新 或る実験の記録

フロイライン

文字の大きさ
上 下
27 / 139

inbound

しおりを挟む
「你是目标?」


「快点带我出去!」


「抓住这个家伙!」


聞き取れない言語がワタシの耳元に届いた。


三人の男のうち一人はワタシの口を押さえ、ナイフを突きつけている。

もう一人はロープを取り出して、ワタシの手足を縛ろうとしている。

もう一人は大きな袋を用意していて、手足を縛り上げ次第、ワタシにそれを被せるつもりだ。

どちらにしても大ピンチだ!


(もうダメだ…

殺される…)


ワタシは自分の肉体の非力さを恨みながら、死を覚悟した。


しかし、次の瞬間

「菅原さん、目を閉じろっ!」

と、玄関の方から日本語が聞こえてきた。


「えっ!」


ワタシはようやく意味のわかる言葉に、即座に従った。

男達は皆ワタシの方を向いていたので、不意に後ろのドアが開けられた事に、たじろぎを見せた。

その時だ

何か大きな音がしたかと思うと、目を瞑っていてもわかるくらい眩しい光が、辺り一面を覆った。


ようやく目を開けると、機動隊?みたいな完全防備の人達がドカドカと中に入ってきて、ワタシを連れていこうとしていた外国人を拘束した。

何が何かわからないまま、呆然とするワタシに、最後に中に入ってきたスーツ姿の男が、近づき、手を差し伸べて起こしながら

「大丈夫ですか?」

と、言った。


外国人三人が手錠をかけられ外に出されている間、ワタシは奥の部屋でその男と一緒に、その光景を見つめていた。

でも、すぐに我に返ったワタシは、男に質問した。


「あの、これは何なんですか…」


「拉致未遂事件ですよ。」

と、表情を変えずに言った。

拉致?

未遂?


この人、警察の偉いさん?

でも、何か雰囲気が違うなあ。
見た目はどこにでもいそうなサラリーマンのような風貌に服装だ。

なかなかイケメンで、まあ、ワタシのタイプではある。

「すいません、あなたは誰なんですか?
警察の人??」

ワタシの質問に、男は首を振り、呟くように言った。


「普通は名乗らないんですが、ここまで大きな事件に発展したからには、もういいでしょう。

私は公安外事四課の三浦といいます。」


「公安…」

何かのドラマで見たことあるぞ。


「菅原さん
あなたには悪いが、囮となっていただきました。」


「囮?」


「ええ。
今回、あなたを含め、センターの十名には私どもの監視が付いていました。

誰がターゲットであっても良いように。

そして、あなたがターゲットになった。

今のところ、他の人達は皆無事なようです。」


「すいません

全然話が見えないんですが、詳しく教えていただけませんか。」


「それはワタシから話をさせてもらうわ。」


そう声をかけてきたのは…

吉岡センター長だった。


「先生!

なんでここに…」


「ごめんなさいね、菅原さん

今回のあなた方へ与えられた休暇は、敵を誘き出すために我々が仕掛けた罠なの。
勿論、万が一に備えてはいたんだけど、危険な目に遭わせてしまって本当に申し訳なく思っています。」

「…」

吉岡先生は、今はセンター長として、ワタシ達をサポートする仕事をしているが、現在も警視庁に所属する警官で、今回の作戦にも参加していたらしい。

作戦?…作戦て…何?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

リアルフェイスマスク

廣瀬純一
ファンタジー
リアルなフェイスマスクで女性に変身する男の話

身体交換

廣瀬純一
SF
男と女の身体を交換する話

奇妙な日常

廣瀬純一
大衆娯楽
新婚夫婦の体が入れ替わる話

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

バーチャル女子高生

廣瀬純一
大衆娯楽
バーチャルの世界で女子高生になるサラリーマンの話

処理中です...