状況は何も変わらないだろう。
スラも落ちたものだな。
まだ知り合って1日経ってないけど。
「そんなものが何になる。
対して靴と変わらないじゃないか」
「のんのんのん。
これだからそなたはだめなのだ」
「なにを~!」
「まあいいから履いてみるがよい。
使い方は簡単。
足の下に敷くだけである」
俺は渋々足の下にそれを敷いた。
するとどうだろう。
不思議と足全体がコーティングされているかのような安心感がある。
「どうだ、我の研究成果は!」
「す、すごい。でもまだだ。
砂漠の熱に耐えられるかな」
俺は砂漠へと走った。
もちろん足をつけたところで、何一つとして問題はなかった。
「ありがとうございました!」
「分かればよいぞ。
面をあげよ」
やっぱりスラは天才なんだ。
そう改めて思った。
それからソフィには水をもらい、イムからはタオルをもらった。
「じゃあ今度こそ行ってきます」
「いってらっしゃい」
「許可する!」
「いってらっしゃいませ!」
今度こそ出発だ。
元気いっぱいに出発するまでは良かったが、たった数分で熱さにやられそうになっていた。
「本当に何も無いんだな……これじゃあ動物なんていないよな」
辺り一面に植物の姿がない。
もちろん水場も見当たらない。
こんなところにもし飛ばされていたら、俺は今頃カラッカラに乾き死んでいただろう。
想像するだけで体が震える。
それからこまめに休憩を取りながら、三十分ほど歩いた。
そろそろ長めな休憩が必要だと思った時、樹木の生えている場所を見つけた。
「あれが噂のオアシスってやつか!」
俺は急に疲れが吹っ飛んだかのように、オアシスまで走った。
「水も湧いてるし、日陰もあるし最高すぎんだろ!」
俺はすぐ地面に寝転がった。
言い過ぎかもしれないが、部屋より快適な気がする。
疲れが取れるまで一休みしようと思った時、後ろで音が聞こえた。
バサッ。
俺がゴミ捨て場に落ちた時のような音だった。
「なんの音だ?」
ふぁ~っとあくびをしながら起き上がった俺は、ガサッガサッと草をかき分け音の方へと進んだ。
正直かなり眠たかったため、確認したらすぐに寝ようと思っていた。
しかし、そんな考えは一瞬で消え去った。
「三人の……子供……?」
そう。
そこにいたのは、赤く長い髪が綺麗な小さな三人の女の子だったのだ。
大きさ的に小学生くらいだろう。
俺はすぐに彼女たちを涼しいところへ運んだ。
持ち上げた彼女たちはとても軽く、俺一人で簡単に運び込むことが出来た。
あまりご飯を食べていないのだとすぐに分かった。
「絶対助けてやるからな」
俺は持っていた水を一人一人丁寧に飲ませた。
その時牙のようなものが見えた。
「なんだ……これ……?」
普通ではないと思ったが、その時は必死だったため考えないようにした。
その後、大きな植物の葉をうちわのように使い、風を送り続けた。
何度も腕が吊りそうになりながらも彼女たちのためにひたすら風を送り続けた。
五分ほど経った頃、ようやく彼女たちが目を覚ました。
それと同時に俺は床へ倒れ込んだ。
「はあはあはあ。
もう無理……動けない」
目を覚ました彼女たちはキョロキョロ周りを見たあと、近くに置いてあった水をぐびぐび飲んだ。
そして話しかけてきた。
「お兄さんが助けてくれたの?」
「お兄さんが助けてくれたの?」
「お兄さんが助けてくれたの?」
「あ……うん」
三人とも同じ動きをするし、三人とも同じことを話す。
よく分からない子達だと思った。
「ありがとう」
「ありがとう」
「ありがとう」
「う、うわぁあああ!」
言い終わると同時に、三人が飛びついてきた。
なんとも可愛らしい光景だこと。
いや、バカか俺は。
まずは現状の把握が優先だ。
彼女たちはどこから来たのか、一体何者なのか。
話はそれからだろう。
「君たちお名前は?」
彼女たちは首を傾げてこう言った。
「名前ってな~に?」
これは予想外だ。
「分からないならいいんだ。
それなら、どこから来たのかわかるかな?」
「わかる!
