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裏返し
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叔父さん家族にカミングアウトを終え、ようやくワタシも緊張感がほぐれてきた。
出された料理を食べながら、もっぱらワタシへの質問が叔母さんから浴びせられ、ワタシも丁寧に答えていった。
叔父さんはあんまり喋らず、テレビをつけて会話にも入って来なかった。
多分、言いたい事は色々あったはずだ。
よくよく考えると、なんで意見しなかったかっていうと、息子(ワタシの従兄弟)の事があったからだ。
「お義姉さん、悠聖君は?」
お母さんがこの場にいない悠聖の事を聞くと
「知らないわ
部屋にいるんじゃない?」
と、吐き捨てるように言った。
悠聖はワタシより年齢は一つ上で、今二十一歳だ。
子供の頃はまあ普通で、ワタシも年齢が近いからよく遊んでたけど、変わってしまったのは大学受験に失敗してからだ。
悠聖は志望校に落ち、浪人した(浪人家系でごめんなさい)
で、一浪したけど、またダメで…
そのうち勉強をするのをやめちゃって、所謂引きこもりみたいになっちゃって、今に至る。
お母さんから、悠聖のことは少しは聞いてたけど、こんな事になるなんて。
厳しい叔父さんの事だから、こっぴどく叱ったんだと思うけど、上手くいかなかったみたいね。
「ユキ君
悠聖と仲良かったし、ちょっと部屋に行って呼んできてよ。
私とかが行くと、出てこないのよ。」
「でもなあ、ワタシ、今こんな感じだし」
ワタシは自分の胸を指差して言った。
「大丈夫よ、ね?」
叔母さんの熱意に負け、ワタシは二階の悠聖の部屋に向かった。
あー、イヤだなあ。
アイツが一浪して受験失敗したとき、ワタシも現役で落ちちゃって、その後一浪してワタシは大学に行けたけど、アイツはもうその頃にはリタイアしてたから、ひょっとしたら、ワタシのことを妬んでるかもしれない。
三流大学なのに…
どうせ部屋に鍵かけてるはずだし、一声かけて反応が無ければすぐに戻ろう。
ワタシは悠聖の部屋の前に来て、ドアを二回ノックした。
そして、久しく出してなかった、完全男声で
「悠聖君
こんちはー、幸洋です」
と、言った。
勿論無反応…
戻ろうかと思ったが、次に
「実はねえ、ワタシ東京でニューハーフになったのよ。
ちょっと見てみない?」
と、今度はモロ女声で言うと、部屋の中で少しガサガサする音が聞こえてきた。
そして、ドアの鍵をあける音がしたかと思うと、少し…
ほんの少しだけドアが開き、その隙間から悠聖の目だけが見えた。
「…
幸洋?」
悠聖は覇気のない声でそう言った。
「うん。幸洋だよ」
と、ワタシも小さな声で返した。
出された料理を食べながら、もっぱらワタシへの質問が叔母さんから浴びせられ、ワタシも丁寧に答えていった。
叔父さんはあんまり喋らず、テレビをつけて会話にも入って来なかった。
多分、言いたい事は色々あったはずだ。
よくよく考えると、なんで意見しなかったかっていうと、息子(ワタシの従兄弟)の事があったからだ。
「お義姉さん、悠聖君は?」
お母さんがこの場にいない悠聖の事を聞くと
「知らないわ
部屋にいるんじゃない?」
と、吐き捨てるように言った。
悠聖はワタシより年齢は一つ上で、今二十一歳だ。
子供の頃はまあ普通で、ワタシも年齢が近いからよく遊んでたけど、変わってしまったのは大学受験に失敗してからだ。
悠聖は志望校に落ち、浪人した(浪人家系でごめんなさい)
で、一浪したけど、またダメで…
そのうち勉強をするのをやめちゃって、所謂引きこもりみたいになっちゃって、今に至る。
お母さんから、悠聖のことは少しは聞いてたけど、こんな事になるなんて。
厳しい叔父さんの事だから、こっぴどく叱ったんだと思うけど、上手くいかなかったみたいね。
「ユキ君
悠聖と仲良かったし、ちょっと部屋に行って呼んできてよ。
私とかが行くと、出てこないのよ。」
「でもなあ、ワタシ、今こんな感じだし」
ワタシは自分の胸を指差して言った。
「大丈夫よ、ね?」
叔母さんの熱意に負け、ワタシは二階の悠聖の部屋に向かった。
あー、イヤだなあ。
アイツが一浪して受験失敗したとき、ワタシも現役で落ちちゃって、その後一浪してワタシは大学に行けたけど、アイツはもうその頃にはリタイアしてたから、ひょっとしたら、ワタシのことを妬んでるかもしれない。
三流大学なのに…
どうせ部屋に鍵かけてるはずだし、一声かけて反応が無ければすぐに戻ろう。
ワタシは悠聖の部屋の前に来て、ドアを二回ノックした。
そして、久しく出してなかった、完全男声で
「悠聖君
こんちはー、幸洋です」
と、言った。
勿論無反応…
戻ろうかと思ったが、次に
「実はねえ、ワタシ東京でニューハーフになったのよ。
ちょっと見てみない?」
と、今度はモロ女声で言うと、部屋の中で少しガサガサする音が聞こえてきた。
そして、ドアの鍵をあける音がしたかと思うと、少し…
ほんの少しだけドアが開き、その隙間から悠聖の目だけが見えた。
「…
幸洋?」
悠聖は覇気のない声でそう言った。
「うん。幸洋だよ」
と、ワタシも小さな声で返した。
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yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。
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