或る実験の記録

露出

「ショッキングなニュースが飛び込んできました。

今年、日本中に衝撃を与えたK国による拉致事件について、連れ去られた被害者達が強制的に性転換手術をされていたことがJRNの取材でわかりました。

番組では、被害者の一人に独占インタビューをすることができました。

この事件は今だに謎に包まれた部分が多く、今回取材をお受けいただいた吉岡さんは、些細な手掛かりでも欲しいと、テレビで実名、顔を出す事を許可していただきました。

それではご覧ください。」

キャスターのコメントに続き、私が受けたインタビューのビデオが全国放送された。


すごい反響だった。
他のテレビ局や新聞、雑誌の取材が次々と舞い込み、日本記者クラブ、外国人特派員協会からも招待された。

ワタシは自分がされた事や、高田という日本人の医師がいた事、現在に至るまでの生活などを赤裸々に語った。



そして、時を置かずして、事態に進展があったという知らせが舞い込んできた。

私に電話がかかってきたのだ。

「吉岡か。」

「石津さん！」

電話の向こうからやや上擦り気味の石津さんの声が聞こえてきた。

「重要な手掛かりを入手したぞ。」

「えっ、本当ですか！」

「今から話を聞きに行くところがあるんだが、それが終わったらそっちに行くよ。」

「はい。お気をつけて。」

私は電話を切り、リスクを張った甲斐があったと嬉しい気持ちが込み上げてきた。

やっと動き出した。　
事件の核心に少しでも近づけるかもしれない。私は気持ちが昂るのを抑えられず、ぐっと拳を握りしめた。