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帰郷
しおりを挟む私の他に施設にいた被害者は僅か三名で、私は彼らと共に航空自衛隊那覇基地を経由し、茨城県百里飛行場に送られた。
そこで政府から派遣されてきた宮川という男が合流し、都内の病院までマイクロバスで移動した。
宮川は年の頃にして30才くらいか…
細身で色黒で目が大きく… なんと言うか、日本人離れしたというか、東南アジア系を彷彿とさせる外見をしていた。
彼は車に乗り込むなり、私達と最初に会ったときに言った台詞をそのまま一言一句違わず同じように言い、恐縮した態度で頭を下げた。
「この度は救出が遅れ、大変な思いをさせてしまいました。
日本政府に成り代わりましてお詫び申し上げます。」
私達は小さく頷いた。
だが、私はそんなことより聞きたいことが山ほどあった。
「宮川さん、私達はこれからどうなるんですか?」
まず、私はストレートな質問をぶつけた。私の他に三名が救出されたと言ったが、彼らの女性化はまだ進んでおらず、このまま社会復帰出来そうな雰囲気であった。聞けば、収容所に来て僅か二カ月程度しか経過していなかったらしい。
それに比べて、私は性転換手術までされており、はっきり言って、彼らとはレベルが違ったのである。
「政府として、まだ生存者がいるとは公式に発表しておりません。
吉岡さんらが生きてて、このような姿になっているということが明るみに出たら、それこそマスコミの餌食になってしまうからです。
とりあえず、今夜から都内の病院に入院してもらいます。
今後については、よく相談して決めましょう。」
「そうですか… 家族には?」
「いえ、それもまだ伝えてはおりません。」
「…よかった」
私は心底ホッとした。
今、両親や美優に再会したとして、一体どんな顔して会えばいいのだろう。
私が生きていたことを喜んでくれるのだろうか… いや、このような姿になった私を見て悲しい思いをするに違いない…
車窓から見える二年半ぶりの日本の風景を
何の感慨も無く見る私だった。
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