ニューハーフな生活

フロイライン

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外敵

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お昼ご飯はもう女子会のノリで大盛り上がりして、会社に戻るのがギリギリになってしまった。

今日からは、女子トイレを使ってもいいと認めていただいたワタシは、みんなと一緒に中に入った。

ここに来てから初めての女子トイレだし、異常なくらい緊張したけど。

歯磨き、化粧直しをして一時をかなり過ぎてから事務所に戻ると、大石係長がやってきて

「西村さん

三時から例の商談で、大内バイヤーのところに行かなきゃなんないんだけど」

と、言ってきた。


「あ、今日でしたよね」


「どうする?」


「あ、同行させていただいてもよろしいですか?」


「ああ。それは全然かまわないけど、大内さんとは何回か会ってるから、この状況を一々説明するのがめんどくさいかなあって。」


「それは、全然。
ワタシみたいな者が行ってご迷惑をかけないなら、是非行かせて下さい。」


「迷惑なんてかかんないよ。
今はそういう時代でもないしね。

じゃあ、資料を三部用意しといてくれる?
あと、タブレットも忘れないようにね。」


「はい。わかりました。」



そうなんだよなあ

会社だけじゃなくて得意先とかにもカミングアウトしなきゃならないのよね。

大石さんにも負担かけちゃうなあ。こんな見た目の人間と一緒に外回りするのは。

やっぱり内勤に変えてもらった方がよかったかなあ。


って言っててもしゃあないし、早く資料を出さなきゃ。

ワタシは慌ててパワポを開き、商談で使う資料をプリントアウトした。




「そろそろ出ようか。」


「はい。」


2時頃、大石係長が声をかけてきたので、ワタシも頷き、急いで立ち上がった。

ワタシ達は、会社を出ると最寄駅まで歩いて向かった。

この前まで、男二人で並んで歩いてたのに、今は、ビミョーに、ほんの少しだけど、大石係長の後ろを歩くワタシだった。
スカートだし、靴も違うしね。

大石係長は、チラッとワタシに視線を向け

「ちゃんと化粧して服装も女性物になったら、もう完璧に女性だよな。

なるほど、これが本来の西村さんの姿だったんだな。
逆に男の格好してたのは、かなり無理してたって事だ。」

と、言って、自分で納得した。


「何年もニューハーフとして生きてきて、女性ホルモンの注射もずっとしてましたし、去勢手術もかなり前に受けましたので、どうしても体つきや気持ちの部分では男に戻りきれずに、苦労してました。正直言って。」


ワタシも、素直に答えた。


「まあ、あんまり無理しなくていいから。
ちょっとずつ、慣れていけばいいよ。」


大石係長は、やっぱり優しい。

大好き。

あ、そういう意味じゃなくて、人として…
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