ここからずーっと西から歩いて来たの。
そうしないとね殺されちゃうから」
さらに予想外の回答だった。
追われているのだとすれば、マンションに戻った方が安全だろう。
「近くにお兄さんの家があるんだ。
一緒に来てくれる?」
自分で言うのもなんだが完全に怪しい人だ。
でも急がないと彼女たちが危ないかもしれない。
「うん、いいよ!」
「よしそれじゃあ、少し歩くよ」
それからこまめに休憩を取りながら、マンションへと戻った。
『そろそろ移動かしら』
とはこういう意味だったのかと、ようやく理解することが出来た。
でもこんなところで止まっている時間が一番もったいない。
「よし、俺はとりあえず砂漠を見てくる!」
俺は次々と階段をおり、エントランスへ向かった。
一人で行くつもりだったが、何やらニヤニヤした三人組が後を追いかけてきた。
「それではいってらっしゃい」
「我も応援している!」
「頑張ってください!」
なんだ、ただのお見送りだったのか。
ならそう言ってくれればよかったのに。
そして砂漠へと足を踏み入れた。
その瞬間、足の裏を襲ったとんでもない熱さに思わず飛び上がった。
「あっつ~!」
後ろでソフィ、スラ、イムの笑い声がする。
これが狙いだったとは、まったく性格の悪いやつらだ。
「戻りました」
「お、おかえりなさい」
ソフィは笑いながら答えた。
正直かなり恥ずかしい。
「おい、どうやって行けばいい」
「ほほ~。
人に尋ねる際の態度を知らんのかね」
「分かった。
教えてくださいお願いします」
「よかろう。
イムよ、あれは持ってきたな」
「はいもちろん!」
イムが手に持っているものは、靴に入れる中敷のような見た目をしている。
さすがにそんなものを使ったところで、状況は何も変わらないだろう。
スラも落ちたものだな。
まだ知り合って1日経ってないけど。
「そんなものが何になる。
対して靴と変わらないじゃないか」
「のんのんのん。
これだからそなたはだめなのだ」
「なにを~!」
「まあいいから履いてみるがよい。
使い方は簡単。
足の下に敷くだけである」
俺は渋々足の下にそれを敷いた。
するとどうだろう。
不思議と足全体がコーティングされているかのような安心感がある。
「どうだ、我の研究成果は!」
「す、すごい。でもまだだ。
砂漠の熱に耐えられるかな」
俺は砂漠へと走った。
もちろん足をつけたところで、何一つとして問題はなかった。
「ありがとうございました!」
「分かればよいぞ。
面をあげよ」
やっぱりスラは天才なんだ。
そう改めて思った。
それからソフィには水をもらい、イムからはタオルをもらった。
「じゃあ今度こそ行ってきます」
「いってらっしゃい」
「許可する!」
「いってらっしゃいませ!」
今度こそ出発だ。
元気いっぱいに出発するまでは良かったが、たった数分で熱さにやられそうになっていた。
「本当に何も無いんだな……これじゃあ動物なんていないよな」
辺り一面に植物の姿がない。
もちろん水場も見当たらない。
こんなところにもし飛ばされていたら、俺は今頃カラッカラに乾き死んでいただろう。
想像するだけで体が震える。
それからこまめに休憩を取りながら、三十分ほど歩いた。
そろそろ長めな休憩が必要だと思った時、樹木の生えている場所を見つけた。
「あれが噂のオアシスってやつか!」
俺は急に疲れが吹っ飛んだかのように、オアシスまで走った。
「水も湧いてるし、日陰もあるし最高すぎんだろ!」
俺はすぐ地面に寝転がった。
言い過ぎかもしれないが、部屋より快適な気がする。
疲れが取れるまで一休みしようと思った時、後ろで音が聞こえた。
バサッ。
俺がゴミ捨て場に落ちた時のような音だった。
「なんの音だ?」
ふぁ~っとあくびをしながら起き上がった俺は、ガサッガサッと草をかき分け音の方へと進んだ。
正直かなり眠たかったため、確認したらすぐに寝ようと思っていた。
しかし、そんな考えは一瞬で消え去った。
「三人の……子供……?」
そう。
そこにいたのは、赤く長い髪が綺麗な小さな三人の女の子だったのだ。
大きさ的に小学生くらいだろう。
俺はすぐに彼女たちを涼しいところへ運んだ。
持ち上げた彼女たちはとても軽く、俺一人で簡単に運び込むことが出来た。
あまりご飯を食べていないのだとすぐに分かった。
「絶対助けてやるからな」
俺は持っていた水を一人一人丁寧に飲ませた。
その時牙のようなものが見えた。
「なんだ……これ……?」
普通ではないと思ったが、その時は必死だったため考えないようにした。
その後、大きな植物の葉をうちわのように使い、風を送り続けた。
何度も腕が吊りそうになりながらも彼女たちのためにひたすら風を送り続けた。
五分ほど経った頃、ようやく彼女たちが目を覚ました。
それと同時に俺は床へ倒れ込んだ。
「はあはあはあ。
もう無理……動けない」
目を覚ました彼女たちはキョロキョロ周りを見たあと、近くに置いてあった水をぐびぐび飲んだ。
そして話しかけてきた。
「お兄さんが助けてくれたの?」
「お兄さんが助けてくれたの?」
「お兄さんが助けてくれたの?」
「あ……うん」
三人とも同じ動きをするし、三人とも同じことを話す。
よく分からない子達だと思った。
「ありがとう」
「ありがとう」
「ありがとう」
「う、うわぁあああ!」
言い終わると同時に、三人が飛びついてきた。
なんとも可愛らしい光景だこと。
いや、バカか俺は。
まずは現状の把握が優先だ。
彼女たちはどこから来たのか、一体何者なのか。
話はそれからだろう。
「君たちお名前は?」
彼女たちは首を傾げてこう言った。
「名前ってな~に?」
これは予想外だ。
「分からないならいいんだ。
それなら、どこから来たのかわかるかな?」
「わかる!
ここからずーっと西から歩いて来たの。
そうしないとね殺されちゃうから」
さらに予想外の回答だった。
追われているのだとすれば、マンションに戻った方が安全だろう。
「近くにお兄さんの家があるんだ。
一緒に来てくれる?」
自分で言うのもなんだが完全に怪しい人だ。
でも急がないと彼女たちが危ないかもしれない。
「うん、いいよ!」
「よしそれじゃあ、少し歩くよ」
それからこまめに休憩を取りながら、マンションへと戻った。
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